新要素「デカントアビリティ」ってどうなの?
では、逆にオリジナル版から進化した部分に目を向けていきましょう。 今回のリメイク版最大の特徴とも言えるのが「デカントアビリティ」システムです。
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「デカントアイテム」を入手すれば仲間に新しいアビリティを付けられる |
名前だけ聞いても「は?」という感じかもしれませんが、これはつまり「仲間のアビリティを別の仲間に引き継ぐことができる」というもの。ちなみに、アビリティは仲間のものだけでなく、様々な場所で入手することができるようです。
ここで、FFシリーズのファンの方なら、FF5などに代表される「ジョブシステム」が真っ先に思い浮かぶかもしれません。それはそれで間違ってはいないのですが、決定的に異なるのは「アビリティを追加すること以外の変更はできない」という点です。
つまり、セシルに「カウンター」という新しいアビリティをくっつけてパワーアップさせることはできても、固有コマンドである「あんこく」を外すといったことはできないわけです。もちろんステータスの成長率なども基本的には変更できません。
このシステムにより、「キャラクターの個性はそのままに、お気に入りの仲間をカスタマイズする」ことが可能になりました。こんな風に書くと、「FF4らしさ」が失われたのでは? と不安になる方が出てくるかもしれません。
……大丈夫です。「FF4らしさ」はしっかりと残っています。
話がだいぶマニアックな方向へ流れてきたので、ここで「FF4らしさ」について簡単に説明しておきましょう。
もともとFF4は、キャラクターの育成やパーティー編成において非常に自由度の低いゲームでした。それは欠点ではなく、むしろFF4の特徴である「個性豊かな仲間たちが頻繁に入れ替わりながら物語が進む」というシナリオ面を際立たせるのに必要な要素だったわけです。
……そうなると、キャラクターをプレイヤーの意思で自由にカスタマイズできてしまうと、仲間が入れ替わっていく意味がなくなってしまいます。
新要素である「デカントアビリティ」は、この点をうまくクリアした上で、ある程度の自由をプレイヤーに与えた画期的なシステムと言えるでしょう。
バトルの細かいバランス調整はまさに職人芸!
最後に、RPGの華であるバトルに目を向けてみましょう。
FF4といえば、その後のFFシリーズにも採用された「アクティブタイムバトルシステム」の元祖として有名であり、当時からバトルシステムの完成度の高さには定評がありました。
たとえば、それまで威力の高低が基準だった魔法に、「詠唱時間」という概念を持ち込んだことはあまりにも有名です。高威力な代わりに詠唱時間の長いファイガやメテオよりも、サクサクと放てるバイオやフレアの方が使いやすかったという経験は、きっと皆さん、一度は覚えがありますよね。
今回のリメイク版FF4を遊んでいて、「よくできているな」と思ったのは、そういったオリジナル版の特徴を残しつつ、非常に細かいところまで微調整が加えられた戦闘バランスです。
一例としては、
- ローザの「いのる」にMP回復効果が付いた
- 「あんこく」が全体攻撃ではなく、毎ターンHPを消費してパワーアップする技に
- シドに新コマンド「かいぞう」が追加
など、中にはオリジナル版をプレイしたユーザーでも気づかないほどの細かい変更が加えられています。このあたりはレビューでは書き切れない部分ですので、ぜひ実際に手にとって遊んでみてください。オリジナル版を遊んだことがあれば、さらに楽しさが倍増するはずですよ。
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パワーアップしたのはグラフィックだけではない! |
結論…DS版FF4は、間違いなく"買い"だ!
ここまで色々な方向からリメイク版FF4をレビューしてきましたが、個人的な意見としては、このリメイクは大成功だと思います。
何度も言いますが、優れたリメイクとは「単に色々と変更すればいい」というものではなく、逆に「何でもかんでもそのまま残せばいい」というものでもありません。その2つのバランスが重要なのです。
かつてオリジナル版を遊んだユーザーと、初めて遊ぶユーザー、そのどちらも満足させなければならない宿命を持ったリメイク作品。
完全な新作よりも、実はリメイクの方が、制作スタッフに求められるハードルは高いのかもしれませんね。
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山田井ユウキ
レビューサイト「カフェオレ・ライター」主宰。サイトでのP.N.は「マルコ」。映画はもちろんマンガ、ゲーム、さらにはBL作品に至るまで幅広くレビュー記事を執筆、その独特な視点とテンポのよい文章で人気を博し、このほど累計1千万アクセスを突破した。現在、弊誌にてコラム『珍DVD、愛を込めてブッタ斬り』を連載中