携帯電話を使っている子どもが携帯ネットで有害情報に触れ、犯罪に巻き込まれる例が後を絶たないことから、業界を始め、政府や各自治体なども対策に取り組み始めている。携帯所有者の低年齢化が進んでいるのに対し、子どもがどういった使い方をしているか保護者が把握し切れておらず、携帯各社の取り組みもまだ浸透していないことも問題だ。これに対し総務省は10日、携帯各社に対策強化を要請し、各社から新たな取り組みも発表されている。子どもを携帯ネットの有害情報から守れるのか。

子どもを取り巻く携帯ネットの現状

PHSを含む携帯の契約数が1億を突破した現在、子どもも多く携帯を利用しているようになっている。特に最近は、子どもを対象とした犯罪が社会問題ともなっており、携帯各社は「子どもに持たせて安心できる」携帯を発売している。こうした子ども向け携帯では、GPSで現在地を把握できたり、簡単に防犯ブザーを鳴らして保護者にGPSの位置情報を知らせられたりと、さまざまな工夫が加えられている。

学校側も、特に公立学校では携帯の持ち込みが禁じられている例も多かったが、NTTドコモの夏野剛マルチメディアサービス部長によれば、学校でも持ち込みが可能になる方向で意識が変化してきているところだという。

携帯を持ち歩くことで子どもの安全が向上し、保護者も安心できるのは携帯のメリットだが、その反面、携帯のネット機能を利用して子どもが有害情報にアクセスし、さまざまな問題に巻き込まれる事例が増えてきている。

こうした現状に対して携帯各社は、有害なサイトに子どもの携帯からアクセスできないようにするフィルタリングサービスを2003年から順次提供しており、2006年からは学校や図書館などへのポスター、チラシの配布、自治体や警察との連携強化、イベント開催などを実施して普及啓蒙を図ってきた。昨年の9月末時点では63万1,000件だったフィルタリング利用者数は、今年9月末には210万1,000件と3倍以上に拡大し、認知率も今年5月の総務省調査では65.9%にまで上昇している。

このほか、携帯各社は子どもに対して携帯の安全な利用方法を指南したり、保護者のリテラシー向上を図るために安全教室を開催するなど、対策は強化しているが、利用者数、認知度ともにまだ十分とはいえない。

たとえばドコモが開催している安全教室では、最近は保護者からの依頼で開催することが多くなっているそうで、保護者の意識も高まってはきているとはいうものの、逆にそういったリテラシーが薄い保護者層に、どうやってフィルタリングの利用などの安全策を利用してもらうかも課題だ。

文部科学省の調査では小学校6年生の28.1%、中学校3年生の60.1%が携帯を持っており、小中高校生全体のネット対応携帯の利用人口は10月末時点で750万2,000人と推計されている。まだ多数の子どもが携帯で有害情報に自由にアクセスできる状況にあるわけだ。

実際、2006年に起きた出会い系サイト関連事件の被害者の8割以上が18歳未満であり、出会い系にアクセスした手段の96%以上が携帯・PHSを利用していたという警察庁の資料もあり、問題は大きい。

今年2月には文科省と総務省が全自治体の首長や教育委員長らに携帯のフィルタリングサービスの普及啓蒙を学校や保護者らに実施するよう依頼し、同時に警察庁も各都道府県警に同様の通達を出しており、対策は進みつつあるが、まだ課題は残っている。

課題の1つが、携帯のフィルタリングサービスの利用が選択制で、基本的に子どもや保護者の意志に任せられているという点だ。このため、政府の教育再生会議の合同分科会ではフィルタリングの法規制に関して議論も行われており、12月中にもまとめられる第三次報告に盛り込まれることになりそうだ。