GSMA Mobile Asia Congressが初めて開催されたマカオ。大型カジノの建設ラッシュが進み、日本からの直行便も増えるなど観光客の数も急上昇している。香港と中国大陸に隣接する小さな都市・マカオの興味深い携帯電話事情をレポートしよう。

3つの通貨による価格表示。香港ドルは普通に利用できる

1999年にポルトガルから中国へ返還されたマカオは、香港と同様の「特別行政区」であり、実質的には政治・経済が中国大陸と完全に分離されている。使用される貨幣通貨もマカオパタカ(MPO)であり中国の人民元とは異なっている。ただし香港からの観光客(香港人が大多数)の数が非常に多く、為替レートも近いため、マカオ内では香港ドル(HKD)が等価レートで日常的に利用されている。また近年は中国大陸からの観光客も増えているため、同じくレートの近い人民元を利用できる商店も増えている。実経済の中で他国の通貨がそのまま通用しているのは不思議な感覚だ。

マカオの人口は52万人。これに対して携帯電話の回線数は60万以上となっており、昨年時点での普及率は約120%となっている。これは観光客など流動人口が多く、プリペイド利用者(プリペイドSIMカード)の数が非常に多いためであるようだ。この少ない人口に対し、通信事業者はなんと4社が営業している。同じアジアの都市国家である香港が人口約700万に対して5社、シンガポールが約450万に対して3社であることを考えると、マカオの通信事業者の多さは特異的だ。しかしこれはマカオという地域が置かれた状況をそのまま物語っている。

街中に携帯ショップが多いのは普及率が高いためだろう

HSDPAやCDMA2000のサービスも提供中

マカオの通信事業者のうち、地場の企業といえるのはCTM(マカオ電信)だ。CTMは携帯電話の他に固定電話やブロードバンドサービスを提供するマカオ最大の通信企業である。一方他の3社は、それぞれ香港の通信キャリアの子会社的存在であるHutchisonマカオとSmarToneマカオ、そして中国大陸の中国聯通が経営を行っている中国聯通マカオである。すなわち、マカオとは隣接する中国大陸および香港と実経済が一体化された地域であるわけだ。たとえば、中国聯通は中国からのCDMA利用者の国際ローミング受け入れ用として営業を開始しており、マカオ内だけでのビジネス目的で事業者免許を取得したわけではないのだ。

フラッグキャリアのCTMは大規模店も多い

Hutchisonは他国同様「3」のブランドで展開。なおメーカーショップ(Nokiaストア)があるのはGSM/W-CDMA圏ならでは

SmarToneはプリペイドSIMカード(商品名:点点通)の販売に力を入れており、街中の商店の軒先に簡易販売スタンドを多数設けている

中国ではおなじみの中国聯通。唯一のCDMAキャリアだ。マカオと中国両方の電話番号を使えるデュアルナンバーサービスも提供している

マカオの携帯通信方式は中国聯通がCDMA2000のほかは、3社がGSM方式だった。これに加えて、CTMとHutchisonは3G免許を取得しW-CDMA方式を提供、最近になってHSDPAサービスも開始している。街中ではこれらの事業者のブランドで営業する店舗のほか、家電店や携帯電話販売店でSIMロックのない携帯電話が自由に販売されており、中古品の売買も盛んだ。またカジノ場が多いという土地柄からか、質屋でも中古の携帯電話が売られているのが面白い。超高級なラグジュアリー携帯"Vertu"が質屋で売られているのはおそらくマカオくらいではないだろうか。