PT/Expo Comm Chinaの各携帯メーカーブースにはCDMAとGSMの両方式に対応した端末をよく見かける。いずれの端末にも「世界風」という共通のロゴが印刷されている。この世界風とはどのようなサービスなのだろうか?

CDMAとGSM両方式を提供する中国聯通のサービス

中国聯通ブースでの世界風の説明。双網双待手机=デュアルモード・デュアル待ち受け端末の意味

中国聯通(China Unicom)は中国の2大携帯電話事業者のうちの1つだ。最大手の中国移動(China Mobile)がGSMサービスを展開しているのに対し、中国聯通はCDMA2000とGSMの両方式をサービスしている。リソースを注力しているのはCDMAサービスのほうで、各種コンテンツサービスなどはCDMAのみで提供。一方同社のGSMサービスはパケット通信も一部主要都市のみ対応など、音声通話の利用をメインに据えたベーシックなサービスのみを展開している。

中国聯通としては、CDMAの利用者を増やしコンテンツなど通話以外からの課金収入を増やしたいところ。しかし実際は同社のCDMAサービス加入者数は約4,000万人で、約1億5,600万の全加入者のうち4分の1程度に留まっている。中国内でも地方はCDMAのネットワークが弱いエリアがあることや、海外利用ではヨーロッパなどCDMA(2000)の無いエリアでローミングができず、ビジネス用途には不向きであるなど、中国全土のみならずほぼ全世界をカバーしているGSM方式よりも利用エリアが狭いという印象があるようだ。また端末の種類もGSM方式の半分以下と少ないこともユーザーがなかなか増えない理由になっているようだ。特にCDMAはスマートフォンなどのハイエンドモデルが少なく、端末バリエーションはどうしてもGSMよりも劣ってしまう。

そこで中国聯通が2004年から開始したサービスがCDMAとGSM、両方式に対応したデュアルサービス「世界風」である。CDMAのカバーエリアの狭さをGSMとのデュアル方式により広げるという発想により登場したサービスだが、ターゲットユーザーを絞ったことから着々と利用者を増やしている。

CDMAとGSMの同時待ち受けが可能な「世界風」

世界風対応端末はSIMカードスロットを2つ搭載している。1つはCDMA用のR-UIMカードスロットで、こちらに中国聯通のCDMAサービスのUIMカードを装着する。もう1つのスロットはGSM用で、同社のGSMサービスのSIMカードのほかにもライバル中国移動のSIMカードや、海外渡航時などは現地のプリペイドSIMカードを装着して利用することもできる。すなわち1台で2方式に対応すると同時に2つの電話番号を利用することもできるわけだ。CDMAとGSMはどちらも常時待ち受け可能であり、片方を利用中はもう片方のサービスは話中となるとのこと。また各種コンテンツサービスは同社のCDMAサービスを利用することになる。

対応端末には「世界風」のロゴが入っている。SIM/R-UIMカードスロットを2つ備え、2方式に対応する(端末はUTStarcom G50)

待ち受け画面にはアンテナマークが2種類。CがCDMA、GがGSMである(画面左上)

サービス開始当初はMotorola、Samsung、LGの大手メーカーから高価格な高級モデルのみがリリースされ、価格も5,000元(約7万5,000円)以上と高価であった。しかしその後は年々ユーザーも増え、最近では中国メーカーも含め複数社から多数のモデルが発売されている。これらメーカーの中には中国Coolpadのように自社製品のほとんどをこの世界風対応にしているところもあるほどだ。また利用ターゲットをARPUの高いビジネスユーザーに絞り、端末ラインナップもスマートフォンや高級モデルなど、価格や機能の高いものを中心にしている。そのため同社の端末は"大人向け"と呼べそうな落ち着いたスタイルのものが多く、それが同サービスの利用者からも高い評価を受けているそうだ。

端末ラインナップのほぼすべてが世界風対応であるCoolpad

PDAタイプやWindows Mobileスマートフォンなどハイエンド機がほとんどだ(左からCoolpad 269、768、728B)

Samsungの世界風対応機は大人向けとも言える高級感ある端末が多い。左の「W579+」は右の「W579」のマイナーチェンジ版で、カラーリングに金色を取り入れている

Hisenseなど、中国の中堅メーカーも世界風端末に活路を求めているようだ

中国ではTD-SCDMAサービスがGSMとのデュアル方式になるなど、SIMカード2枚刺し端末が今後一般的な商品になっていくかもしれない。日本でも同じCDMA方式を採用するauや、端末1台で2つの電話番号を利用するNTTドコモの「2in1」サービスなどに、世界風のような機能を搭載することも将来の参考になるのではないだろうか。