日立製作所は、一般消費者向けパソコン「Prius」の生産を停止したことを明らかにした。企業向けパソコンは、すでに2007年春に、自社による開発、生産からはほぼ撤退しており、同社のパソコン事業は大きな転機を迎える。

同社広報部では「量販店などで販売している従来型の家庭向けパソコンは事業環境が厳しいことから、今後、この領域では、放送と通信を融合した新しい形式の商品に移行していきたい」としている。具体的に、新たな商品がどのようなものになるかは未定で「現在、検討中」(同社広報部)だという。「Prius」は2007年の夏モデル以降、製品を投入していない。

企業向けパソコン「FLORA」は、開発、生産の大半を2007年春に、米ヒューレット・パッカード(HP)に委託、OEM供給(HPから製品供給を受け、日立ブランドで販売)を受けており、今後、「FLORA」ブランド製品としては、シンクライアント端末だけ、自社での開発、生産を継続する意向だ。同社は、ここ数年、企業が情報セキュリティの体制を強化している潮流を受け、端末側に情報記録装置をもたない、モバイルのシンクライアント「セキュリティPC」を2005年に製品化するなど、シンクライアントに注力している。

2006年度の同社連結決算では、コンピュータ関連の事業が属する「情報通信システム」の売上高は対前年同期比5%増の2兆4,722億円だが、営業利益は同29%減の603億円で、パソコンの売上高は同34%減の695億円だ。同社の2006年の国内パソコン市場でのシェアは、4.6%で、順位は8位だった。(調査会社 MM総研 調べ)

電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、2006年度の国内パソコン出荷実績は、台数は、対前年同期比6%減の1,208万9,000台、金額は2期連続の前年割れで、同9%減の1兆4,653億円だった。企業向けは堅調だった一方、個人向けは伸び悩んだ。出荷単価はデスクトップが対前年同期比4,000円減の11万2,000円、ノート型は同5,000円減の12万8,000円、全体では同4,000円減の12万1,000円だ。個人向けは競争激化、低価格化が進み、利益確保は困難になってきている。