まとめ~リアルな顔表現は「不気味の谷を飛び越えるか」
今回、NVIDIAが詳解した顔のリアルタイムレンダリングのデモは、このままゲームの通常シーンに実装していては重すぎるが、インゲーム・ムービーのシーンとしてはそろそろ実装の検討を行ってもよい頃なのかもしれない。
今回のNVIDIAの顔デモはリアルタイム3Dグラフィックスの顔レンダリング技術の全部入りという感じではあったが、実は多少の妥協をしつつもかなり"いい線"までを実装したゲームエンジンがすでに開発されている。それがドイツのCRYTEK社が開発中のPC向けDirectX 10対応3Dゲームエンジン「CRY ENGINE 2.0」だ。2007年11月にはCRY ENGINE 2.0採用第一弾タイトル「CRYSIS」が発売される予定になっている。今回のレポートで最新の顔レンダリングに興味を持った人は要チェックだ。
今回はGPUメーカーのNVIDIAのセッションだったので、話題の中心が「描画」であったが、顔表現のリアリティ向上については表情表現のリアリティ向上も重大なテーマとなっている。これについては、人間の表情を実際に取り込んで3Dモデルに適用する顔モーションをキャプチャーベースのものと、解剖学や精神医学の理論をベースに表情を人工的に合成して3Dモデルに適用する2つのアプローチがそれぞれ進化しつつある。
リアリティでは前者が優位で、後者はアニメーション開発コスト的に優位……というのが現状での評価だが、後者の進化は著しく、リアリティの面でかなりモーションキャプチャー式に肉迫するところまで来ている。
AVID社から登場した人工表情合成の開発ソフトウェア「FACE ROBOT」は、その最先端実例で、その生命感には高い評価が与えられている。
実際のゲームでも、後者の人工合成表情報式をこだわって採用しているところもある。それはPCゲームメーカーとして著名なVALVE SOFTWAREだ。同社のHalf-Life 2シリーズではキャラクターの表情制御に、カリフォルニア医大の精神医学教授であり、心理学の分野でも著名なPaul Ekman博士の理論を実装している。
最近では、人間が3Dゲームグラフィックスの顔表現を見たとき、それが微妙にリアルで、なおかつ微妙に非現実的であると、なぜか逆に著しく不気味に感じてしまうという「不気味の谷」(Uncanny Valley)現象が取り沙汰されることがよくある(オリジナルの論文は「Subjective Ratings of Robot Video Clips for Human Likeness,Familiarity, and Eeriness: An Exploration of the Uncanny Valley」を参照のこと)。全くリアルでないと人間は脳内でその足りない部分をイメージして補間するので不気味に思わないのだが、そこそこリアルになると脳内でのイメージ補間が行われず「不気味」を感じて、その印象がこの「不気味の谷」に転落してしまうのだ。
これまでのハードウェアではリアルタイム3Dグラフィックスでは「不気味の谷」に近づくこと自体が困難だった。しかし、グラフィックス表現や表情表現も進化した今世代のPCハードウェアやPS3,Xbox360といった新世代ゲーム機では、この「不気味の谷」に近づき、丁度、瀬戸際に来ているとされる。
今世代で果たしてこの「不気味の谷」の"向こう側"にジャンプできるのか、今後も注目していきたいところだ。
(トライゼット西川善司)




