昨年末、ソニー関係者には降って湧いたような大災難が起こった。ソニーが製造した大量のノートPC用電池パックが世界中で炎と煙を巻き上げたからである。

世界の主要PCメーカーが大規模なリコール活動を行った。Dell、Apple、Lenovoなど、ややもすれば100万個単位のリコールにより、ソニーは512億円を用意して自主交換を実施した。

高品質が売り物のソニーだけに、電池パックの品質問題は、その他のソニー製品に対する信用不安をも呼びこんだ。ブランドイメージ再構築中のソニーにとっては、まさに泣き面に蜂である。深刻な品質問題が起こるということは、技術と管理の両面における問題の総合的な現れなのだ。これほど大規模な品質事件が起きたということは、ソニーの体制上における問題が生易しいものではないことの証左であろう。当然のことながら、バッテリ問題を契機に徹底的な改革が行われていなければ、ソニーの中国におけるその他の業務開拓にもマイナス影響が出てくることだろう。

もちろん筆者も、ソニーの中国市場に対する固い決意を疑うつもりは毛頭ない。2005年3月、63歳のHoward Stringer氏がSony Universalの董事長兼CEOに就任、中国を初めての外国訪問地に選んだことからも、中国市場を重視する姿勢がうかがえる。

だが、いまのソニーに利益率の減少と競争力の衰退という事実が存在していることは間違いない。そして最大の危機は、競争相手が成長し続けていることなのだ。

ソニーのすべての業務分野に強力な競争相手がいるし、価格パフォーマンスが問われる製品分野ではSamsung電子に抗し得ないでいる。デジタル音楽プレーヤーではAppleの後じんを拝し、カラーテレビでもSamsung電子、松下、シャープおよび中国メーカーの幾重もの包囲の中にある。