学会で成果発表へ

マイクロシステムの研究者が一堂に集う国際学会IEEE MEMS、その2008年および2009年大会において、先述の蛾を題材に研究を進めているグループと同じ舞台で成果発表をすることとなった。

蛾のプロジェクトグループは、蛾の翅が上下に動かされるという映像を示した。一方、佐藤氏のグループでは、飛び始めたかと思えばそれが急停止し、上昇すれば下降する、さらには左右に綺麗な孤を描いて旋回までする、そんなGreen June Beetleの飛行模様を公開した。

「すでにバークレーに異動していましたが、発表後にミシガン大の友人が、『I wish you were still in Michigan』と言ってくれたことがありがたかったですね」(佐藤氏)

現在、遠隔操作の実験では、左画像のような無線発信装置と、右画像のような受信装置(昆虫の背中に装着)を使用している。自由飛行を制御することができる

こうした成功の最大の要因について問うと、佐藤氏は次のように答える。

「電気的な刺激を動物生体に与えれば、手足・翅が反応するという事実は古くから知られていますし、不思議なことではありません。望み通りに行動を制御するのがポイントで、そこまでに至るには時間がかかりました。予測して、予測を検証するための実験、得られた結果をもとに新たな予測……と、系統的に、また優先順位を考えて検討を進めていくことで目標に到達できたと思います。化学・電子工学・生物学が入り混じる学際的な仕事ですが、専門分野に限らず、基本的な研究の進め方が大切だと改めて実感しました。早稲田で研究の基礎から鍛えられたおかげです」

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