プロジェクト参画の経緯

このプロジェクトに参画する以前、佐藤氏は早稲田大学 理工学部 応用化学科で研究のノウハウを一から学び博士の学位を取得、さらに助手として化学の研究を続けていた。

今後の方向性について思案していた折、ミシガン大学(University of Michigan)教授(当時。2008年よりカリフォルニア大学バークレー校教授)のMichel M. Maharbiz氏による博士研究員の公募を目にする。Maharbiz教授は、自身の研究案がDARPAのHI MEMSに採用され、その主任研究員を探していた。佐藤氏は、その研究内容に魅力を感じて応募。書類審査、面接を経て2006年11月に採用。2007年1月より同教授のグループで主導的に研究を進めている。

佐藤氏がMaharbiz氏に招かれた当時、DARPAのHI MEMSには、彼らのグループの他に、マサチューセッツ工科大学 (MIT)とコーネル大学 (Cornell University)の2つのグループが採用されていた。MITとコーネル大学のグループは、蛾など、チョウ目の昆虫を使い、Maharbiz氏のみ、カブトムシやカナブンなどの甲虫目の昆虫(以下、甲虫)を研究題材に選んでいたという。

「蝶や蛾は基本的にいつも飛行しています。一方、甲虫は、翅をしまって、飛行ではなく歩行で普段移動していますね。だから、まず最初に飛行開始をコマンドしなくてはなりません。旋回や上昇・下降といった芸当は、二の次でした。元々、『SFみたいな研究が成功するのか』とHIMEMS自体に懐疑的な意見が多い上に、対象の昆虫が飛行の専門家ではないため、私達のグループの成功を信じない声が少なからずありました。『いつも飛んでいるような昆虫を使わなければ無理だよ』と」(佐藤氏)

PCの上でたわむれる研究用の甲虫。たしかに飛んでいない時間のほうが長い

>> ゴミムシダマシが飛んでくれない