考察

ということで、プラットフォームこそ異なるものの、こちらのテストと同じものをもう一度繰り返して3つの製品を比較してみた。以下、これらから導き出されたものをまとめて説明したい。

(1) GeForce GTX 680のPCIe Gen3対応はまだ: 結果から見る限り、どう判断してもGeForce GTX 680のPCI Express Gen3への対応は完了していないと判断せざるを得ない。なにしろ帯域がGen2のままだからだ。また先にPhoto06でGPU-ZのステータスがPCIe Gen2 x16になっていることを示したが、同じGPU-Z 0.6.0でRadeon HD 7970のステータスを見るとこの通り(Photo18)で、きちんとGen3対応が示されている。

Photo18: ちなみにこのGPU-Z 0.6.0は3月19日にリリースされたばかり。

ただこれがハードウェア的にGen3に未対応なのか、それとも何かしらの理由でソフトウェア的にGen2動作をさせているだけでハードウェアはGen3対応なのか、筆者は情報を持っていない。(※)

編集部追記(2012/03/23)
NVIDIAによると、「Intel X79 Expressプラットフォームが、正式にPCIe Gen3に対応していないため、動作確認が完全に取れるまでソフトウェア的に無効にしている。ハードウェアはGen3対応」とのこと。なお、次世代チップセットなども含む、正式にGen3をサポートするプラットフォームでは、Gen3が有効化される予定。

もっとも現時点でGen3対応になったからといって3Dゲームには影響は殆どない。影響があるのは専らGPGPU的な使い方をするケースに限られており、後述の理由でGeForce GTX 680にはやはり関係が無いとも言えるので、今のところこれによる不都合はまぁないだろう。

(2) GPGPU向けは考慮していない: GeForce GTX 680はGK104コアを搭載した製品だが、これは本来ミドルクラス、つまりGeForce GTX 670 Tiとかになる予定だったものを急遽Radeon HD 7970対抗としたと考えられる製品である。そして、AMD同様にNVIDIAもおそらくハイエンドとそれ以外で内部構造を変えているだろうと筆者は予測する。何の話かというと、こちらの最後で考察として説明した通り、Radeon HD 7800シリーズ以下の製品はRadeon HD 7900シリーズと「見かけは一緒だが、内部を32bit演算に最適化した(≒64bit演算のハードウェアサポートを大幅に削った)ものだと推定したわけだが、Kepler世代のAdvanced SMXに関しても同様に、32bitと64bitの両方の演算に対応したバージョンと32bitのみに最適化したバージョンがあり、GK104は32bitに最適化したバージョンであろう、と想像できる。64bitにも対応したバージョンは、いまだアナウンスが無い(そもそも出るのかどうかも良くわからない)GK100が実装しているのではないか、と思う。

実際、こう考えるとGeForce GTX 680のGPGPU的な性能がRadeon HD 7970はおろかGeForce GTX 580にも劣る場合があることも素直に理解できる。実際GPGPU的なテストに関して言えば、丁度Radeon HD 7950とRadeon HD 7870を比較した感じに近いものになっている。おそらくNVIDIAはこのGK104コアを使ってTesla製品を作るつもりは無い(か、あってもローエンド向け)なのだろう。下手すると、QuadroもGK104では十分ではない可能性もあり、こちらも出ないかローエンド向けということになるかもしれない。それであれば、PCIe Gen3の対応は消費電力とダイサイズの無駄、という考え方も当然あるわけだ。

(3) ゲーム用グラフィックカードとしては強力: 「Radeon HD 7970に比べて最大40%高速」という謳い文句が実情にあっているかどうかは微妙なところで、今回で言えばSkyrimの平均フレームレートが、解像度が小さいときには15%ほど上乗せという程度。まぁ一番極端な数字で言えば、Heaven Version 2.5の最小フレームレートが解像度によっては50%以上増加していたりするので、まるっきり嘘というわけではないが、体感としてはそこまでの性能差は無い気がする。とはいえ、GeForce GTX 580よりは確実に性能が上がっているし、かなりのテストでRadeon HD 7970と互角以上のスコアを出しており、しかも消費電力はRadeon HD 7970より低く抑えられている。後は価格と入手性次第であるが、Radeon HD 7970が現状で概ね6万円程度の市販価格なので、これが5万円台とかで入手できればかなり競争力は高いと言えるだろう(勿論発売当初はプレミア価格なので、下手をするとRadeon HD 7970よりも高くなるかもしれないが)。

(4) で、Teslaは? : 今回のテストを終わって、一番気になったのはこの点である。上でも書いた通り、GK104はTeslaには不適当な構成になっていると思われる。なのでおそらくTeslaはGK100待ちという事になるのだろう。問題はなぜこのGK100が後送りになり、ミッドレンジ向けのGK104コアが先に出てきたか、である。既にAMDはTahiti世代のAMD FireStreamの開発がだいぶ進んでいる筈で、このままだとGPGPU向けアクセラレーションのシェアを大きく握ることになるだろう。NVIDIAもそんなことは判っている筈でありながらGK100の投入を遅らせた(のか、ひょっとして投入を断念したのかは知らないが)理由が非常に気になるところである。