働くママ・パパにとって、とってもありがたい"保育士"の存在。できれば良い関係を築きたいと思いながらも、その関係性に不安を感じることもありますよね。この連載では、保育園の日常をつぶやいたツイッターが話題の男性保育士「てぃ先生」に、保育士としての"本音"を伺っていきます。

6回目は家庭の様子が保育士にどれだけ伝わっているのか聞いてみました。

家庭の様子は保育士にどれくらい伝わっていますか?(画像はイメージ)

連絡帳は一言書いてあればいい

――保育園の連絡帳には、体調や睡眠時間などのほか、自由に書く通信欄があります。何を書くか悩む保護者も多いようですが、保育士さんとしてはどういう書き込みがあるとうれしいものですか?

保護者と保育士の関係性によると思いますが、僕の場合、何でも話してくれる保護者の方から「この土日は○○に行きました」「○○をして遊びました」などと書き込みがあったときには、子どもとのコミュニケーションのきっかけにします。

けれど、それがないと保育に支障が出るということはありません。本当は必要なことだけ書いてくれればいいと思っていて、例えば「きょうも元気です」だけでもいいかなって。だって、体調不良など、本当に書かなければいけないことがあったら、何も言われなくても書きますよね。

「元気です」の一言で済んで、それがお母さんたちの負担軽減になるなら、それで全然構わないと思います。それすら面倒だったら「○(マル)」でもいい。保育士と意思疎通が取れれば何でもいいと思うんですよ。

――あまり何も書かないと、子どもに関心のない親だと思われませんか?

それは考えすぎだと思います。周りの目を気にする必要はなくて、書くことがなければ書かなくてもいいし、書きたいことがあるときに書けばいい。保護者の方は「何か書かなきゃ」っていう義務感に駆られてしまっているように見えます。そしてもしかしたら、それを無言で強制してしまっている保育園もあるかもしれませんね。

ただ、登園・降園時に会話がない、連絡ノートにも何も書かれていないということだと支障をきたす場合があるので、どちらかだけでもご対応いただけるといいなと思います。

――食事の内容を書くのも、これだと品数が少ないから一品足しておこうかしらって変な見栄が働いたりして……

そういうの、見てすぐ分かります(笑)。子どもたちも食べた物の話をしますしね。

朝ごはんなんて特にそうで、時間がなくて食べられなかったときでもお母さんたちは何か食べさせたことにしたくて「パン・ヨーグルト」とか書いていたりするんですね。それで子どもと「きょうはパンとヨーグルトを食べたんだね」なんて話していると、「え、パンは食べたけどヨーグルトは食べていないよ」なんてやり取りはたまにあります。

――全部バレているんですね(笑)

以前、朝晩のメニューに必ず牛乳って書いてくるお母さんがいたんですね。それで「毎回牛乳飲むのってすごいね」なんて話していたんですが、子どもは「牛乳なんてたまにしか飲まない」って言う。

どうやら、そのお母さんは牛乳を飲まないと栄養バランス的にダメなんじゃないかと思って書き足していたようなんです。飲んでいないことがバレているって、お母さんには最後まで言えませんでしたけど(笑)。そのくらい、周りの目を気にしている方が多いということかもしれません。窮屈ですよね。

家庭の様子はおままごとに出る

――話を聞いていると、家庭のことはすべて筒抜けなんじゃないかと怖くなります。子ども自身は家であったことをどのくらい保育園で話すものですか?

直接的に「きょうこんなことがあってね」と話す子もいますが、そこまで多くはありません。それよりも遊びのなかで垣間見えることがたくさんありますね。

一番分かりやすいのは、何かトラブルが起きたときです。例えば、お友達とおもちゃの取り合いになったとします。そんなときに、お友達と話し合いをして解決しようとする子を見ると、きちんと話し合って物事を解決していくご両親の下で育ったのかなと思います。

でも、お友達に自分の主張を一方的にうわーっと言って言い負かそうとする子もいて、そういう子はご両親も何かあった時にお互いの主張をとにかく言い合うことがあるのかなと思う。

良いか悪いかは置いておいて、子どもたちは両親のトラブルの解決法を見て学んでいます。そして、それ以外の方法を知らなかったら、自然と同じ振る舞いになりますよね。

――トラブル時以外でも家庭の様子が分かることはありますか?

よく言われるのは、おままごともご家庭でのお父さんお母さんの立場がそのまま出やすいということです。

お父さん役の子に対して「お帰りなさい、きょうも大変だったわね」なんてうやうやしく声かけする子もいれば、「早く洋服脱いで、そこ置いといて!」と言ったりする子もいます。お父さん役の子が「夕飯、きょうもコレ?」なんて返すこともあるんですよ(笑)。家庭の様子が垣間見えますよね。

――家での親の言動がそのまま出てしまうんですね。保育士さんに一体どう思われているのかと心配になってしまいます

ご家庭でどういうコミュニケーションがなされているかっていうのは、子どもの態度に出ると思います。だって、それがその子にとっての「家庭」なんですもん。「この間も言ったじゃん!」「なんで分からないの!」なんて台詞は、きっと子どもが両親から言われているんだろうなって思いながら聞いていますね。

でも、別にだからどうだって勘ぐったりするようなものではないです。心の中で微笑ましく思っているだけですので安心してください。

てぃ先生

都内の保育園に勤める保育士。子どもの面白くてかわいい言動などをつぶやくツイッター(@_HappyBoy)が話題となり、フォロワー数は43万人(2017年9月20日現在)を超える。「顧問保育士」の肩書きを持ち、講演や研修の講師、保育園のプロデュースなど保育の幅広い分野で活躍している。著書に『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』『ハンバーガグー!』(KKベストセラーズ)がある。漫画『てぃ先生』(KADOKAWA/メディアファクトリー)のアニメもアプリ上にて配信中。