働くママ・パパにとって、とってもありがたい"保育士"の存在。できれば良い関係を築きたいと思いながらも、その関係性に不安を感じることもありますよね。

この連載では、保育園の日常をつぶやいたツイッターが話題の男性保育士「てぃ先生」に、保育士としての"本音"を伺っていきます。3回目は保育園の預け時期や、家族で過ごす時間に対する考え方についてお聞きしました。

てぃ先生が理想とする、保育園の預け時期は?

僕の理想は3歳から

――いつから保育園などに子どもを入れるのがベストかという選択は、ご家庭によってそれぞれだと思いますが、もし先生にお子さんがいたら、何歳から預けますか?

うーん、難しいところですが、本当に理想だけを言うのであれば、0歳から2歳くらいまでは家で面倒を見たいです。僕とお嫁さんとで、うまく育休を取って。でも、それはずっと家で過ごすという意味ではなく、子育て支援センターなどを使いながら、2歳くらいから保育園など、同年代の子どもたちがいる環境に入れる。それも初めのうちは、丸一日ではなく、半日ずつなどにするかもしれません。

――そう考える理由は?

あくまでも僕の意見ですが、特に乳幼児期においては家族からの愛情を感じる時間が多ければ多いほど良いと思うからです。

「子どもに主体性を持たせたい」という声をよく聞くのですが、主体性や社会性、物事に関心を持つ力などは、かけられた愛情によって育まれると僕は考えています。自分のことを100%愛して認めてくれる存在がいて、「失敗したり嫌われたりしても、ここに帰ってくれば大丈夫」と思える。そうしたら、子どもは安心して外の世界へ出て行けるのではないでしょうか。家庭で子どもと一緒にいられたら、そのような環境が形成しやすいですよね。

――ただ、いまは保活が大変で、0歳児から子どもを預けないと保育園に入りにくいという事情もあります

そうですね。特にいまは親が自由に選べる状況にないので、0歳から預けて働く事情があることも分かりますし、早くから預けてたくさんの大人と触れ合うことが良いという考え方もあります。

加えて、共働きが当たり前の世の中になりつつあり、子どももそういった環境に順応しているように感じます。「預けるのはかわいそうかも」なんて思わずに、胸を張ってお仕事をがんばってほしいです。その間、僕たち保育士がしっかりと愛情を注いでいますから。

3時間の"ながら子育て"より、100%向き合う30分を

――保育園に子どもを預ける親が、100%の愛情を伝えるためにはどうしたら良いでしょうか?

仕事が終わった後は大変だと思いますが、できる限り子どもとの時間にあててほしいなと思います。子どもの成長ってあっという間ですから、毎日を思い出にするつもりで。とはいえ、家でやらなければならない仕事などもあると思うので、「寝るまでずっとべったり過ごしなさい」と言っているのではありません。20分でも30分でも良いので、1日のうちの一定の時間を"子どもの時間"と決めて確保してほしい。

僕が問題だと思うのは、"ながら子育て"です。家事をしたり、パソコンを開いたりする用事もあると思いますが、"ながら"では子どもは満足しません。「携帯しながら僕の遊びを見ている」「パソコンをしながら私を見ている」と認識している子どももいます。

"子どもの時間"を決めるというのは、その時間は何もしないで、100%子どものためだけに使うということ。それだけで、全然違うと思う。

――子どもとだけ向き合う時間を作るんですね

仮に保育園から帰って寝るまでに3時間あるとして、その3時間をずっとパソコンをカタカタしながら、たまに呼ばれて見に行って「すごいねー!」と言って、パソコンに戻っていく……。これを続けるより、たった15分、30分でも子どもとの時間を取る方が、結果的に子どもの満足度は高いと思います。だってその3時間、子どもは一緒に遊んだと思っていないわけですから。

「もっともっと」の見極めが大事

――よく分かります。ただ結局30分では済まなくて、「もっともっと」が果てしなく続いてしまう気もします

「愛情欲求からのもっと」であれば、できれば子どもが満足するまで寄り添ってあげてほしいと思います。子どもの愛情欲求に気がつけずにいると、赤ちゃん返りや指しゃぶりなどに進む可能性が出てきますから。

ただ、「楽しいからもっと」であれば、やはり時間を決めて対応するのが良いと思います。「きょうは余裕があるから遊ぶ」「きょうは忙しいから遊ばない」といった不安定なサイクルではなく、一定のサイクルを習慣化することで、子どもは安心して愛情を受けることができます。家族で「この時間」と決めているなら、貫いた方がいい。繰り返しが重要なんです。1日や2日やってみて「効果がないや」とすぐに諦めるのはもったいない。

――確かに、親の都合で「遊ばない日」を作ることなく毎日必ず応えてくれると思ったら、子どもは安心ですよね

子どもたちにこうしてほしい、ああなってほしいと理想を求めるのであれば、親たちも子どもたちの理想にならないとフェアじゃないです。だから、生活サイクルでもしつけでも何でもそうですが、本当にそうしたいと思うことならば諦めずに続けて習慣化するしかないし、親が本気で習慣化しようと思ったら、それは絶対に習慣化します。

もちろん個人差はありますよ。1週間で習慣になることもあれば、2~3カ月かかることもある。でも、変わらないことは何もないんです。続けていけば、必ず変わります。

てぃ先生

都内の保育園に勤める保育士。子どもの面白くてかわいい言動などをつぶやくツイッター(@_HappyBoy)が話題となり、フォロワー数は43万人(2017年9月20日現在)を超える。「顧問保育士」の肩書きを持ち、講演や研修の講師、保育園のプロデュースなど保育の幅広い分野で活躍している。著書に『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』『ハンバーガグー!』(KKベストセラーズ)がある。漫画『てぃ先生』(KADOKAWA/メディアファクトリー)のアニメもアプリ上にて配信中。