JR西日本広島支社は4日、新山口駅にて「SLやまぐち号」新客車の報道公開を実施した。新客車は5両編成で、SL全盛期の旧型客車を復刻しつつ、バリアフリー対応なども考慮して新製されている。「幕末維新やまぐちデスティネーションキャンペーン」の開催に合わせ、9月から「SLやまぐち号」に導入される予定だ。

「SLやまぐち号」の新客車(35系客車)。新山口駅で報道公開が行われた

「SLやまぐち号」の新客車は「35系客車」と紹介された。新潟トランシス製で、車両番号は1号車がオロテ35-4001、2号車がスハ35-4001、3号車がナハ35-4001、4号車がオハ35-4001、5号車がスハテ35-4001。快適性とレトロ感の両立をコンセプトに製造され、当時の形状を最新の機能で再現したという。この日の報道公開では、新山口駅3番線ホームに新客車が入線した後、外観と1~3号車の車内が公開された。

1号車はグリーン車で定員23名。戦前の特急「富士」、戦後の特急「はと」「つばめ」などで活躍した展望車マイテ49(一等車)をモデルとしており、先頭部に開放型展望デッキを設け、展望室も用意した。車内の座席は横3列(2列+1列)の回転リクライニングシート(一部座席はボックスシート)で、コンセントも装備している。連結部側の座席は4名ボックスシート・2名ボックスシートに。座席や床に木を用いることで当時の質感も再現しており、かつての一等車の重厚な雰囲気を感じさせる車内空間となった。

2~5号車は普通車指定席。座席は4名ボックスシートで、シートピッチは1,700mmとされている。ボックスシートのテーブル付近にコンセントが装備された。普通車の各車両の定員は2号車が64名、3号車が40名、4号車が72名、5号車が46名。1編成あたりの定員は計245名となる。2~4号車は丸屋根構造と大きなガラスを使用した側窓が特徴だったオハ35(三等車)、5号車は戦前を代表する客車といわれるオハ31(三等車)をモデルとしている。

1号車(グリーン車)の車内。座席は横3列(2列+1列)の回転リクライニングシート。展望室やボックスシートも備える

普通車の車内。座席は4名ボックスシートに

3号車のフリースペース。子供たちが遊びながらSLについて学べるゲームを設置した

3号車では座席の他にフリースペースと販売カウンターを設置した。フリースペースはイベントコーナーとして活用され、運転シミュレーター「機関士体験走れSL『やまぐち』号」や「走れ罐焚き(かまたき)ゲーム」など、子供たちが遊びながらSLを学べるゲームも用意された。「SLやまぐち号」関連の展示スペースも設置されている。

新客車は外観・車内ともに旧型客車のイメージを踏襲する一方、新製された現代の車両ならではの利便性・快適性も備える。トイレは3号車を除く各車両に設置され、温水洗浄機能付きの洋式トイレに。ベビーカーも置ける荷物置場は全車両に設置され、うち1カ所(2号車)は大型荷物にも対応する。5号車のトイレはバリアフリー対応の多機能トイレとなり、他に多目的室や車いす対応の座席(2名分)も設置される。

「SLやまぐち号」は山口線新山口~津和野間で運行される。新客車の導入を受け、一部停車駅で改修が進められ、新山口駅も「SLやまぐち号」停車ホームの床面を昭和初期のレトロ調に改修している。新客車は9月最初の「SLやまぐち号」運転日から導入される予定で、SL弁当の販売や車内での特産品の販売・PR、停車駅でのおもてなしなども行うとのこと。これにともない、現在のレトロ客車5両による運行は8月27日までとなる。