鉄道友の会は24日、今年のブルーリボン賞(最優秀車両)にJR九州BEC819系、ローレル賞(優秀車両)にJR東日本E235系・えちごトキめき鉄道ET122系1000番台・静岡鉄道A3000形を選定したと発表した。JR九州の車両のブルーリボン賞は2001年の885系以来、ローレル賞も含めると2005年の九州新幹線800系以来の受賞となる。
ブルーリボン賞に選ばれたJR九州BEC819系は「人と地球の未来にやさしい」がコンセプトの交流架線式蓄電池電車で、愛称名は「DENCHA(デンチャ)」。電化区間は交流電車として、パンタグラフから電気エネルギーを取り入れて走行(架線走行モード)。非電化区間は車両に搭載した主回路電池に蓄えた電気エネルギーで走行(蓄電池走行モード)する。
BEC819系「DENCHA」は817系2000番台をベースとしたアルミニウム合金製の2両編成で、817系と区別しやすいように、乗降扉や電池箱外部などに青色を配した。2016年10月に先行車1編成が導入され、筑豊本線若松~折尾間(若松線)で営業運転を開始。今年3月に量産車6編成を導入し、同区間の気動車をすべて置き換えた。現在は筑豊本線・篠栗線の電化区間(福北ゆたか線)でも一部運用され、817系と連結しての営業運転も行われている。
気動車から電車(蓄電池電車)へ置き換えることで、沿線イメージ向上の効果が期待できるとともに、エンジンの騒音・振動・排気ガスがなくなり、動力費・メンテナンス費用の削減、回生ブレーキによる電気エネルギーの再利用など、環境負荷の低減にも大きく寄与する。ブルーリボン賞の選定にあたり、これらの特徴が高く評価されたという。
今年のローレル賞には3形式が選ばれた。E235系はJR東日本の新たな標準車両と位置づけられ、これまで電動車2両分をまとめて搭載していた制御装置を1両ごとに搭載する構成としたほか、車両制御システムとして新たに列車情報管理制御装置(INTEROS)を導入し、紙媒体の広告に代わってデジタルサイネージを車内の側窓上部と妻上部にも搭載するなど、ハード・ソフト両面で新基軸を取り入れた。
2016年3月から本格的に営業運転を開始した量産先行車に続き、今後は量産車も順次投入される予定。「今後の首都圏の快適な輸送サービスを担う存在」(鉄道友の会)として評価され、ローレル賞に選定された。
えちごトキめき鉄道ET122系1000番台は、リゾート列車「えちごトキめきリゾート雪月花」として2016年4月にデビューした2両編成の観光用車両。日本海ひすいラインの気動車ET122系をベースとしつつ、鮮やかな銀朱色の車体塗装や上下左右に拡大された側窓をはじめ、車体を新たに設計した。1号車(ET122-1001)はラウンジ形式、2号車(ET122-1002)はクラシカルなレストランスタイルの座席配置で、先頭部をハイデッキ構造とし、良質な眺望と開放感あふれる客室空間を生み出している。ローレル賞の選定にあたり、高いレベルの開発コンセプトを具現化し、沿線の観光振興に大きく寄与した点が評価された。
静岡鉄道の新型車両A3000形は、現在の鉄道車両で確立・熟成された高い信頼性を持つ技術をバランス良く選択し、路線規模・運行形態・保守性とのマッチングも考慮してコンパクトかつオーソドックスにまとめられた車両であることが評価され、ローレル賞に選定された。A3000形は既存車両1000形の置換えとして全12編成(計24両)導入する計画で、うち7編成は編成ごとに異なる7色のラッピングで装飾する予定となっている。
鉄道友の会ブルーリボン賞・ローレル賞は、国内における鉄道車両の進歩発展に寄与することを目的に、毎年1回、前年1月1日から12月31日までの期間に正式に営業運転を開始した新造・改造車両を対象に選定している。今年の候補車両は13形式だったとのこと。会員の投票をもとにブルーリボン賞・ローレル賞選考委員会が審議し、最優秀と認めた車両をブルーリボン賞、優秀と認めた車両をローレル賞に選定した。