美容や健康への意識が高い人との会話や、女性誌の特集などで最近よく見聞きするキーワード「グルテンフリー」。グルテンとは小麦や大麦、ライ麦などの穀物に含まれるタンパク質のことで、パスタやパン、ケーキ、ドーナツなど欧米の食品を中心に多く含まれている。このグルテンがさまざまな弊害をもたらすと話題になり、グルテンフリー(グルテン抜き)の食事が注目されることになっているのをご存じだろうか。

グルテンはパスタやパン、ケーキ、ドーナツなど欧米の食品を中心に多く含まれている

とはいえ、うどんやそうめんにも小麦粉は含まれているし、ランチを外食ですませることの多い社会人にとって、完璧なグルテンフリーの食生活を実施するのは、かなりハードルが高いのが事実。そもそも、誰もがグルテンフリーにする必要はあるのだろうか? また、グルテンフリーで本当に健康的に美しくなれるのだろうか? ウィメンズヘルスクリニック東京(旧AACクリニック銀座)の浜中聡子院長にうかがった。

和食を中心としたバランスのとれた食生活を

グルテンフリーという言葉を聞いたきっかけが、ベストセラーとなったテニスプレイヤー、ノバク・ジョコビッチ選手の著書『ジョコビッチの生まれ変わる食事』という人も多いだろう。

確かに、グルテンフリーの食事を開始して以来、「体は軽くなり、活力が湧き、長年悩んだ鼻づまり(アレルギー)も消え去った」とし、さらに4大グランドスラムを制覇して世界ランキング1位になったストーリーは、アスリートでなくても大変興味深いものだろう。もちろん、自身の判断でグルテンフリーの食生活を試してみるのは自由だし、すでに実践して効果を感じたという人も少なくないかもしれない。

だが、著書にも記されているように、グルテンを消化しきれない「グルテン不耐症」にジョコビッチ選手の不調の原因があったことは、忘れてはならない点だ。体調不良の原因は、腸内環境のバランスや穀物以外の食物に対する過敏症など、他にもさまざまなものがある。そのため、グルテンフリーの食生活に切り替えたからといって、誰もがジョコビッチ選手と同じような劇的な成果を期待するのは無理がある。

浜中先生は「グルテンが引き金となって発症する自己免疫疾患のセリアック病やグルテン不耐症の人は、もちろんグルテンフリーの食生活を行うべき。そうでない方の場合、炭水化物ばかりの偏った食生活は避けるべきだが、グルテンフリーを徹底するより、まずは和食を中心とするバランスのとれた食生活を送ることが大切」とアドバイスを送る。

大切なのは栄養バランスのとれた食事だ

私たちが一番気をつけなければならないのは、「グルテンフリー」という言葉がまるで流行語のように広がっているため、「グルテンフリー=素晴らしい健康法・美容法」と盲目的に信用してしまうことと言えよう。

「グルテンフリーはダイエットに効く」は本当か

「グルテンフリーの食生活にしたらやせた」というのは、よく聞かれる話ではある。ただ、これは「グルテンフリーにしたというより、パスタやパン、うどんなどの炭水化物を減らしたことによる成果という可能性が高い」と浜中先生は指摘。ダイエットしたいなら、グルテンフリーにばかり注力するより、「バランスのとれた食生活を送っているか」「適度な運動を定期的に行っているか」を今一度見直したほうがよさそうだ。

グルテンフリーというよりも、炭水化物を減らしたことによるダイエット効果の方が大きそうだ

さらに浜中先生は、「最近はグルテンフリーをうたった食品が多く販売されているが、グルテンフリーを最優先させ、それをおいしく仕上げるために余分な糖質や脂肪分が加えられていないか、必要な栄養素を含んでいるかなどのチェックも必要」と警鐘を鳴らす。以上のアドバイスから、「グルテンフリーがすべての解決策ではない」ということを肝に銘じておいたほうがいいだろう。

もしも、自分がジョコビッチ選手のような「グルテン不耐症なのでは? 」と気になる場合は、検査によって判断できる。ただ、一般的な消化器系の内科では検査できないため、事前に問い合わせして確認するのが賢明な判断と言える。

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