米Intelは2012年1月初旬に米ネバダ州ラスベガスで開催される家電展示会のCES 2012において、モバイルデバイス向けの最新プロセッサ「Medfield」ならびに、同プロセッサを搭載したリファレンスモデルを公開する計画だという。同プロセッサとAndroid OSを搭載したスマートフォンやタブレットは来年前半にも登場する見込みで、モバイルOS対応でARMに出遅れていた状況を打破できるかがポイントとなる。Technology Reviewが報じている

MedfieldはAtomをベースとした、Intelのモバイルデバイス向けプロセッサとしては初のSoC (System on Chip)。32nm製造プロセスを採用する。Intelは当初、モバイルデバイスにおいてもPCと同様にプロセッサ本体と複数のチップセットを組み合わせた3チップソリューションを採用していたが、後にGPU機能とメモリインターフェイスを包含することで、2チップ構成までシンプル化を行っている。Intelによれば、複数チップ構成を採用していた理由は、製品に応じて柔軟に構成の変更が行えるようにするための措置だったという。ただしこうした自由度のメリットがある一方で、実装面積やコスト上のペナルティが発生する問題がある。今回のMedfieldは完全にSoCベースに移行することで、さらに周辺インターフェイス等も包含することが可能になり、コスト的にはARM SoCとの対抗が可能になる。

Atomがモバイルデバイス市場で苦戦していたもう1つの理由として、モバイルOSの対応がARMに比べて遅れていたことが挙げられる。例えばAndroidではARMデバイスをターゲットにOSが開発されており、x86ベースのAtomではどうしても対応が後手にまわりがちだった。今年サンフランシスコで開催されたIDF 2011においてIntel CEOのPaul Otellini氏はGoogleとの提携を発表しており、Androidのポーティングを従来よりも迅速に行う体制を築いていくとしている。また、IntelはNokiaと共同でLinuxをベースにした「MeeGo」というモバイルOSプロジェクトを推進していたが(現在は「Tizen」プロジェクトに移管)、こうした試みもNokiaがMicrosoftとの提携で開発リソースをすべてWindows Phone OSに一本化したことで潰えている。Windows Phoneは現状でARMデバイスのみをターゲットにしており、Intelプロセッサをデバイスへと搭載するメーカー確保が同社にとっての大きな課題となっている。

だがTechnology Reviewが報じている、間もなくIntelが公開されるとみられるMedfieldを搭載したスマートフォンやタブレットのプロトタイプ製品には、Android 2.3.x Gingerbreadだけでなく、Android 4.0.x "Ice Cream Sandwich"の動作が確認できるという。現状でICSが正式サポートされているのはGalaxy NexusとNexus Sの2製品だけであり、その意味ではようやくx86プロセッサでARMと同等のOSサポートが可能なレベルまで追いついてきたといえるかもしれない。またTechnology Reviewによれば、このプロトタイプの動作は非常に高速で、フルHD画質の映像も簡単に端末からTVへのストリーミング再生が可能とのことで、Atomプロセッサが元来標榜していた「低消費電力で高速」というメリットを存分に享受できそうだ。