ダイキン工業は8日、鶏卵の免疫反応を活用した「バイオ抗体」が、新型インフルエンザウイルス「A型H1N1」と鳥インフルエンザウイルス「A型H5N1(Clade1、Clade2)」の計3種類のインフルエンザウイルスを不活化することを実証したと発表した。

同社は今回、ベトナム国立衛生疫学研究所、ゲン・コーポレーション、早稲田大学、三景産業、東洋紡績の5機関との共同研究を実施。新型インフルエンザウイルスおよびClade1、Clade2鳥インフルエンザウイルスを接種したMDCK細胞(実験用細胞株)に対し、バイオ抗体の作用でウイルスの感染力をなくすことができるかどうかを調べる中和試験による比較を行った。

その結果、ELISA法(抗体や抗原の濃度を検出・定量する試験方法)による検出では、バイオ抗体が存在しない場合には、18時間後にそれぞれのインフルエンザウイルスがMDCK細胞に感染したことを確認。一方、バイオ抗体が存在する場合には、ウイルス感染が阻止されたという。このことから、バイオ抗体が各インフルエンザウイルスの感染活性を不活化することが実証されたとしている。

「バイオ抗体」が存在するMDCK細胞。インフルエンザウイルス感染は阻害された

「バイオ抗体」が存在しないMDCK細胞。インフルエンザウイルスにより、MDCK細胞が破壊されている

バイオ抗体は生物の免疫反応を活用したもので、安全性が高く、特定のウイルスに効果があるといった特異性と瞬時に不活化できる即効性を兼ね備えたバイオ素材。同社は2003年、鶏卵を使用した量産化技術と、抗体の反応に欠かせない水分を保持した状態でウイルスを吸着させる特殊調湿性素材、およびフィルター上で抗体の活性を保つ坦持技術を組み合わせた「バイオ抗体フィルター」技術を開発。その技術を搭載した空気清浄機・エアコンのフィルターを販売している。今回実験で使用したバイオ抗体は、従来と比べてより広範囲のインフルエンザウイルスに対する抗体反応ができるように抗原を改良したものとのこと。

なお、今回の研究成果は、2010年3月27日~30日に東京大学で開催される日本農芸化学会で発表予定。