■「アタッチWiFi」のポテンシャルを探る<前編><後編>

前編……モバイルルーターよりもリーズナブルにWiFi接続ができる!?
後編……体感的に速く感じる通信速度

「Sony Tablet S」を「アタッチWiFi」でインターネットに接続

auのパケット定額料金に月額1,575円をプラスするだけで、手持ちのauケータイでテザリングを利用できるところが画期的な「アタッチWiFi」サービス。前編ではノートパソコンでの接続を試したが、この後編では9.4型ワイドのAndroidタブレット「Sony Tablet S」や、昨年末に発売された携帯ゲーム機「PS Vita」など、PC以外のWiFiモバイル機器を接続し、その実用性をさらに深く掘り下げてみたい。

まずは、前回と同じ要領でauケータイの「Cyber-shotケータイ S006」に専用アクセサリーの「NEX-fi/S」を装着し、電源スイッチをオン。だいたい30秒ほどで最大9.2Mbpsの3G回線をWiFi経由で利用できる状態になるが、この手軽さ、手早さががなかなかよい。後は「Sony Tablet S」からWiFi接続の設定を行うだけだ。

「Sony Tablet S」の「設定」-「無線とネットワーク」に「AttachWiFixxxxx」というアクセスポイント名が見えているので、これをタップする

「パスワード」のところに、「NEX-fi/S」の裏面に書かれてあるセキュリティキーを入力して「接続」をタップ。この接続設定を済ませてしまえば、次回以降は「NEX-fi/S」の電源を入れるだけで自動的に接続される

これで「Sony Tablet S」がauケータイを介してインターネットに接続された状態になった

上り回線の速さが体感速度を下支えしている

試用場所は、前回と同じく東京・世田谷区の二子玉川駅近辺。23区内とはいえ、すぐ隣を多摩川が流れ、その向こう岸は神奈川県という立地なので、都心部に比べるとアンテナもエリア内の端末数も少ないほうだろう。この界隈で各キャリアの回線網を使っている者の感覚からすると、通信速度は特段速くも遅くもなく、ごく平均的という印象を持っている。

「Sony Tablet S」での実効通信速度の計測には、「SPEEDTEST.NET」のAndroidアプリ版を使用した。結果は、下りが約1.90Mbps、上りが1.15Mbpsで、下りが前回の「VAIO Z」で計測したときよりも低かったが、上りは逆に前回を上回っている。ネットワークモジュールなどのハードウェアやOSなどの違いも、計測結果に影響しているのだろう。

では、同じ場所で他社3G回線をテザリングした場合の実効速度はどうか。NTTドコモの「REGZA Phone T-01D」(FOMA対応、下り最大7.2Mbps)のテザリング機能を使って「Sony Tablet S」と接続してみたところ、下りは約2.56Mbpsでなかなか良好だったが、上りが0.41Mbpsとかなり遅い。また、PINGの応答時間もau回線の「アタッチWiFi」より遅れ気味だった。

左がauの3G回線を用いる「アタッチWiFi」、右がNTTドコモのFOMA対応スマートフォンでテザリングを使った場合の計測結果。「Sony Tablet S」からWiFiで接続した場合、下りはNTTドコモの方が高速だったが、上りは「アタッチWiFi」のほうが2倍以上も速い

  

実際に「Sony Tablet S」でブラウザやマップのアプリを使ってみると、体感上は「アタッチWiFi」のほうが明らかにレスポンスが速かった。モバイル回線の通信速度では、とかく下り回線の数値にばかりに目がいくが、たとえばWebの閲覧時でもサーバーへパケット要求などのデータが流れている。そのため、下りと上りの実効通信速度に大きな開きがない「アタッチWiFi」のほうが総合的な快適さで優るのも納得できる。

「マップ」のように比較的容量の大きなデータを扱うアプリも快適に使えることが「アタッチWiFi」の利点。「YouTube」もストレスなく視聴できた

気になるバッテリの持ち時間は?

「アタッチWiFi」に用いる「NEX-fi/S」の連続通信時間は、公称で約2時間と、昨今のモバイルルーターと比べれば見劣りは否めない。そもそも「NEX-fi/S」自体がキーホルダーのようなコンパクトさで、重量もわずか27.5gと非常に軽く、ストラップでauケータイとひも付けしたまま持ち歩けるようなサイズだ。この中にバッテリ(容量は520mA)を内蔵しているので、さすがに4時間や5時間といった駆動は無理だろう。

むしろ肝心なのは、実際のバッテリ駆動時間がどの程度かという点だろう。そこで、まずはauケータイの「S006」と「NEX-fi/S」をフル充電しておき、「Sony Tablet S」にはオンラインラジオアプリの「XiiaLive - Online Radio」をインストールして、「アタッチWiFi」経由で音楽(128kbpsのストリーミング)を聴き続けるという実験を行ってみた。結果、「NEX-fi/S」のバッテリが切れて音楽が止まったのは2時間5分後で、公称値をわずかながら上回った。駆動時間が短いとはいえ、きっちり2時間動くとわかっていれば持ち出す際の安心感につながる。テスト中の通信も安定していて、バッファリングが追いつかずに音楽が途切れることは一度もなかった。

「XiiaLive - Online Radio」を用いた連続通信テストでは、2時間5分で「NEX-fi/S」の通信が途絶し、auケータイ「S006」のバッテリ残量は目盛りひとつ分減った状態になった

さらに通信時間を延伸させたいのであれば、“モバイルチャージャー”と呼ばれる充電器を併せて持ち歩き、「NEX-fi/S」に接続するという手もある。「NEX-fi/S」にはマイクロUSB(Micro B)端子があるので、ここにモバイルチャージャーを接続すれば通信しながらの追充電もできる。気をつけておきたいのは、この方法で「NEX-fi/S」の充電はできても、auケータイには充電できないことだ。出力が2口あるモバイルチャージャーもあるが、auケータイの外部接続端子が「NEX-fi/S」で埋まっているので、通信しながら両機器の充電はできないことになる。

モバイルチャージャーを「NEX-fi/S」に接続すれば、通信しながら「NEX-fi/S」の追充電は可能だが、この方法でもauケータイの充電まではできない