スマートフォンに適したBluetoothスピーカーの3回目は、ソニーのウォークマンドックスピーカー「RDP-NWV25B」だ。この記事で比較基準として使用することになったCreative D80は筆者の私物だが、このRDP-NWV25Bはメーカーからの貸し出し品だ。なるべく丁寧に扱おうと思う。製品にはブラックとホワイトの2色があるが、送られてきたのはブラックのタイプだった。表面はピアノブラックではなく、つや消しのブラックだ。(写真撮影の都合上)大変ありがたい。価格はオープンで、ソニーストアでの販売価格は、17,800円。D80の3~4倍といったところだ。

ソニーのBluetoothスピーカー「RDP-NWV25B」。D80と比べてもコンパクトなスピーカーだが、なかなかパワフルなサウンドを聴かせてくれる

D80を持っていない人にはサイズが分かりにくいと思うので、カップ麺の容器と比べてみた。日清食品の「日清御膳天ぷらそば」(写真内左)とほぼ同じサイズで、「ごんぶと」(写真内右)よりは少し小さい

さて、RDP-NWV25Bは球形のキャビネットを採用したBluetoothスピーカーだ。サイズは幅・奥行き・高さいずれも145mmで、重量は500g。D80よりも高さはあるが、横幅ははるかにコンパクトだ。ウォークマンドックスピーカーという分類ではあるが、ウォークマンのための専用ポート「WM-PORT」は搭載していない。同じような形状をしたスピーカー「RDP-NWV20」がWM-PORT搭載モデルで、Bluetoothに対応していないウォークマンを接続するのならばこちらを選ぶことになる。Bluetoothのバージョンは2.1+EDRで、プロファイルはA2DPとAVRCP、SCMS-Tにも対応している。D80ではAVRCPには対応していなかったが、RDP-NWV25Bでは、スマートフォンなどのBluetooth端末側から、(機種によっては)RDP-NWV25B自体のボリュームをコントロールできる。また、ペアリングを行った状態で、RDP-NWV25Bをスタンバイ状態にするBluetoothスタンバイ機能も搭載している。

下の写真は、RDP-NWV25Bを斜め上から見たものと斜め下から見たものだ。ほぼ球形のキャビネットには、56mm径ウーファーと20mm径ツイーターが1本ずつ使用されている。1本ということは、つまりステレオ音声をモノラルにミックスダウンして再生していることになる。ウーファーはキャビネットの下側に、上向きで配置されており、ツイーターはキャビネットの上側に下向きで配置されていた。2本のユニットの間には、そろばんの珠を薄くして巨大化したような形状の「ディフューザーパネル」が配置されており、これによって、スピーカーユニットからの音を360度に拡げる「サークルサウンドステージ」を実現している。ディフューザーによって、もともとは上方向(あるいは下方向)に向かって発せられるスピーカーからの音を、水平方向に反射させるというのは、筒型のキャビネットを使用したスピーカーなどでは比較的よく使われる手法だ。搭載しているアンプはデジタル方式で、出力は13Wだ。

56m径のウーファーが上向きに取り付けられており、その上にあるブルーの部分がディフューザーパネル

下向きに取り付けられた20mm径ツイーター

操作パネルはスピーカーの天面部分にあり、手前側に「電源のオン/オフ」「ボリュームのアップ/ダウン」、奥側に「AUDIO IN」「BLUETOOTH PAIRING」「BOOST」のボタンが配置されている。AUDIO INは、アナログ入力とBluetoothを切り替えるためのボタンで、BLUETOOTH PAIRINGは、名前通りBluetooth機器のペアリングを行うためのものだ。BOOSTボタンについては後述する。

装備している端子類は、アナログ音声入力用の3.5mmステレオミニジャック、ACアダプタージャック、USBポートだ。RDP-NWV25Bでは、D80とは異なり、アナログ音声入力端子からの信号にもボリュームコントロールが効く。ただし、ボリュームレベルは、Bluetoothとアナログ入力で共用だ。個別にレベルをメモリーしているわけではない。Bluetoothhからアナログに切り替えた際、またはその逆の場合、接続している機器によっては音量調整が必要になる。

USBポートはAタイプだ。これは、ウォークマンやスマートフォンに充電するための専用ポートで、デジタル音声信号の入出力には利用できない。製品には、ウォークマンに充電を行うためのUSB→WM-PORTケーブルも付属する。ウォークマンやスマートフォンへの充電は、RDP-NWV25Bの電源のオン/オフに関係なく行うことができる。インジケーターは左側に2つ、右側に1つ装備している。右側のインジケーターは、Bluetoothのペアリング状態とアナログ入力への切り替えを表すもので、左側のインジケーターは電源に連動するものと、BOOSTボタンに連動するものだ。

RDP-NWV25Bの操作パネル部分。手前は電源とボリュームで、奥に配置されているのが、入力切り替えとBluetoothのペアリングボタン、BOOSTボタン。キャビネットが球形なため、奥側のボタンは若干操作しにくい

右側から、バスレフポート、ACアダプタージャック、外部入力端子の順に並ぶ。左側面にあるフラップはUSBポートで、スマートフォンやウォークマンなどに充電を行うことも可能だ

キャビネットのウーファー部分はバスレフ形式になっている。バスレフポートは形状の関係から(上の写真参照)、設置する位置や方向による低域の出方の違いはあまり感じられない。BOOSTボタンは、低域の量をアップさせるための「BASS BOOST」機能のオン/オフのためのものだ。この機能は電源投入時にはオンになっている。基本はオンで使用し、低域が強すぎると感じたらオフにするといった意味合いのようで、昔のPCに付いていた「TURBO」ボタンのようなものだと考えればよいだろう。

さて、実際に聴いてみると、まずはD80に比べてパワー感のある低域が印象的だった。これはBOOSTボタンがオフの状態でも同様だ。BOOSTボタンをオンにすると低域が増強されるが、それは不自然なほど強力なものではない。元々、低域がそれなりに出るシステムであり、その性格がわずかに強調されるという程度で、違和感は感じられない。しかし、聴き続けてみると、低域のパワーよりも輪郭のはっきりしたクリアなサウンドのほうが、このスピーカーの全体的な性格を形作っている点に気付かされる。これは、搭載しているアンプの違いにも原因しているのだろう。

今回も、RDP-NWV25Bの特性を測定してみた。測定方法は前回と同様だ。Bluetooth経由でsin波を再生し、1kHzで約-6dBになるようにしてから、他の周波数の時のレベルを測定している。掲載しているグラフは、デフォルト状態であるBOOSTボタンがオンの状態でのもので、参考としてBOOSTをオフにしたグラフも掲示しておいた。

20Hz

50Hz

100Hz

BOOSTオフ時の100Hz(参考1)

まずは、20Hzと50Hzだ。ここは前回と同様、高調波しか聴こえない。100Hzでは、ピーク周波数が200Hz前後と表示されているが、明らかに20Hz/50Hzの時よりも低い音が聴こえている。高調波が混ざっているので正確な数値ではないが、-10dB前後だ。ちなみにD80は-24dB前後で、実際に聞いてみてもかなりの違いがある。「参考1」の画面が、BOOSTボタンをオフにしたときの100Hzのグラフだ。-13.5dBとなっており、この2つも聴いてみると違いが判別できる。

440Hz

1kHz

2kHz

4kHz

440Hzでは-3dBで、1kHzは設定したとおり約-6db。2kHzは、前回同様波形が乱れているが-2dB、4kHzは-6.7dBとなっている。この辺りの音量を見ると、中域から中高域は比較的フラットだという感じだ。

10kHz

16kHz

BOOSTオフ時の16kHz(参考2)

20kHz

10kHzでは-30dB。D80では-50dB前後だったので、高域に関してもRDP-NWV25Bのほうがよく出ていることになる。前回も書いたが、この測定を行っている機器は、あまり精度が高いものではない。低いほうは当てにならないし、高域は10kHzを超えると極端にレベルが落ちるようだ。さて、16kHzではまったく波形が表示されず、何も聴き取れない。画面「参考2」は、BOOSTボタンをオフにしたときの波形だ。ここでは16kHzあたりに小さな山が表示されているが、-50dB以下で、実際のところ聴き取ることはできない。「参考3」は、前回参考用に掲載した「JBL 4305H」の16kHzの時の波形だ。ここでは-45dB程度で、何とか聴き取ることができた。20kHzは前回と同様だ。20kHzあたりには何も表示されていない。20kHzは、どうもこの測定機器では無意味なようなので、次回からは外しておこう。

ホワイトノイズ

BOOSTオフ時のホワイトノイズ(参考3)

D80のホワイトノイズ(参考4)

4305Hのホワイトノイズ(参考5)

最後に、RDP-NWV25BのBOOSTオンの状態とオフの状態、D80、4305Hでのホワイトノイズの再生結果のグラフを掲載する。RDP-NWV25Bの場合、どちらも10kHzあたりまで波形が表示されている。2つには大きな違いはないが、BOOSTをオンにした場合のほうが、若干中域のレベルが低くなっているように見える。画面「参考4」のD80と比べてみると、中域以外はレベルが高く、高域も2kHzほど上までグラフが表示されている。画面「参考5」の4305Hは、おそらくこの2本に比べると、フラットな周波数特性を持っているはずだ。4305Hが比較的フラットだと仮定すると、RDP-NWV25Bは、ドンシャリ系ということになる。メリハリが強く、ビート系の曲では魅力的なサウンドに聞こえる。

2本のアクティブスピーカーを聴き比べてみると、D80がBGMを流すという感じのバランスだったのに対して、RDP-NWV25Bは、ボリュームを上げ気味にしてより積極的に音楽を聴くためのスピーカーという印象だ。RDP-NWV25Bの特徴となっているサークルサウンドステージだが、今回比較対象にしているD80が、非常に広い指向性を持っているため、その差がさほど顕著には現われなかった。そしてもう1本、参考用に使用したJBLの4305Hも、水平方向の指向性はとにかく広い。もちろん、D80や4305Hを後ろ向きにセッティングするといった極端な配置を行えば、差は出るのだが、一般家庭での使用シーンでそういった配置を行うことはあまりないだろう。ワイヤードなパッシブスピーカーである4305Hを除いた2台のセッティングの自由度の高さは、ほぼキャビネットのサイズに依存すると言ってよい。幅・奥行き・高さが145mmというコンパクトさは、RDP-NWV25Bの有利な点だ。