連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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人生の終わりに「老後破産」が待っていた--なんてことにならないために、若いうちからできることが"貯蓄"。そのポイントが"コツコツ"であるということを、前回ご紹介しました。収入が少ないときも支出が多いときも、コンスタントにお金を貯めるのに大切なのは"先取り貯蓄"である、ということはわかっていただけたと思います。

人生には「貯めどき」「ガマンどき」がある

もう1つ覚えておきたいのは、人生には「貯めどき」と「ガマンどき」があるということ。長い人生ですから、お金のゆとり度がそのときどきで違ってくることもあります。比較的お金にゆとりのあるのが「貯めどき」、お金の面で厳しいのが「ガマンどき」。貯めどきに多めに貯蓄しておけば、ガマンどきに備えることができます。

独身のときや結婚して子供ができるまでの間は、「第1の貯めどき」といえます。特に、独身で自宅住まいの人や、子供のいない共働きの人は、かなりのペースで貯蓄が殖やせるはずです。

子供が生まれて、妻の収入が減ったりなくなったりすると、家計のゆとり度は一気に下がりますが、子供には、まだそれほどお金はかかりません。

子供が幼稚園に入ると、最初のガマンどきに突入します。というのは、日本では幼稚園児の8割が私立幼稚園に通っていて、その月謝が3万円以上するから。高いと思っても削ることはできず、節約の余地もありません。まして、幼稚園に通う子供が2人いたりすると、かなり大変になります。

でも、それは仕方のないこと。なので、「子供が幼稚園に入ると家計が厳しくなる」ということをあらかじめ知っておきましょう。そうすれば、ある程度覚悟ができて、悲観的にならなくてすみます。

この時期は貯蓄ができなくなることもあるかもしれませんが、大切なのは、家計を赤字にしないこと。ほかで節約したり、収入を増やす工夫をするなどしてこの時期をしのげば、子供が小学校に入学して「第2の貯めどき」がやってきます。

公立の小学校はあまりお金がかからないので、貯蓄のペースをアップさせましょう。中学、高校は公立か私立かで費用に差があり、家庭によっては貯めどきだったりガマン時だったりします。大学は、教育費の中では最もお金がかかるので、多くの場合はガマンどき。そして、子供が社会人になれば、教育費や生活費の負担がなくなり家計はラクになります。そこから退職するまでが、「最後の貯めどき」となります。

人生には「貯めどき」「ガマンどき」がある

老後破産回避のコツは「貯めどきを逃さない」こと

老後破産しないためには、このような人生の貯めどきとガマン時を知って、貯めどきを逃さないことが重要です。このシリーズの1回目で、「貯蓄なしのおめでた婚が老後破産に通じる」と書きましたが、その理由はもうおわかりですよね。人生の最初の貯めどきを逃したことになり、あとが厳しくなるからです。

ここでもう1つ考えてほしいのは、こうしたライフプランが昔より後ろにずれてきていることです。晩婚化や子供をもつ年齢が上がっていることによって、最後の貯めどきが短くなったり、あるいはなくなったりしてきているのです。 例えば、38歳で子供が生まれたとすると、その子が大学を卒業して社会人になるのは、親が60歳のとき。60歳で退職するとしたら、最後の貯めどきはないということになるわけです。ただ、そのぶん第1の貯めどきが長いわけですから、そのときにしっかりためておきたいところ。

ライフプランと相談しよう

いつ結婚するか、いつ子供が生まれるかは、予測ができません。ですから、第1の貯めどきにいる人は、貯めどきであることを自覚して、しっかりためておきましょう。ここでダラダラとお金を使ってしまうと、あとが厳しくなり、やがて老後破産ということにもなりかねません。

「結婚するつもりもないし、子供もいらない」という人もいるかもしれませんね。そう思っていても、どうなるのかわからないのが人生。だから、やはり貯蓄は必要です。

ずっとシングルの場合、高齢になったときの1人暮らしは2人暮らしより生活コストが高くなります。また、結婚していれば、どちらかの収入が減ったり途絶えたりしたときに、もう1人がそれを補うことができますが、シングルはそれができないので、お金の面ではリスクが高いとえます。シングルだからこそ、多くの貯蓄が必要なのです。

シングルの人や子供のいない人は、ずっと貯めどきなわけですから、子供の教育費がかからないぶん、より多くためられるはずですし、より多くためておかなければなりません。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。『図解 初めての人の株入門』(西東社)、『キチンとわかる外国為替と外貨取引』(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。