連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
近々中古の一戸建てを購入しようと思っているのですが、住宅ローンについてわからないことばかりなので、ベストな選択方法について教えてください。

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 物件価格に合わせて、ローンを組んでしまうと、先々長い期間に渡って、返済額が家計を圧迫することになりかねません。まず、いくら借りられるかではなく、いくらなら返せるかを試算してみましょう。

  • 住宅ローンの金利を「固定」または「変動」にすべきか迷われる方は少なくないです。金利の方向性を見る必要がありますが、10年から30年先の将来の金利水準を正確に予測することはむずかしいのが現実です。返済期間を10年前後と短くし、早期に返済していけるだけの資金力がある場合には、変動金利を選択する手もひとつです。ただ、これから教育費がかかってくる本山様の場合は、今後、ひと月の返済額が増えていくことになると、教育資金や老後資金の準備に支障をきたします。したがって、長期的な見通しが立てやすいフラット35などの利用が有効な手立てのひとつとなります。

(※詳細は以下をご覧ください)


先行き不安の多い世の中、マイホームの購入にあたっては、どのようにローンを組めばいいか、リスクの少ない方法を慎重に考える方が増えています。本山様のように、自営業でローンを組む場合の留意点を踏まえ、将来のお子さま達の教育費などライフプランにかかる資金も考慮し、より適切な方法を選んでいきましょう。

いくら借りるかではなく、いくら返せるかを把握

将来のお子様の教育費や生活資金などの家計負担を回避するローンを組むこと、すなわち、負担なく返せる金額を知ることが大切です。物件価格に合わせて、ローンを組んでしまうと、先々長い期間に渡って、返済額が家計を圧迫することになりかねないからです。

まず、いくら借りられるかではなく、いくらなら返せるかを試算してみましょう。

  1. 収入から月当たり借入可能額を計算します。現在の収入金額の20%を返済負担率(※)とすると、月額8.4万円の返済ということになります(※年収に対する年間返済額の割合。一般的には税込み年収をベースに計算されます)。

  2. 支出から返済額の目安を考えます。現在の家の家賃が11万円、それに毎月定期預金へ貯蓄している10万円を足すと21万円となります。

できるだけ将来の家計負担を減らすため、1と2で、いずれか少ない方を月の返済額の目安とします。そこで1の8.4万円を月の返済額とし、住宅ローン借入可能額を計算します。金利2.2%、期間35年(全期間固定金利、元利均等返済)とすると2,459万円。それに自己資金を仮に1,100万円とし、そこから万一の準備金として月額生活費の半年分程度の240万円を差し引くと、860万円が頭金として充当できます。

住宅ローン借入額と自己資金から物件価格を試算すると、3,102万円の物件であれば無理のない範囲で返せるということになります。返済負担率を25%まで上げた場合は、月額返済金額が11万円となり物件価格は3,813万円に。このように無理なく返済していける金額から、物件の検討をされることが望ましいと考えます。仮に、月の返済額を14万円で試算すると、物件価格は4,634万円となり、本山様の検討されている物件が見えてきます。

返済期間については、65歳までには完済したいというご希望ですね。ただ、一度組んだ住宅ローンの期間を短縮することはできますが、延長することはむずかしいため、長めに借りておいて、繰上げ返済を適宜していく方法が有効かと思われます。また、住宅購入資金については、ご両親の支援が期待できれば、「住宅取得等資金の非課税制度」を利用することも検討してみてはいかがでしょう。一定の要件を満たせば非課税限度額までの金額について贈与税がかからず、資金援助してもらうことができます。中古物件の場合には築年数の要件がありますが、平成25年中は、一般住宅で700万円まで非課税となります。

さらに、今回の住宅購入をきっかけに、一度家計をご夫婦で把握することも大事です。支出の内訳を見ますと、日々の生活費は上手にやりくりされていますが、住宅購入時には、住宅を保有している場合と賃貸の場合とで、必要保障額も変わってくるため、保険の見直しも必要になってくることでしょう。見直しにより、保険料が減り、その分貯蓄や返済に回せる可能性があります。

将来の予測は困難 家計負担を回避するプラン

住宅ローンの金利を「固定」または「変動」にすべきか迷われる方は少なくないです。金利の方向性を見る必要がありますが、10年から30年先の将来の金利水準を正確に予測することはむずかしいのが現実です。返済期間を10年前後と短くし、早期に返済していけるだけの資金力がある場合には、変動金利を選択する手もひとつです。金利上昇の影響を最小限に抑えつつ、低金利の恩恵を享受できます。ただ、これから教育費がかかってくる本山様の場合は、今後、ひと月の返済額が増えていくことになると、教育資金や老後資金の準備に支障をきたします。したがって、長期的な見通しが立てやすいフラット35などの利用が有効な手立てのひとつとなります。

昨今のフラット35は、過去最低金利を更新し、全期間固定で2%を切っている状況です。固定金利は、今後の金利変動による返済額の増額を気にする必要がなく、長期のプランが立てやすくなります。20年以上など返済期間が長いほど、「毎月返済額が変わらない安心感」は大きいと言えるでしょう。   

自営業の方の住宅ローンの注意点

なお、本山様が心配されている通り、個人事業やフリーで仕事をしている方は、サラリーマンなどに比べると、住宅ローンの審査は一般的に厳しくなります。これは住宅ローンの審査では、特に勤続年数や収入の安定度を重視するからです。個人事業主の方の借入について主に留意したいこと3つを次に挙げます。

  1. 頭金を多めに用意する

  2. 所得金額を上げる

  3. 負債を抑えておく

個人事業主の方が住宅ローンを借りる場合、事業関係の借金も返済負担率を算出する際に考慮されます。そのため、事業関係の借金がどれくらいあるか、並びに収入が安定しているかどうかが審査の最初のハードルになります。3年間の平均所得で、住宅ローンの返済が可能か判断されるため、3期連続で黒字であることをひとつの目安とするとよいでしょう。売上が伸び、申告額が継続して増えているところを見られます。また、きちんと納税していることを証明し、年金も必ず納めていることにより信用が上がります。負債を減らし、所得金額を上げ、頭金を少しでも多く備えたいところです。

このように住宅ローンを組むための条件を整え、資金計画を立てることから、家計に負担の少ない住宅取得プランを選択されることをお勧めします。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 村松祐子

大学卒業後、大手証券会社に勤務。外国株式部、投資コンサルティング部、調査部を経て、資産運用コンサルタントからFPへ転身。子どもから大人へ投資と学習の普及を中心に、ライフ&マネープランの相談・執筆・セミナーなどで活動中。