前回に引き続き今回も、新生活に多分ぴったりなクリーナーとして、シャープのスティック型クリーナー「EC-ST20」を取り上げていく。

まずは製品の概要をチェック

さて、EC-ST20とは一体どういったクリーナーなのか。まずは、製品の概要を確認する。

吸込み仕事率は約330~80W、運転音は約68~58dBだ。消費電力は約790~260Wとなっている。吸込み仕事率と運転音、消費電力に幅があるのは、EC-ST20が「やさしさ」モードを装備しているためだ。同モードは、動作音を抑えて掃除を行うもの。音をあまり気にせず掃除を行うことができるというのは、こういった手軽なクリーナーでは大きなポイントだ。このクラスのクリーナーで、このようなモードを搭載している機種は意外と少ない。

「EC-ST20」のコントローラー部分。「標準/やさしさ」ボタンを1度押すと、通常モードで動作し、もう1度押すと、やさしさモードで動作する

床ノズルは、吸気により回転する「タービンへッド」となっている。フローリングがメインの部屋ならば、吸引力に不満はまず抱かないだろう。ここから床の上のホコリを吸い込み、吸い込んだホコリはダストカップに溜まる。キャニスタータイプのクリーナーでは、ダストカップでゴミが圧縮される製品が多いが、EC-ST20はそのようなことはしない。ただ、ダストカップに溜まるだけだ。ダストカップの容量も0.3Lと少ないので、掃除のたびにゴミ捨てが必要だ。

床ノズルは、吸気で回転する「タービンへッド」

このダストカップ部分にゴミが溜まる

下の写真の右側のパイプを抜くと、ホースノズルが現われる。ホースノズルは、2段階の伸縮式だ。一番短い状態で約26cm、1段伸ばした状態で約41cm、2段伸ばした状態で約58cmだ。ホースノズルの先端はブラシになっており、ブラシの角度は可変式だ。角度が固定されたブラシに比べると、当たっている面に角度が合わせられることで、より遠くまで届くことになる。なお、遠くまで届くといっても、ホースノズルを最大限まで伸ばした際の長さは、床から190cm程度だ。同社のWebサイトには、ホースノズルでエアコンのパネルを掃除している写真が掲載されているが、エアコンの室内機は、通常、そんなに低い位置には設置されていない。

左側のパイプを引き抜くと「ホースノズル」を使用できる

「ホースノズル」を取り出したところ

「ホースノズル」は2段階の伸縮式だ

先端のブラシは角度が変わり、使いやすい

ホースノズルを取り外すと、ホース部分の先端に配置されたホースブラシを使用することもできる。キーボードなど、手元にある機器を掃除したい場合には便利だ。ホースブラシは角度が固定されているが、ホース自体がフレキシブルな素材なので問題ないだろう。

「ホースノズル」を取り外すと、「ホースブラシ」を利用できる

「ホースブラシ」は角度は変えられないが、キーボードなどの掃除には便利だ

競合機種と比べた場合のEC-ST20の特性を検討する

EC-ST20と近い構造を持ったクリーナーは、他社からもリリースされている。なかでも性格が近いのは、東芝の「VC-Y70C」と、日立の「PV-SU3」、パナソニックの「MC-SU100A」だろう。ただし、VC-Y70Cでは、手元ブラシと延長管が使用できるが、延長管の先端は隙間ノズルになっていて、ブラシは付いていない。PV-SU3では、延長管の先端に隙間ノズルとブラシのどちらにも使える「クルッと切換えブラシ」が装備されているが、ホース部分のみで掃除を行うことはできない。MC-SU100Aは、延長管の先は隙間ノズルのみで、手元ブラシも利用できない。

つまり、ホースノズルと手元ノズルの両方でブラシが使えるのはEC-ST20のみだ。EC-ST20では隙間ノズルは装備されていないが、ホースノズルの先端は2.5cm程の幅なので、たいていの隙間には入る。そして、隙間ノズルよりも、ブラシのほうが便利な場面は多い。

EC-ST20の吸込み仕事率は最大330Wだ。例えば、ホースブラシを使ってキーボードを掃除すると、よくあるUSBタイプのクリーナーなどに比べて圧倒的にハイパワーなのが実感できる。しかし、床を掃除する際ほどの吸引力は感じられない。

ホース側で掃除を行う際にも、床側からも吸引を行っている

上の写真をご覧いただきたい。

クリーナーの内部に下向きの穴が開いているのが分かるだろうか。これは床ブラシにつながっている経路だ。一方、写真では見えないが、内部の左側には、ホースノズルにつながる経路が設けられている。2つの経路が存在するが、床ブラシを使用する際には、ホースノズルは本体に収納されている。つまり、ここが密閉されているために、フルパワーで吸引できる。

それに対してホースノズルを利用する際には、床ブラシ側の経路には特に弁などは設けられていないので、オープンなままだ。床ブラシ側からも同時に吸引される。これがホースノズルを利用した際に、フルパワーで吸引できない理由だ。

このような仕組みなので、例えばエアコンの室内機パネルを掃除したい場合に、クリーナー本体を持ち上げて掃除するというのは、あまりオススメできない。本体を床から持ち上げた場合には、床ノズルに対する栓の役割となっている床がなくなってしまうために、さらに低い吸引力となってしまうわけだ。エアコンの室内機を掃除する際には、クリーナーごと、椅子などの上にでも乗せて、高さをかさ上げししてやった方がよいだろう。

また、EC-ST20独自の機能として、アイドリングストップ機能というものが搭載されている。本体を斜めにした状態でのみファンモーターが回転し、本体を立てるとファンモーターの回転が停止するというものだ。これにより、無駄な電力消費をさえられるということなのだが、慣れるまでは少々めんどうだ。もちろん、ホースノズルで掃除する際にはこの機能はキャンセルされる。

フィルタークリーニングは面倒ではないが……

このようにして、EC-ST20を使い始めたのだが、3日ほど経つと、フィルタークリーニングランプが点灯し出した。ゴミを捨てるだけではなく、フィルターのクリーニングも行わなければならないわけだ。先ほど、EC-ST20と性格が似たクリーナーということで挙げた3機種の中で、東芝のVC-Y70Cと日立のPV-SU3には、EC-ST20にはない特徴がある。それは、フィルターの前にティッシュペーパーを取り付けられるという点だ。これによりフィルタークリーニングの頻度が下がる。

ダストカップセットを取り出したところ

フィルター部分

EC-ST20には、2つのフィルターが装備されている。筒型のフィルターは、目が粗く、大きめのハウスダストをキャッチするためのものだ。もう1つは円盤状のフィルターで、こちらはスポンジのような素材で作られている。

取扱説明書には、これらは定期的に水洗いする必要があると書かれている。クリーニングのサイクルは、筒型のフィルターやダストカップは1カ月に2回程度、円盤状のフィルターは1カ月に1回程度だ。

3日というのは、フィルタークリーニングランプが点灯するタイミングとしては異様に早いのだが、これには理由がある。もちろん、筆者の部屋が、通常の10倍のハウスダストが存在する環境というわけではない。

以前、このコラムでも書いたのだが、筆者はこの冬、暖房に火鉢を使用している。炭を燃やす火鉢だ。それで、火鉢に使用するのに向いた炭には何種類かあるのだが、筆者がメインで使用しているのは、黒炭と呼ばれるタイプだ。

黒炭を燃焼させると、灰が部屋の中を舞うことになる。これがフィルターの目詰まりの原因だ。備長炭やオガ炭では、そこまで灰は舞わないのだが、黒炭には黒炭ならではのメリットがあるため、こちらをメインで使っている。

話を元に戻そう。この灰は、一般的なハウスダストよりもかなり細かいようだ。EC-ST20の筒型フィルターを通り抜けて、すべて円盤状のフィルターの方に行ってしまっているようである。

さて、フィルターのクリーニングだが、単純に水洗いするだけなので、それほどの手間ではない。問題なのはその後だ。筒型のフィルターやダストカップは、洗ってもすぐに乾く。せいぜい2~3時間程度だ。それに対して、円盤状のフィルターは、スポンジのような素材なので、乾きが遅い。取扱説明書には、陰干しで1日程度乾燥させる必要があると書かれている。筆者もやってみたのだが、やはりその程度はかかるようだ。半日程度では、まだ湿った感じがする。

クイックルワイパーや粘着式のクリーナーは、汚れに気がついたときにさっと取り出して使えるのが大きなメリットだ。スティック型クリーナーにも、それに近い性質がある。フィルターを乾かしているために掃除ができないという事態は、なるべくならば避けたいところだ。

フィルターの乾燥時間の長さは、この手のサイクロン式クリーナーの欠点の一つだ。しかし前回も書いたように、このクラスのクリーナーではサイクロン式以外の選択肢はないので、仕方がないところだろう。

フィルターがもう1つあれば解決

このフィルターは、部品として取り寄せることが可能だ。流通コードは「217 337 0428」で、希望小売価格は1,890円だ。サービスセンターに在庫がある場合には、直接買いに行くこともできるし、同社のWebサイトから購入することもできる。ただ、手軽なのは、近所の家電量販店のサービスカウンターに行って、部品として取り寄せてもらうという方法だ。クリーナーを量販店で購入するのなら、その時に一緒に注文しておいてもよいだろう。

近所の家電量販店のサービスカウンターに注文していたフィルターが届いた

サービスセンターや同社のWebサイトでの購入では、定価での販売になるのだが、筆者が近所の量販店での購入した際には、少々値引きされていた。また、当然だが送料もかからない。メーカーに在庫がある場合、1週間程度で届くので、Webでの通信販売を利用する場合とそれほど差があるわけではない。

左がクリーニングサインが出たフィルター。目詰まりしていることが色でもわかる

上の写真で右にあるのが新しく届いたフィルターで、左がフィルタークリーニングサインが出ているフィルターだ。色が全く違うのがわかるだろうか。これが木炭の灰だ。木炭を使用している人は少ないだろうが、それでもフィルターが2個あれば、1個を乾燥中でもクリーナーを使用できる。こうしておけば、フィルタークリーニングの頻度が高くても大丈夫だ。

まとめ

このクラスのクリーナーには完璧な製品は存在しない。EC-ST20も、他の製品に比べて良い点もあれば、悪い点もある。良い点は、動作音を抑えられるやさしさモードの搭載と、手元と伸ばした先のどちらでもブラシが使えるホースノズルの利便性だ。悪い点は、ダストカップの容量の少なさと、フィルタークリーニングの頻度を抑えるためにフィルターの前にティッシュペーパーを装着する機能が採用されていない点だ。

しかし、こういった欠点を踏まえたうえでも、なお、EC-ST20は、新生活にオススメできるクリーナーだといえる、優れた製品だ。ただし、より快適に使いたいのならば、フィルターの追加購入は必要だ。