私はかれこれ20年近く、家計のやりくりの取材をしてきました。その中には、貯蓄が1,000万円以上ある人も、少なくありませんでした。その人たちが、とりわけ収入が多いというわけではありません。年収300万円台(手取り)というケースもたくさんありました。

また、お金を使わないケチケチ生活をして、ギスギス暮らしているわけでもありません。要するに、お金のやりくりが上手なのです。ということは、そのやりくりの仕方をまねすれば、誰でも1,000万円貯めることが可能というわけです。是非今日からまねしてみてください。

年金は会社員の4割弱、退職金なしの厳しい老後

私は30歳前後から、どこの会社にも所属せずにフリーランスとして働いてきました。なので、厚生年金の加入期間はわずか9年。あとは、ずっと第1号被保険者として「国民年金」に加入し、保険料を払ってきました。

仕事柄、私のまわりには、私と同じようにフリーランスとして仕事をしている人が、けっこういます。「フリーランス」とカタカナで書くと聞こえはいいですが、実態はしがない自営業。そんな自営業仲間と最近、話題になるのが老後のお金のこと。

「国民年金だけだと、やっぱり年金が少ないよね」
「退職金がないから、まとまったお金が入ってくることもないし……」
「このままだと老後の生活はどうなるの?」

など、寂しい話題が多くなっています。

そこで、前回の自営業の老後のお金って、けっこうヤバイかも!(現状把握編)」に続いて、今回は「対策編」を私なりに考えてみました。

自営業のための老後のお金対策(画像はイメージ)

頼りになるのはやっぱり貯金

老後のお金不安を解消するには、何はなくともお金を貯めることです。毎月、先取りで決まった金額を積立預金します。「余ったら貯金しよう」ではなく、先に貯金を確保することが肝です。

フリーランスの場合、サラリーマンの給料日のように、毎月決まった日にお金が入ってくるわけではありませんが、自分で「貯金の日」を決めて、その日に貯金します。期日を指定して口座自動振替で、自動的&強制的に貯金するのがオススメです。

「今どきの低金利時代は銀行にお金を預けても、ぜんぜん増えない」という人がいますが、金利がどうのではありません。そもそも、高金利の恩恵を受けられるのは、ある程度まとまった貯金がある場合です。金利うんぬんを言う前に、お金を貯めることが先決です。

「この先、インフレになると物価が上がるから、貯金しても目減りする」という人もいますが、インフレになれば預金金利も上がります。預金金利が上がったら、それまでに貯めたお金を高い金利の預金に預け替えればいいのです。貯金できない理由を四の五の言うよりも、一刻も早く貯金を始めることがオススメです。

定年がないからこそ長く働く

「自営業には定年がありません」と言うと聞こえはいいですが、裏を返せば「仕事がいつなくなるかわかならい」ということでもあります。仕事のオファーがなくなれば、あっという間に定年=失業です。

そうならないためには、長く仕事を続けられるように、仕事関係のつながりを円滑にすることが大事。また、今している仕事に甘んじることなく、常に自分の仕事の分野を広げていく意欲的な姿勢も大事です。かくいう私も、ぜんぜん偉そうなことは言えませんが、そうできるように心がけています。

「定年がない」ことをメリットにするには、仕事があり続けるように努力することが肝心なのだと思います。

暮らしをコンパクトにする

自営業の収入には波があります。「自営業の収入=自分がした仕事の分」が基本です。忙しかった月の翌月や翌々月(ギャランティが振り込まれる月)は収入が多く、仕事がなくてヒマな時期があると、そのシワ寄せで収入の少ない月が必ずあります。

月々の収入が安定していないので、家計を管理するのは難しいのですが、収入が少なめ月を基本に考えます。「今月は収入が少ないから、貯金をおろして補てん」ではなく、少なめの収入に合わせて予算を立て、「今月は収入が多くて余った」ときは貯金にまわします。

月ごとの収入の波のほか、年齢による波もあります。自営業の30代、40代は働き盛りなので、収入も高め。この時期は稼ぎどきと言ってもいいかもしれません。

ただし、それがいつまでも続くというわけではないことも。稼ぎどきの高収入のときに、暮らしを大きくし過ぎると、高収入が維持できればいいのですが、収入が減ったときにはやりくりが苦しくなります。

ケチケチ暮らす必要はありませんが、身の丈に合った暮らしを心がけることが大切だと思います。暮らしをコンパクトにしておくと、収入が減ってムリなく対応できます。

国民年金は満額受け取る心構えで

国民年金(老齢基礎年金)は、20~60歳までの40年間分の保険料を払った場合に満額を受給できます(平成29年度は77万9,300円)。未納期間があると、その分、受給できる年金が減ります。厚生年金のない、あっても少額の自営業ですから、せめて国民年金は満額を受け取りたいものです。

まずは日本年金機構が提供する「ねんきんネット」で、自分の未納分をチェック。今からでも、未納分の保険料を払って満額に近づけましょう。

保険料は毎月収めるのが基本となっていて、通常は2年経過すると時効となり、もう収めることはできません。しかし、平成30年9月30日までは、5年前まで遡って保険料を納付できる「5年の後納制度」の利用が可能です。また6年以上前の未納分がある場合は、60歳から65歳まで国民年金の任意加入ができます。 自営業の老後の収入において、国民年金は柱になるはず。今からでも未納分を穴埋めしい、満額に近づける努力を。

あの手この手で年金額を増やす

自営業の年金を増やす方法には、確定拠出型年金(通称iDeCo)や国民年金基金があります。

確定拠出年金は、自分で掛け金の額と金融商品を決めて運用して、“自分年金”をつくるもの。国民年金基金は、国民年金に上乗せするもので、掛け金の上限は、自営業の場合、確定拠出年金と合わせて月額6万8,000円。どちらも掛け金が全額所得控除になるメリットがあります。

もうひとつオススメなのが「付加年金」。月々400円の保険料を払うと、200円×保険料を払った月数分、年金がプラスされます。例えば、現在35歳で60歳までの25年間=300カ月、付加年金に加入した場合、「200円×300カ月=6万円(年額)」の年金が増えるというわけです。「たった6万円」と侮ってはいけません。国民年金は満額受給して77万9,300円ですから、これに6万円をプラスして、83万9,300円にするには大きな意味がります。

さて、自営業の老後は会社員より厳しそう……というのが現実のようです。貯金するにしろ、年金額を増やすにしろ、早めに手を打つことが肝心です。


村越克子
フリーランスライター。学習院大学文学部心理学科卒業。編集会社を経て、フリーに。主婦を読者対象とした生活情報誌を中心に執筆。家計のやりくりに奮闘する全国の主婦を取材し、節約に関する記事を数多く手がける。執筆協力に『綱渡り生活から抜けられない人のための絶対! 貯める方法』永岡書店など。