私はかれこれ20年近く、家計のやりくりの取材をしてきました。その中には、貯蓄が1,000万円以上ある人も、少なくありませんでした。その人たちが、とりわけ収入が多いというわけではありません。年収300万円台(手取り)というケースもたくさんありました。

また、お金を使わないケチケチ生活をして、ギスギス暮らしているわけでもありません。要するに、お金のやりくりが上手なのです。ということは、そのやりくりの仕方をまねすれば、誰でも1,000万円貯めることが可能というわけです。是非今日からまねしてみてください。

厚生年金に何年間、入ってました?

私は編集プロダクションや出版社などには所属せずに、フリーランスで仕事をしています。大学卒業後、10年ほど会社員の経験がありますが、その後、退職して、どこの会社とも雇用契約を結ばずに、フリーランスというかたちで仕事をしてきました。ですから、"自営業"に分類されると思っています。

今回のテーマは「自営業の老後のお金」。自分は会社を経営しているわけではないし、事業をおこしているわけでもないから、"自営業"ではないと思っている人がいるかもしれません。

でも今回、取り上げる自営業とは、厚生年金に加入していない人のことです。これまでに短期のパートやアルバイトを繰り返してきた人や、"業務委託"といったかたちで仕事をしてきて、厚生年金の加入期間が短い人の老後のお金について考えてみたいと思います。

自営業の老後のお金って、けっこうヤバイかも!?(画像はイメージ)

自営業・フリーランスの年金は月額5万4,497円

自営業(ここでは厚生年金の加入期間が短く、現在は第1号被保険者として国民年金にのみ加入している人のこと)が、将来受け取ることができる年金額は、厚生年金の加入期間が長い会社員の人よりも少なくなります。

自営業の人は国民年金にのみ加入しますが、会社員は厚生年金に加入することで自動的に国民年金にも加入することになるので、国民年金+厚生年金に加入していることになります(しかも、保険料は会社と折半)。

仮に、国民年金のみの場合、40年間=480カ月加入して年金を満額で受給するとしても、77万9,300円(平成29年4月分から)です。月額にすると、6万4,941円(ここから税金と健康保険料が引かれるので、実際には更に少なくなります)

満額で6万4,941円/月ですから、未納の月数があれば、その分、受給額は少なくなります。厚生労働省が発表している最新の国民年金と厚生年金の平均受給月額は、次のようになっています。

■国民年金と厚生年金の平均受給月額
国民年金受給者:5万4,497円(5万40円)
厚生年金受給者:14万4,886円

※出典:厚生労働省「平成26年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
()は厚生年金を受け取っていない第1号被保険者

つまり、自営業の年金は会社員の4割弱ということになります。

共働きでも、夫婦とも自営業の場合、世帯の平均受給月額は5万4,497円×2人=10万8,994円。一方、妻が結婚後、退職して専業主婦になり、現在は働いていなくても、夫が会社員なら、世帯の平均受給月額は、14万4,886円+5万4,497円=19万9,383円と、2倍近くになります。

厚生年金は遺された妻に手厚いが、国民年金は……

日本人の平均寿命は、男性80.79歳、女性87.05歳となっています(厚生労働省「平成27年簡易生命表」より)。データ的には、夫婦の場合、夫が他界したあと、妻が約6年間一人で生活することになります。

夫が厚生年金、妻が国民年金受給している夫婦で、夫が他界した場合、妻は夫の厚生年金額の4分の3を遺族年金として受け取ることができます。

でも、夫が国民年金受給者の場合は、夫が他界した場合、18歳未満の子供がいなければ、妻は遺族年金はもらえません。夫が国民年金受給者ということは65歳以上ということになりますから、一般的には18歳未満の子供がいるケースはまれといえます。つまり、夫が国民年金受給者だと、夫に先立たれた妻は、この先、自分の国民年金のみで生活していかなければならいというわけです。

自営業には退職金がない

経団連の調査によると、新卒で入社して、その後、標準的に昇進や昇格をした人の場合、「管理・事務・技術労働者(総合職)」の60歳時での退職金は、大学卒2,374.2万円、高校卒2,047.7万円(日本経済団体連合会「2016年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」より)。

あくまでも平均値ですが、定年退職するときに大学卒で約2,300万円、高校卒で約2,000万円を受け取ることになります。これだけあれば、家のローンが完成できますし、老後資金の大きな足しになります。

ところが、言うまでもなく、自営業に退職金はありません。自営業の老後のお金は、かなり厳しいと考えていいでしょう。では、自営業者が老後のために今から何をすべきなのか。次回は、自営業の老後のお金の備え方について考えてみたいと思います。


村越克子
フリーランスライター。学習院大学文学部心理学科卒業。編集会社を経て、フリーに。主婦を読者対象とした生活情報誌を中心に執筆。家計のやりくりに奮闘する全国の主婦を取材し、節約に関する記事を数多く手がける。執筆協力に『綱渡り生活から抜けられない人のための絶対! 貯める方法』永岡書店など。