ファーウェイ・ジャパンがLTE対応7型タブレット「HUAWEI MediaPad T1 7.0 LTE」を発売する。昨2015年夏に発売された製品のLTE版という位置づけで、スペック等について特筆すべき点はないし、さすがに10,980円の下位モデルはアップデートなどで苦労すると思う。

だが、上位モデルでも14,980円という価格がすごい。当然、SIMロックフリーで通話もできる。ドコモ系MVNOサービスと組み合わせて使えば超ローコストのスマートライフ体験セットができあがる。今なおガラケーに留まるシルバー世代などに、新しい世界へのゲートウェイとして受け入れられれば、何らかのムーブメントが起こる可能性もある。

年間売上6兆円超の大企業

ファーウェイは中国・深センに本社を置く企業で、その年間売上高約4,000億人民元は、日本円に換算すれば6兆円を超える。日本企業ではパナソニックの7.5兆円と東芝の5.6兆円の間くらいに位置する規模と考えればスケールが想像しやすいと思う。ちなみにお馴染みの中国企業としては、富士通PC事業統合の噂のあるレノボが5兆円弱なので、それよりかなり規模が大きいことがわかる。

中国・深センにあるファーウェイ本社のキャンパスは約200万平米。東京ディズニーランドの約4倍という規模だ。4万人を超える従業員が働いている。このビルは研究開発部門だけが集約されたR&Dセンター

いわゆる本業は、モバイルネットワークのための設備等、世界各国の通信事業者相手のB2Bビジネスで、売上高の約6割がそのカテゴリとなっている。それに加えてコンシューマー向け端末事業は売り上げの約3割強を占めるようになった。世界中のキャリアインフラを支え、そのモバイルネットワークを知り尽くした同社が今、積極的に攻めているカテゴリでもあり、とにかく目が離せないベンダーだ。日本における今回の新製品などはその一環ともいえる。

新Mateはライカと協業、カメラ重視に

ファーウェイのブランドを世に知らしめるフラグシップスマホは2系統ある。例年では春にリリースされるPシリーズと秋にリリースされるMateシリーズだ。

スマートフォンのPシリーズはP9が最新で、ライカとの協業によるカメラ体験の強化で人気製品となっている。日本でもMVNO各社が扱っている。PシリーズよりひとまわりおおきなファブレットとしてのMateシリーズはMate 8が最新だが、そろそろ新Mateが登場するはずだ。Li Changzhu氏(同社Vice President Handset business CBG)によれば、新Mateでは、P9同様にライカとの協業によるカメラの強化が予定されているという。

Li Changzhu氏(同社Vice President Handset business CBG)

2017年には次期PC新製品も予定

コンシューマーデバイスでは、今年の夏に日本にも投入されたMateBookも話題になった。モバイル関連展示会のMWCで発表されたにもかかわらず、WAN通信機能を持たないことにも驚いたが、2-in-1 PCとして、新たにMicrosoftとIntelとの強い結びつきの証を示す意欲的なデバイスだ。スマホの国からやってきたPCとしてエレガントな魅力を持つ製品として高く評価されている。

Wan Biao氏(同社President, Mobile Broadband and Home Device Business CBG)は、PCにはまだまだ巨大な発展の余地があると考えている。今は、どの企業であれ、何かを独自でやるのは難しく、必ずどこか別の企業との協業が必要になるとWan氏。ライカとの協業で話題になったスマホのP9はそのよい例だ。物真似をしようとするのではなく、とにかく特定分野でトップの企業といっしょにやれば、必ずいいことができるのだそうだ。

Wan Biao氏(同社President, Mobile Broadband and Home Device Business CBG)

PCカテゴリでいうなら、MicrosoftとIntelと協業することはそれに近い。その協業で実現できるビジネス領域には大きな伸びしろがあり、今のWindowsに限定することなく、将来のビジネスをいっしょに考えているところだという。来年(2017年)には、次のPC製品も予定しているからお楽しみにというWan氏だが、特に、MateBookについては、なにやら新しい入力方式を考えているところらしい。

コンテンツ、サービス以外は何でもやるというのが同社の方針だ。中国企業ではアリババやテンセントとはそこが大きく異なる。いい、悪いということではなく、方向性が異なるのだ。

ネットワークはトランスペアレント(透過的)であるべきだ。中国企業であることで、常に、ある種の先入観をもって見られてしまうということを意識している結果なのかもしれないが、インフラからエンドユーザーデバイスまで、あらゆるカテゴリで他国の企業以上にこの点に固執しなければならないハンディもある。それは、世界各国の通信事業者の厳しい要求仕様を満たすハードウェアを作ってきた同社のDNAに近いものなのかもしれない。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)