PFUとSansanが提携し、ドキュメントスキャナ「ScanSnap iX500」から、Sansanの法人向け名刺管理サービスが利用できる「ScanSnap iX500 Sansan Edition」が発表された

「ScanSnap iX500 Sansan Edition」発表会にて

このSansan Editionでは、既存のScanSnap iX500の標準機能に加えてSansanのサービスがバンドルされているという。具体的には500枚までの名刺管理を月額料金無料で利用でき、必要に応じて追加料金を支払うことで5,000枚、10,000枚へとグレードアップしていける。このサービスは、ひとつの利用者IDに対して複数のユーザーを設定できるため、実際の企業などでの利用では、社内の複数のメンバーが自分のユーザーIDで自分の名刺を管理していける。

OCRを100%に近づけるのは「人間の目」

本体とスマートフォンの専用アプリを直接接続。スキャンした名刺をスマートフォンで一元管理できる

Sansanの名刺管理は、画像データをOCRで読み取ったあと、そのデータを人間の目で確認し、修正を加えたものをデータベース化する。そのために必要な時間は1営業日がめどだという。それによってほぼ100%の認識率を維持できているそうだ。

ご存知のようにOCRの認識率は100%ではない。文字列を正確に読み取れないことがあるのは当然としても、一枚ごとにフォーマットの異なる名刺で、どれが企業名なのか、どれが役職名なのかといったことを判断するのはそれなりに難しい。フリーランスで、企業名がない場合だってある。

だが、人間は経験的にそれを判別し、名刺の持ち主の素性を判別することができる。だからこそ、これだけ長い間、名刺というフォーマットが使われ続けてきたのだろう。何しろ、統一されているのは用紙サイズくらいのものだし、そのサイズでさえ異なるものがあるのだから、機械可読という点ではハードルがとても高い。

初期のScanSnapがOCR機能を搭載し始めたころ、その基本的な仕組みはスキャンした結果を丸ごとOCR処理し、それを透明なデータとしてオリジナル画像に重ねるというものだった。当時のOCR処理にあまり過度な期待をせずに、とにかくある程度の文字列が抽出されていれば検索などにひっかかるだろうし、それによってオリジナル画像が目の前に呼び出されれば、あとは人間が判断できるという割り切った考え方のもとに成り立っていた。

今は、OCRも進化したし、ローカルの管理アプリでもかなりの精度で期待通りの認識ができてデータベース化できるようになっている。だが、100%ではない。それを限りなく100%に近づけるのが人間の目だ。

まだ紙の名刺は消えない

それほど遠くない将来、紙の名刺は世の中から消え去る可能性は高い。誰もが電子的な名刺を持ち、それを電子的に交換するようになる。と、考えるようになって、すでに10年以上が経過している。個人的には交換した名刺の整理はお粗末そのもので、それをごまかすために、名刺を交換した相手には、後日、できるだけメールを送信するようにしている。メールは20年分以上を蓄積保存し、常に手元にあるので、とにかくメールさえ交換しておけば、後で検索すればなんとかなるというもくろみだ。

ところが最近受け取るメールには、部署名はおろか、会社名、電話番号などが記載されていないケースも少なくない。メールのインスタントメッセージ化のトレンドなのだろうか。メールで日時を決めて相手を訪問しても、受付で相手の正確な部署名や内線番号がわからず困ってしまうことも珍しくない。それらが記載されていても、郵便番号が書かれていないことも多く、宅配便を送るために住所で郵便番号を検索することもよくある。

モバイルPCの登場で、ようやく紙とペンが不要になったのに、改めてタブレットなどにおける手書き機能がチヤホヤされる時代である。紙の名刺が過去の話になるのは、まだ当分先のことになりそうだ。だからこそのコラボレーションなのだろう。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)