こんにちは。ファイナンシャルプランナーの中山浩明です。近年、結婚や出産時の年齢が高くなる傾向にあります。連載『晩婚者のためのマネー術』では、そうした"晩婚化時代"に応じる形で、晩婚の方々を対象にした"マネー術"について解説したいと思います。


確定拠出年金の投資信託ラインナップは「多ければよい」というものではない

確定拠出年金の投資信託ラインナップは「多ければよい」というものではありません。似たような値動きの投資信託を複数組み合わせても分散効果は期待できません。投資信託の分散効果とは、値動きの異なる複数の投資信託を組みあわせることで、収益のブレが小さくなる効果をいいます。例えば値動きの異なる2つの投資信託を組み合わせたとき、収益率は2つの投資信託の単純平均となりますが、ブレ(標準偏差)は単純平均より小さくなります。従って、同じような投資信託に分散しても効果はなく、値動きの違う投資信託を複数組み合わせることが分散のコツになります。

例えば、国内株式を投資対象とした投資信託の場合、基本的にはどれも似たような値動きになります。つまり、「国内株式」というカテゴリーから2本も3本も投資信託を選ぶ必要はありません。同じカテゴリーからは成績のよい投資信託、あるいは信託報酬手数料の安いインデックスファンドを1本だけ選択すればOKです。

値動きの違う投資信託を選ぶには、違うカテゴリーから投資信託を1本ずつ選択します。国内株式のカテゴリーから1本、外国株式から1本、国内債券から1本、外国債券から1本…といった具合です。

カテゴリーの分け方のポイントは、投資対象が国内市場か外国市場か、株式市場か債券市場か(またはそれ以外か)です。最低でも、(1)国内株式、(2)国内債券、(3)外国株式、(4)外国債券の4カテゴリーから1本ずつを選択するとよいでしょう。ラインナップの中に不動産投資信託やバランスファンドがあれば、「その他」というカテゴリーを追加、1本をプラスしてもかまいません。あまり細かくカテゴリー分けしてしまいますと、保有する投資信託の数も多くなり過ぎるため、資産管理が大変になります。従って、4~6本程度にまとめるのがよいでしょう。

投資信託がどのカテゴリーに分類されるかは、目論見書を読まなくても名称からおおむね判断できます。例えば、「フィデリティ・日本成長株・ファンド」ならカテゴリーは国内株式ですし、「ラッセル外国株式マルチ・マネージャー・ファンド」なら外国株式です。「マイストーリー・株50」はバランスファンドで「株式の組入比率は50%」という意味です。

(例)

  • フィデリティ・日本成長株・ファンド …国内株式

  • DC・ダイワ・ストックインデックスファンド …国内株式

  • ラッセル外国株式マルチ・マネージャー・ファンド …外国株式

  • インデックスファンド日本債券 …国内債券

  • ダイワ投信倶楽部外国債券インデックス …外国債券

  • マイストーリー・株50 …バランス型

  • 野村J-REITファンド …国内不動産

投資信託の相関係数

2つの投資信託の値動きの違いは、相関係数で表現することができます。相関係数とは+1から-1の間で表現され、+1に近づくほど連動性が高くなり、-1に近づくほど連動性が低くなります。+1を「完全相関」といい、2つの投資信託は全く同じ値動きをすることを意味します。-1を「逆相関」といい、2つの投資信託は全く逆の値動きをすることを意味します。つまり-1の逆相関が理想的な組み合わせですが、相関係数は必ずしもマイナスでなくてもかまいません。完全相関(つまり+1)でなければ、プラスの相関係数でも分散投資効果は得られます。

例えば、国内株式を投資対象とする投資信託と、外国株式を投資対象とする投資信託はプラスの相関にはなりますが、+1ということはありません。相関係数が0.7や0.8でも分散投資効果は得られます。相関係数はエクセルで簡単に求めることもできますが、わざわざ調べなくても、違うカテゴリーから投資信託を選べば、相関係数が+1になることはありませんので安心してください。

インデックスファンドを中心に組み合わせる

最もシンプルな組み合わせ方法は、(1)国内株式、(2)国内債券、(3)外国株式、(4)外国債券、のカテゴリーからインデックスファンドを1つずつ選択することです。インデックスファンドは保有コスト(信託報酬手数料)が低いため、長期保有に向いています。なお、インデックスファンドかどうかを判断する方法は前回のコラムでお伝えしましたが、もう一度簡単に触れておくと、ファンドの名前に「インデックス」や市場の全体指数を表す「日経225」などが入っているもの、もしくは信託報酬手数料が0.5%程度のものは、概ねインデックスファンドと判断できるでしょう。

選んだ投資信託を皆同じ比率で組み合わせてもよいですし、株式もしくは債券どちらかにウェイトをつけてもかまいません。収益のブレを許容してでも高利回りを狙いたいなら株式にウェイトを、ブレを抑えた安定利回りを望むなら、債券にウェイトをおけばよいでしょう。

執筆者プロフィール : 中山 浩明(なかやま ひろあき)

株式会社アイリックコーポレーション『保険クリニック』ファイナンシャルプランナー(CFP認定者/DCプランナー) マネー関係 セミナー講師。大学卒業後、ゴルフクラブの職人、パン屋経営と異色の経歴を持つ。2000年にファイナンシャルプランナーとして活動開始、マネー関係のセミナー講師として活躍、これまで500回以上のセミナーを開催。現在『保険クリニック』教育部に所属、保険コンサルタント指導とマネーセミナーの講師担当。専門分野は年金、保険、資産運用、ライフプラン。セミナーでは、お客様の立場で「お金の使い方を知ること」の重要性を唱える。

セミナーHP→http://www.hoken-clinic.com/seminar/

『保険クリニック』HP→http://www.hoken-clinic.com/