【レポート】

何でもありで何でもある! 館鼻岸壁朝市は3時間だけ現れる小さな街だった

全国有数の水揚げを誇る青森県八戸市にある「館鼻(たてはな)漁港」。平日は多くの船が係留・待機するこの場所が、日曜の朝になると日の出から9時頃まで、どこからともなく現れるお店と人で埋め尽くされる。その数現在、約320店舗と約2万人。ただし、全長約800mの館鼻岸壁朝市の魅力はその規模だけではないのだ。

八戸大橋から望む景色。これでも1/4ほどしか写っていない

立ち止まっている暇はない!

とにかく広い、広すぎる。素人にはどこに行っていいのかさっぱり分からないので、この日は達人の助けを借りることにした。陸奥湊(むつみなと)歓洸協会の宗前マサルさんは、朝市のお店の人にもおなじみの朝市の達人。朝市を愛し好きすぎて、ボランティアでフリーペーパーを発行してしまうほどである。

陸奥湊歓洸協会の宗前マサルさん

宗前さん「話は歩きながらにしましょう。全長800mの両側に店がありますから早く回らないと。商品がなくなり次第、閉めてしまうので急ぎましょう! 」

ここからの宗前さんの動きが早い早い。そしてほどなく、6時集合をかけられた理由を知ることになる。

宗前さん「端から参りましょう! ここの椎茸詰め放題300円は、朝市でも有名でいつもあっとい間に売り切れ。なくなり次第終了なので、朝一番で並ぶべき場所のひとつです」

最後尾はここ。先頭まで40~50mはありそう(汗)

筆者「うわ~買いたい! 並びます!! 」

と、早速列に並ぶ筆者に一言。

宗前さん「これに並ぶと残りの取材はできないので撮影だけです、さあ先頭へ」

筆者「すごい列ですね!」

宗前さん「いつもあっという間になくなっちゃうんだよ~」

まともに会話もできないペースで椎茸を乗せていくご主人。カゴに乗るだけ乗せて、たったの300円とは……。それにしても、どんどんお客さんが袋に入れてしまって、全く写真が撮れない。見かねたお客さんが自分の椎茸を取り出して、「こんなに大きいんだよ! 他で買うのアホらしくて!! 」と、買ったばかりの椎茸を撮らせてくれた。

安かろう悪かろうではない!とっても新鮮で大きな椎茸だ

振り返るとすでに宗前さんの姿はない。慌てて走ると、テントの前にニコニコ顔で何かを指して立っている。

宗前さん「アップルコンピューターも売ってるんです」

筆者「は? 」

え? まさか……。

衝撃のオヤジギャグである

アップルとコンピューターね。なるほど。実際にパソコンを購入するとリンゴをひとつサービスしてもらえるらしい。ちなみに中身はWindows(笑)。このリンゴは一体……と振り返ると、宗前さんはちゃんと答えを持って立っていた。

「浦屋敷農園」の皆さんは朝からさわやかな笑顔

宗前さん「浦屋敷農園さんのリンゴですよ。浦屋敷農園でパソコンも売っているんです」

「浦屋敷農園」の茶目っ気たっぷりの男性が、たくさんの種類の新鮮なリンゴを販売していた。実はこの男性、お店の人ではなく常連客。通っている内に手伝うようになったとか。

振り返ると、宗前さんはまた違うお店の前でスタンバイ。

宗前さん「こっちこっち! ここはピアソンさんのお店で本格的なアメリカンチーズケーキやビスケット、レモンケーキやチェリーパイなどが買えるんですよ!」

本格的なチョコレートケーキがこの量で200円って……材料費の方が高くない? と、こっちがビックリする。都内ではお目にかかれないような激安プライス! しかも全部手作りときている。

手作りケーキがこの値段!

朝市はスピード勝負! 一気に駆け抜けろ!!

振り返るといつもいない宗前さん……。人混みに紛れていくので、解説が全く聞こえず。ここからはダイジェストで、気になった店舗をどんどん紹介していこう。

焼きそば。明らかに量がおかしい

幼虫グミは350円。ちなみに、結構おいしい

「ながうし農産加工組合」にて。ヘルシーで大人気のクラッシュブルーベリージュースが人気。カップは200円で、ホットもあることに驚く。味はとっても濃厚

軽トラックの荷台に回転式の炭火焼グリルが置いてある。新鮮な魚介類が格安で食べられるとあって大人気。サンマ200円、鮎350円、鯖350円、ホタテ500円

「しおてばの大安食堂」にて。朝市名物大人気の「しおてば」こちらもいつも長蛇の列。しおてば1本70円、ハーフが40円と行列も納得の激安価格

「大久保商店」八戸名物せんべいの天ぷら

大きな車の中や軽トラックでパンを焼く「アンジェリーナ」。メロンパンもふっくらでおいしそうだが、一番人気は焼きたてのクロワッサンだとか

お花屋さん。なぜか頭にお金を刺してて気になった

自家焙煎コーヒーの「お茶の瀬川S.Roasteria」。お父さんが日本茶、息子さんが本格ドリップコーヒーという和洋のお茶ドリンクショップ

「朝市さばのマルカネ」。さば寿司やさばカラ(さばの唐揚げ)など、八戸漁港の朝の味をお届け!

餅、団子、惣菜など。こちらのおばあちゃんの手作りだ

「板橋畳店」にて。畳の材料を使って作っているバックが秀逸のでき上がり。小さいもので1,000円から。畳素材でできている靴の中敷きは、夏でも素足で履けるのが特徴。もちろん購入。超便利

8~9割が地元民! 一種の集会場的役割

撮って食べて買って。全長800mに両サイドあると、3時間ではかいつまんでしか回れない。あれだけ急いだのに、後半は商品もなくなって店じまいするお店もちらほらあるくらいだ。めぐり終わって落ち着いたコーヒーショップにて、宗前さんは朝市のマップ(100円)を開く。ようやく、ゆっくり話が聞けそうだ。

筆者「地図があるっていうことは、お店はいつも同じ場所に設営されているのでしょうか? 」

宗前さん「年間を通して同じ場所に設置しているので、100円でマップを購入して行きたい店には迷わず行けますよ。でも先ほど見た通り、人気店は商品がなくなれば早じまいします。必ずっていうお店は最初に回りましょう!」

筆者「客層はどんな感じなんですか? 」

宗前さん「8~9割が地元民。主な目的はみんな、朝ごはんを食べに来てます。一つひとつのお店に常連さんと言うか、固定のファンがいて、毎週同じ店に同じ人が集まるので、一種の集会場的役割を果たしています。年配者も多くお互いの生存確認ですね(笑)。『元気か~? 』って。あんまり来なかったりすると心配して電話掛けちゃいます」

ぐるっと回って、漁港ストアの方へ戻ろうとすると楽しげな音が。名物の朝市ライブ会場だ

筆者「販売されているものは青森県産? 」

宗前さん「出展者が八戸及び近隣の市町村がほとんどです。地元の農家、漁業従事者、酪農家など様々な店舗が出店しているので、ほぼ地産地消ですよ~。一回りして分かっていただけたかと思いますが、一般的な朝市で見られる海産物や青果物にとらわれず、飲食店、コーヒーショップ、お好み焼き、衣料品などなど、多種多様な業種が出店しているので、一度で朝市の魅力を理解するのは不可能。毎週通ってくる人が続出するの分かるでしょ? 僕もその虜になったひとりですよ」

笑顔で語る宗前さんの瞳は、本当に朝市が好きなんだなぁ。と実感させられる慈悲深い愛に満ちていた。

「ちょっとのぞいてみようかしら」では決して終わらない

移動販売をしていた店舗が朝市で人気が出たことにより、市街で店舗を構えるに至ったお店があるなど、「朝市ドリーム」もあるとか。来る人にとっても、店を出す人にとっても、ここはただの朝市ではない。日曜の朝に幻のように現れる、正に夢のような朝市である。

●information
館鼻岸壁朝市
期間[ 2017年は3月12日~12月毎週日曜日(春彼岸前の日曜から開始)
時間: 日の出~午前9時頃まで
場所: 青森県八戸市新湊 館鼻岸壁
アクセス: [自動車]八戸自動車道八戸ICから20分、八戸駅から25分、八戸市中心街から10分、[鉄道]JR八戸線「陸奥湊駅」から徒歩10分、[バス]日曜朝市循環バス「いさば号」、「館鼻漁港前」下車

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