メルセデス・ベンツ日本はフラッグシップモデル「Sクラス」の新型を発表した。すでに予約注文の受け付けを開始しており、納車は9月上旬から順次開始する。ベンツの最高級セダンである新型Sクラスは、クルマの“知能”が進化していることを示す存在だ。

メルセデス・ベンツの新型「Sクラス」。新車発表会は東京外かく環状道路(外環道)の建設現場で行われた。発表会に登壇したメルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長によると、「首都圏の未来を創造する」外環道と「未来のクルマ」である新型Sクラスのコンセプトが合致したので、この場所で新車発表を行うことを決めたそうだ

インテリジェントドライブに新機能、自動運転に接近

ラグジュアリーセダンという分野の開拓者であるSクラスだが、「インテリジェントドライブ」「究極の快適性」「徹底した効率向上」をコンセプトとして2013年に登場した先代は、累計販売台数が世界で30万台を突破したそうだ。今回の新型では、新エンジン、マルチパーパスカメラ、ヘッドライトなど、新たなコンポーネントを6500点以上採用するなど、開発は広範囲に及んだという。

新たに6500点以上のコンポーネントを採用した新型Sクラス

新型Sクラスには、クルマの知能化が進んでいることを感じられる要素が盛り込まれている。まず「自動運転につながる技術」(上野社長)である「インテリジェントドライブ」の進化だが、Sクラスでは、もともと備わっていた高速道路における先行車追従モードに「アクティブステアリングアシスト」という新機能が追加となっている。これは、車線が不明瞭な状況でガードレールなどを認識し、先行車との車間距離を維持しながらステアリング操作をアシストする機能だ。

アクティブステアリングアシストが起動している際には、ウインカーを点滅させることで自動で車線変更できる「アクティブレーンチェンジアシスト」という新機能も使えるようになった。この機能では、いったんウインカーを出せば、10秒以内であればシステムが車線変更が可能かどうかを確認し続け、自動で車線変更を行ってくれるという。

価格は税込みで1128万円から3323万円まで

「最善か無か」を体現するSクラス

そのほか、ドライバー支援機能で目を引くのは、メルセデス・ベンツで初の搭載となる「リモートパーキングアシスト機能」だ。これは、車外からスマートフォンを使って駐車操作を行うことができる機能。発表会ではデモを見ることができたが、無人のSクラスがスマホ操作で縦列駐車をこなす光景には驚いた。

スマホ操作によるリモートパーキングのデモ。画像のように、ベンツの間にSクラスを縦列駐車するという緊張の瞬間を迎えてしまった際には、車外から状況を見つつ、遠隔操作でクルマをとめるというのも有力な選択肢となりそうだ。ちなみに、デモのリモートパーキングはとてもスムーズに成功していた

「Sクラスは1972年の発表以来、つねに最新の技術を採用し、(メルセデス・ベンツのスローガンである)『最善か無か』を体現する存在だ」と上野社長は語っていたが、最新のSクラスは確かに、「インテリジェントドライブ」の進化や、通信機能を用いたテレマティクスサービス「メルセデス・ミー・コネクト(Mercedes me connect)」の初導入など、最新技術の採用に積極的な姿勢が見てとれるクルマとなっている。

独アウディは、Sクラスと競合する「A8」の新型にレベル3の自動運転機能を導入すると発表している。ドイツに拠点を置くプレミアムブランドメーカーの間では、フラッグシップモデルに搭載する技術で先進性を競う流れが加速しそうだ。