春から新生活を迎えた人も、この時期になると新しい環境に慣れてきた頃ではないだろうか。ここで今一度見直しておきたいのが、住まいの防犯だ。何事も慣れてきた頃が一番危ない。気が緩みがちになるこの季節にこそ、防犯対策について考えてみよう。

今回はセキュリティのエキスパート企業であるセコムの広報担当・寺本美保さんに、気をつけるべき防犯対策について聞いてきた。

窓の上には補助錠を

家に人がいる時も狙われる!?

――住まいで被害に遭いやすい犯罪にはどのようなものがあるのでしょうか
住宅を対象とした犯罪というと、恐らく「空き巣」を連想する方が多いのではないでしょうか。

――そうですね……。手口はいろいろありますけど、どれも「空き巣」に集約するような気がしています
ですよね。でも、住宅を対象とした侵入窃盗って3種類あるんですよ。「空き巣」と「忍び込み」と「居空き(いあき)」で、「空き巣」は留守中を狙う窃盗ですが、それ以外の2つは住民が家の中にいる時に金品を盗む行為を言うんです。

――人が家にいるのに物を盗むなんて可能なんですか!?
侵入窃盗の被害のうちおよそ3割は「忍び込み」と「居空き」によるものというデータがあるので、残念ながら……。

「忍び込み」が、就寝中に侵入して金品を盗むもの。「居空き」が在宅時を狙うものなんです。不在中だけでなく、家にいるときも狙われる可能性があるということを意識していただきたいですね。

眠っている間に金品を盗まれる「忍び込み」(イメージ)

――就寝中を狙う「忍び込み」はまだ理解できますが、「居空き」はすごいですね……
例えば、家族全員がリビングなど一部屋に集まっている時に、その隣の部屋や他の階、寝室といった人のいない部屋に侵入して金品を盗むという手口です。

住人の在宅中を狙う「居空き」(イメージ)

家屋に侵入するためにガラスを破る音って、実はごく小さい場合もあるんです。家族の話し声やテレビの音など、日常生活の音に消されてしまって誰も気づかない、というケースは実際にありますね。

――なんと恐ろしい……。ガラス破りはどのような手口で行われるのですか?
「ガラス破り」というと、大きい窓ガラスをガシャンと割るイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、小さな穴を空けられれば侵入が可能な場合があります。このときの破壊音は小さく、よく言われるのは「缶コーヒーのフタを開けるときと同じ音量」というたとえですね。日常生活の雑音がある環境では、ほとんどかき消されてしまいます。

――ヒエ~~~

赤丸で囲った金具が「クレッセント錠」

侵入に必要な窓ガラスの破壊範囲はごく少なく、音も「缶コーヒーのフタを開ける程度」と小さいのだ(イメージ)

ピッキング対策を無効化する「サムターン回し」

――ネットでよく見るようになったのですが、最近は「サムターン回し」という手口が横行しているようですね
そうですね。一時期、鍵を特殊な工具で空けてしまう「ピッキング」という手口が流行りました。しかし、現在ではピッキングの手口は一般に知られており、テレビなどでその防止策も広く伝えられています。その次の手口として対策が必要なのが「サムターン回し」です。

――どのような手口なのでしょう
ドアの室内側についている、錠の開閉をするカギを「サムターン」と言うんですが、外側からドリルで穴を空けたり隙間を狙ったりして工具を差し込み、サムターンを回して解錠してしまうんです。

これが「サムターン」

――ドアの内側を直接狙われると、ピッキング対策は意味を成さないですね……。どう対策すればいいのでしょうか
サムターンの周りをカバーする対策グッズが市販されていますので、それを使うといいと思います。ペットボトルを切り取ってテープで貼っても代用できますよ。

対策グッズでカバーしよう

――意外と簡単だった!
手口さえ分かっていれば比較的安価に対策できますので、ぜひ備えていただきたいですね。マンションやアパートなどの共同住宅の場合、1室が侵入を許してしまうと2室目、3室目と狙われやすくなってしまうので特に注意してください。