QualcommはCOMPUTEX3日目にあたる6月1日、台北市内のホテルでWindows on Snapdragon 835の動作デモを実施した(Photo01)。

Photo01:System Typeが"64-bit Operationg System, ARM-based processor"、Processorが"Qualcomm Snapdragon SDM835 1.90GHz"となっていることが分かる

Snapdragon 835自身は2017年3月に発表。一方、Snapdragon搭載デバイスにおけるWindows 10のサポートは、2016年12月に明らかにされていた通りだ。既知の情報ではあったが、実際にSnapdragon 835を利用してのデモは今回が初となる。

普通のx86アプリケーションが問題なく動作

デモでは、まず「普通の」Excelを起動し、5万行ほどのデータの分析(Photo02)し、そのグラフ表示(Photo03)。さらにPowerPointやWordを起動して、Wordの文章やExcelのグラフをPowerPointに取り込むといったデモも行われ、まったくx86版と遜色がないことをアピールした。またMicrosoftの製品以外として、7zipのダウンロードとインストール、起動を行い、普通のx86アプリケーションがそのまま動く様子を披露した。

Photo02:集計は非常に高速でほとんど待ち時間がなかった

Photo03:グラフ作成やグラフの変形などもストレスを感じないものだった

Qualcommといえば、当然ながら通信用モデムのメーカーでもあり、Snapdragon 835もGigabit LTEを特徴の1つとして強く訴求している。これについてもYouTubeの動画(ただし1080p)をストレスなく再生やシークできることを示した(Photo04)ほか、ローカル環境で2GBほどのファイルをGigabit LTE経由でコピーを行い、370Mbps程度の帯域が利用できることをアピールした(Photo05)。

Photo04:これはYouTubeだからインターネット経由での転送であるが、1080pだとGigabit LTEでなくても十分帯域が足りるという話だった

Photo05:これはRohde & Schwarzのエミュレータを相手として通信を行ったとのこと

ところでSnapdragonは、big.LITTLE構成をとる8コアのSoCである。Windowsでもこのbig.LITTLEを正しくハンドリングできることも示された(Photo06)。Photo06の環境だと4つのbigコアのうち半分(右下2つ)は休止状態に置かれ、4つのLittleコアと2つのbigコアのみが稼動するとしている。また電源モードに関してもS0~S4といったWindowsの定める動作モードをきちんとカバーするという話であった。

Photo06:上4つがLITTLEコア、下4つがbigコアになるそうだ。ちなみに動作周波数の1.90GHzは、Windowsがコア0の動作周波数を調べて表示するが、Snapdragon 835ではこれがLITTLEコアにあたるのでこの数字になるのであって、bigコアはもっと周波数が高いという

なおここまでのデモは(見やすさを考えて)外部モニターでの表示であったが、もちろん普通に自身の液晶でも動作可能である(Photo07)。

Photo07:この筐体と液晶はSnapdragonの開発用リファレンスキットをそのまま流用したとのことで、タッチ操作も対応する

競合はIntel Core i5のY SKU/Core m3

Snapdragon 835の競合となるのは、IntelのCore i5のY SKU、ないしCore m3だ。会場には、Snapdragon 835の開発ボードの基板(Photo08)と、同程度の性能/機能を持つIntel CPUを搭載した製品の基盤(Photo09)を並べて展示していた。

Photo08:今回のデモ機の基板。面積は50.4平方cmとのこと

Photo09:競合とする製品の基板。面積は98.1平方cm。実際に販売されている、12型程度のタブレットに内蔵されていた基板だそうだ

Snapdragon 835の開発ボードでは、より基板を小さくすることができ、その分バッテリーサイズを増やすことが可能で、原価も下げられるとした。ちなみにPhoto10は、Photo08に搭載されているSnapdragon 835のチップそのものである。

Photo10:大きいほうがSnapdragon 835そのもの、小さいほうがSnapdragon X16 LTE modemと思われる

デモの内容はこの程度であったが、質疑応答の内容をベースに若干の補足をしておきたい。今回稼動しているのは64bitのWindowsであるが、現在動作するアプリケーションは以下の2つである。

  • Native(ARM版)の64bitアプリケーション
  • 32bitのx86アプリケーション

このうち32bitのx86アプリケーションに関しては、バイナリトランスレーションによって動作を実現している。初回にバイナリトランスレーションした際に、メインメモリの一部を利用し、変換後のバイナリを格納、2度目以降はこれをそのまま起動するので高速になるという話だった。

このバイナリトランスレーションだが、現在のところ、x64には未対応である。ただこれを「Not yet」という含みを持たせた言い方で表現しており、将来的にはx64のバイナリトランスレーションも可能になるかもしれない。

ちなみにNativeアプリケーションだが、UWP(Universal Windows Platform)アプリケーションであれば、すでにMicrosoftからARM用のコンパイラが提供されており、これを利用してARM向けのNativeアプリケーションが生成できるという話であった。

また説明では言及されなかったが、5月31日におけるMicrosoftの基調講演の中で、Snapdragon 835ベースのAlways Connected PCをASUS/HP/Lenovoが発売する、ということが明らかにされており、これをデモ会場でさりげなくアピールしていた(Photo11)。

Photo11:とりあえずはこの3社がLaunch Partnerというわけだ