続々と上陸する同門ステーキハウス

今回の仕掛けは、ウルフギャングとして新たな顧客との関係を作りたいとの戦略にのっとったものだが、もう1つ、隠された狙いがある。実はバーガーマンスは、近く勃発が見込まれる六本木でのステーキハウス戦争に向けた布石なのだ。

ウルフギャングはニューヨークの老舗ステーキハウス「ピーター・ルーガー(Peter Luger)」をルーツとし、六本木には3年前に上陸した。その六本木に、同じくピーター・ルーガーの流れを汲む「ベンジャミン・ステーキハウス(BENJAMIN STEAK HOUSE)」が2017年6月に上陸する。同年秋には、同じくピーター・ルーガー流派の「エンパイア・ステーキハウス(Empire Steak House)」が店を構える見通し。つまり六本木で、ニューヨークを拠点とする同門ステーキハウスの代理戦争が始まるのだ。

3年前に六本木に進出したウルフギャングは、先行者利益を享受できる立場にある。六本木・ステーキ戦争が勃発する前のタイミングで、なるべく多くの顧客と接点を作っておくため、同店としては手頃なバーガーをランチタイムに設定することを考えた、というのがバーガーマンスのもう1つの狙いだ。

外食業界の競合に新機軸

外食産業における「先行チェーンVS新興勢力」という従来の構図は、どちらかといえば価格戦略の面に注目が集まることが多かったという印象だ。しかし、ウルフギャングは先駆者としての地の利を生かしつつ、自らの素材と価格、そして高級路線ではない新たなブランド戦略のもと、新興勢力を迎えようとしている。

外食業界で「戦争」と名のつく争いは、最終的に価格競争に突入し、結果として品質が下がり、消費者の選択肢から外れていくという事例が多かった。新しいスタイルの戦争は、まさに作り手と消費者の双方が得をする競争であってほしい。その点、ウルフギャングは、消費者が認める価値を維持した状態で、競合他社の上陸を迎え撃とうとしているので頼もしい。同門ステーキハウス同士が切磋琢磨すれば、六本木が“ステーキの聖地”となる可能性もある。