既報の通り、AMDは4月18日にデスクトップ向けGPUの新モデル「Radeon RX 500」シリーズを発表し、上位モデルであるRadeon RX 580とRadeon RX 570の販売を開始した。海外市場での希望小売価格はRadeon RX 580の8GBメモリ搭載モデルが229ドル、4GBメモリ搭載モデルが199ドル。Radeon RX 570が169ドル。発表に先駆けて開催された記者説明会の内容も交えつつ、「Radeon RX 500」シリーズの概要を紹介するほか、最上位モデルであるRadeon RX 580の性能検証をお届けしたい。

古い世代からのリプレースを狙う

Antal Tungler氏

「Radeon RX 500」シリーズは、"Polaris"アーキテクチャを採用製品として第2世代となる。前世代の「Radeon RX 400」シリーズと同じく、メインストリームのゲーマーをターゲットとしている。

米AMDでグラフィックス製品のエバンジェリストを務めるAntal Tungler氏によると、ワールドワイドにおいて、PCゲーマー5億人のうち、80%が2世代前となるRadeon R9 380X以下のグラフィックスカードを使用しているという。また、2016年にグラフィックスカードをリプレースしたのは10%に留まり、まだまだ古い世代のGPUが使われ続けている。

多くのゲーマーが2世代以前の古いGPUでゲームをプレイしているという

具体的には80%のゲーマーがRadeon R9 380X以下のグラフィックスカードを利用。2016年にグラフィックスカードを換えたユーザーは10%に留まる

Tungler氏は「古い世代のGPUでは、最新のゲームタイトルをプレイする際に解像度も足りないし、フレームレートも60fps以下になってしまう」と指摘。AMDとしては、こうした層や内蔵グラフィックスを利用しているユーザーに対して、リプレースあるいはアップグレードを狙う。

古い世代のGPUでは、最新のゲームを広い解像度あるいはより高い設定でぷれいするのは難しいと主張する

また、HDR対応や4K解像度でのストリーミングなどこれからのトレンドにも乗り遅れてしまうとしている

また、"Polaris"世代では幅広いゲーマーに向けてVRが動作する環境を提供するという目標を掲げているが、これについても82%のPCゲーマーが、Oculus RiftやHTC ViveといったVRヘッドマウントディスプレイに非対応のGPUを使っているとして、さらにアピールしたい考えだ。

VRヘッドマウントディスプレイを快適に駆動できる環境がそろっているのは、20%足らずのユーザーのみ。まだ多くのゲーマーにとってVRは遠い存在だ

Radeon RX 580 / Radeon RX 570は従来モデルからクロックアップ

「リファイン」したPolarisとして提供されるのが「Radeon RX 500」シリーズだ

「Radeon RX 500」シリーズとして、Radeon RX 580 / Radeon RX 570 / Radeon RX 560 / Radeon RX 550の4モデルをそろえる。いずれもDirextX 12やVulkanといったLow Level APIをサポートするほか、AMDの画面表示技術「FreeSYNC」、最新ドライバ「Radeon Software Crimson ReLive」に対応。「Crimson ReLive」で導入された省電力機能「Radeon Chill」も利用できる。「Crimson ReLive」の機能検証については、大原雄介氏のレビューを参照していただきたい。

「Radeon RX 500」シリーズのラインナップは、Radeon RX 580 / Radeon RX 570 / Radeon RX 560 / Radeon RX 550の4モデル

最上位モデルのRadeon RX 580は、1440p(2,560×1,440ドット)/画質設定「High」でのゲームプレイやVRに向けたモデルだ。36基のCompute Units(CU)や8GBのGDDR5メモリといった構成は前世代のRadeon RX 480と同じ。変わった点としては、動作クロックが向上した点にある。旧世代のRadeon R9 380Xと比較して57%の性能向上を実現するほか、VRの動作要件もみたせるという。

Radeon RX 580の概要

1440pのゲーム環境において、Radeon R9 380XやGeForce GTX 970から大きな性能向上が見込めるとしている

また、VRゲームにおいてもRadeon R9 380Xでは動作要件である90fpsを割り込むが、Radeon RX 580ではクリアできるとアピールする

続くRadeon RX 570は、1080p(1,920×1,080ドット)/画質設定「Ultra」で60fps以上のゲームプレイを実現するとしている。こちらもCUやメモリの容量は、前世代のRadeon RX 470と同じで、動作クロックが引き上げることでパフォーマンスを向上。Radeon R7 370やGeForce GTX 960からのリプレースを狙う。

Radeon RX 570の概要。グラフィックスメモリは4GBとあるが、前世代のRadeon Rx 470で8GB搭載モデルも出たことから、カードメーカーによっては、8GB版のRadeon RX 570が投入されるかもしれない

1080pにおける旧世代製品とのパフォーマンス比較

製品名 Radeon RX 580 Radeon RX 480 Radeon RX 570 Radeon RX 470
製造プロセス 14nmFinFET 14nmFinFET 14nmFinFET 14nmFinFET
Compute Unit 36基 36基 32基 32基
Stream Processors 2304基 2304基 2048基 2048基
動作クロック
(ベース/ブースト)
1,257MHz/1,340MHz 1,120MHz/1,266MHz 1,168MHz/1,244MHz 926MHz/1,206MHz
メモリ容量 4GB/8GB 4GB/8GB 4GB 4GB
メモリインタフェース 256bit 256bit 256bit 256bit
メモリ帯域幅 256GB/s 256GB/s 224GB/s 211GB/s
消費電力 185W 150W 150W 120W

Radeon RX 560はフルスペック、Radeon RX 550は新コア

Radeon RX 580とRadeon RX 570は、わずかなスペック変更であったが、下位モデルのRadeon RX 560とRadeon RX 550はもう少し大きな変化となっている。

Radeon RX 560は、1080pでのスムーズなゲーム体験に向けた製品とされる。前世代のRadeon RX 460と比べて、CUが2基増加。そもそもRadeon RX 460で採用していた"Polaris 11"コアのフルスペックは16CUで、Radeon RX 460では2基無効化した状態であった。Radeon RX 560では、CUを無効化せずに投入するものとみられる。

Radeon RX 560の概要。16基のCUに注目

1080pの画質設定「Midium」で快適に遊べるとしている

主要なeSportsタイトルの99%の場面において、16.7ms以内にレンダリングが完了しており、60fpsを維持できると主張する

また、Radeon RX 550は、Tungler氏が「まったく新しいコア」と説明した製品で、CUは8基、2GBのグラフィックスメモリでエントリー向けという位置付けだ。eSportsタイトルに加えて、OpenCLをサポートするクリエイティブ系のソフトウェアでの利用、さらにロープロファイルに対応した製品も投入される予定で、動画視聴用のホームシアターPCなどへの搭載を想定する。

Radeon RX 550の概要

eSportsタイトルやAdobe Photoshop、Adobe Premiereといったアプリケーションでのパフォーマンスをアピール

ホームシアターPCへの搭載も想定

「Radeon RX 500」シリーズに対するAMDのポジションは明確で、とにかく旧世代の製品を置き換えさせたいというものだ。2016年はAMDがPolaris、NVIDIAがPascalとどちらもアーキテクチャを大きく変えた製品を投入し話題となったが、今回はそこでリプレースした層ではなく、まだ躊躇しているユーザーをターゲットとする考えだ。