Windows 10 Insider Preview ビルド15042に、気になる設定項目が追加された。「アプリのインストール元の場所を選択してください」がそれだ。もちろんCB (Current Branch) であるWindows 10 バージョン1607にはない新項目である。ドロップダウンリストからは「任意の場所のアプリを許可する」「ストアのアプリを優先するが、任意の場所のアプリを許可する」「ストアのアプリのみ許可する」の3項目が選択可能だ。

Windows 10 Insider Preview ビルド15042で、「設定」の <アプリ/アプリと機能> に加わった項目

一見しただけでは意味を理解しにくい項目名だが、これはUWP (ユニバーサルWindowsプラットフォーム) アプリケーションとデスクトップアプリのインストール可否を制御するための設定である。例えば「ストアのアプリのみ許可する」を選択した状態でデスクトップアプリのインストーラーを実行すると、「You can only install apps from the Windows Store (Windowsストア経由のみアプリケーションをインストールできる)」というメッセージとともに、Windowsストアを起動するボタンや「設定」の該当箇所を呼び出すリンクが現れる。

「ストアのアプリのみ許可する」を選択してデスクトップアプリのインストーラーを起動した状態

「ストアのアプリを優先するが、任意の場所のアプリを許可する」を選択した状態で同じ操作を試みると、似たメッセージが現れるものの、メッセージの内容は「The app you're installing isn't from the Windows Store (インストールしようとしているアプリケーションはWindowsストア経由ではない)」に変化し、インストールを実行する <Install anyway> ボタンが加わることを確認した。

ここで思い出すのが「Windows 10 Cloud」の存在だ。Microsoftが公式にアナウンスしたものではなく、実在するか否かも不明だが、デスクトップアプリは動作せず、Windowsストア経由でのみアプリケーションが利用できるエディションと言われている。

「ストアのアプリを優先するが、任意の場所のアプリを許可する」を選択してデスクトップアプリのインストーラーを起動した状態

さて、「アプリのインストール元の場所を選択してください」が加わることのメリットを思索したい。現在のデスクトップアプリ用インストーラーはデジタル署名を付与し、UAC (ユーザーアカウント制御) などを駆使して、悪意を持ったプログラムのインストールを防いでいる。だが、UWPアプリケーションの導入手順に比べれば、デスクとアップアプリのインストールウィザードは操作が煩雑であり、インストールの可否はユーザーに委ねられている状態だ。この観点から見れば、本設定でデスクトップアプリのインストールを抑制することは、さらなるセキュリティの改善につながるだろう。

「iTunes for Windows」用セットアッププログラムのプロパティダイアログ。デジタル署名を付与することで、プログラムの安全性を保持している

次はデメリット。過去の資産が活用できないのは、長年の歴史を持つWindowsとしては致命的だ。ただし最近のMicrosoftは以前のように後方互換性を最重視しているとは言いがたく、アジャイル開発の主流化やスマートフォン向けOSの台頭など、Windowsを取り巻く環境を踏まえると、同社が"UWP推し"なのも理解できる。Windowsストア経由でアプリケーションを公開し、更新も容易である点や、開発者次第ながらもWindows 10 MobileやMicrosoft HoloLensなどへの展開も期待できるのは大きい。

ただ、以前の記事でも述べたように、本設定が加わろうとも多くのユーザーがWindowsを選択する理由の1つは "アプリケーション選択肢の多さ" のはず。この点においても「笛吹けども踊らず」と述べるほかはない。あくまでも1個人の意見だが、日常的に利用するツールの多くがUWP化すれば、OS再セットアップ時の負担も大幅に軽減されるため歓迎したい。だが、現時点で長年使い続けてきた画像ビューアーやテキストエディターに優るUWPアプリケーションは見当たらないのである。

卵が先か、鶏が先かではないが、多くのソフトウェア開発者がUWPを選択し、素晴らしソフトウェアを書き上げるのが先か、開発者の努力が叶うのような市場としてWindowsストアが成長するのが先か。現時点で多くのWindowsユーザーが幸せになる答えは見当たらない。

阿久津良和(Cactus)