【レポート】

丸井グループの"イクメン"は意外と普通のパパだった - 田中俊之の職場訪問

2013年度、子が1歳になるまで最大7日間、有給で取得できる短期育児休職制度を導入した丸井グループ。2015年度は、育休取得率も65.5%となり、厚生労働省の「イクメン企業アワード2016」グランプリに選ばれた。そんな企業で働くパパに悩みはあるのだろうか、そして、育児休暇を取って思ったことは?

男性のつらさについて研究する「男性学」の第一人者、武蔵大学の田中俊之 助教が職場を訪問し、パパ社員たちに尋ねてみた。

左から、山田圭さん、金子真吾さん、石毛良樹さん、田中俊之 助教

「妻はスーパーウーマン」と知った育休

田中: この中で、育児休職制度を利用した方は?


石毛: 3年前、土日も含めて連続して4日間、育児のために休みました。私には娘が3人いるのですが、一番下の子が、生後3カ月の頃です。


石毛良樹さん(37)
10歳、8歳、3歳の女の子のパパ。商空間のプロデュースを手がける部署で営業を担当している。パート勤務の奥様とは、今年で結婚11年目。
田中: どうして取ろうと思われたのですか?


石毛: 正直にお話しすると、自分が育児休暇を取るという発想もなかったですし、社内に制度があることすら知らなかったのですが、会社の中で制度を紹介する研修があって、「これはいいな」と。


田中俊之さん: 武蔵大学社会学部助教。社会学・男性学を主な研究分野とし、男性がゆえの生きづらさについてメディア等で発信している。自身も1歳児の子どもを持つ育児中のパパ。単著に『男性学の新展』『男がつらいよ』『男が働かない、いいじゃないか! 』、共著に『不自由な男たち その生きづらさは、どこから来るのか』などがある

石毛: 本当は7日間丸々取りたかったのですが、急きょ取ることを決めたので、自分の仕事とのバランスも考えて、4日間にしました。


田中: 職場での調整は大変でしたか?


石毛: 一切大変ではなかったですね。もともと休みをしっかり取ることのできる会社なので、恵まれていると思っています。所属長に育休を取りたいと伝えると「いいね、取っちゃいなよ!」という感じでしたし、職場には、理解のある人が多いですね。


田中: お休みは、どのような感じで過ごしたのですか?


石毛: いつも妻がしていることを、やらせてもらおうと思って、私の普段の出勤時間から帰宅時間までの間、妻には外出してもらいました。0歳児の娘と家で2人きりの生活です。これはまだ楽だったのですが……当時小学校と保育園に通っていた上の子2人が家に帰ってくるとそうもいかず……あえなく3日目でギブアップ。楽しかったのですが疲れてしまって、4日目からは妻に助けてもらいましたね(汗)。


0歳児と2人の生活はまだよかったものの……。たくさんの子どもたちを一度にみることの大変さを知ったという石毛さん

田中: 貴重な経験ですよね。


石毛: 妻の偉大さに気づきましたね。パートで短時間とはいえ仕事をしていて、保育園の役員の委員長もやっていて、子どもを第一に考えて生活をしていて……スーパーウーマンだな、と思いました。


代わりがいるから、普通に休める

田中: 他の方はいかがですか?


山田: 制度を利用したわけではないのですが、上の子が生まれてから、5日間くらい休んだと思います。子どもが入院するような事情があったので。


山田圭さん(44)
6歳、8歳の子どもを育てるパパ。小売業で店のプロデュースに関わる仕事をしている。奥様も丸井グループで短時間勤務をしている。
山田: 小売業ということもあって、当社では、社員が一斉に同じ期間に休むというよりも、交代で公休を取っています。常に誰かが公休という状況が普通なので、他の人がケアしあえる土壌ができていて、休みやすいかもしれないです。


田中: なるほど。小売業ならではの勤務態勢が、いい影響を及ぼしているんですね。他の業界でも、お盆や正月にばかり休むのではなくて、こういう仕組みを作ってもいいですよね。


金子: 私も子どもが生まれた当時は、社内でも比較的忙しいと言われる部署にいたのですが、出産休暇をいただきました。妻は新潟県に里帰りをしていた上、出産も予定日より1週間早かったので、急きょ、休暇を取ることになったのですが、チームの皆さんのご協力のおかげで、休むことができました。


金子真吾さん(40)
3歳児のパパ。人事部で人事評価制度や地域限定勤務制度の制度設計を担当している。奥様も丸井グループで短時間勤務をしている。
金子: 当社はチームで仕事をするという意識が強いですね。自分の仕事が終わらない・できない部分があれば、赤裸々にオープンにして、「お願いします」とメンバーに頼めるし、自分ができるときは、メンバーをサポートするという体制ができていると思います。


田中: 個人で生産性を上げるというよりは、チームで生産性を上げるということですね。


金子: 短期間で部署を異動することが多い会社なので、「自分でしかできない仕事」は、実はそれほど多くないかもしれません。個人にひもづいてしまう仕事というのは、意外に無いように思います。


田中: 「代わりがいる」と思えることは、本当に大事なことですよね。


妻の"働きやすい職場"に助けられてはいるけれど……

田中: みなさん、あまりお悩みがないように思うのですが……夫婦で子育てする上で、大変だと思うことはありますか?


金子: 私が大変だなと思っているのは、両親からのサポートが得られないことです。妻も同じ会社で働いているのですが、保育園がお休みになる祝日がどちらも勤務日になっているので、私か妻が、会社を休まなければなりません。押し問答があるというわけではないのですが……どちらが休むのか決めるときは、いつも気をもみますね。


子どもの都合でどちらかが休まなければならないとき、気をもんでしまうと話す金子さん

山田: 私の場合は、妻のご両親が近くに住んでいるので、夫婦共に勤務日となる土曜日は、助けてもらっていますね。ただ子どもが急病の時は、どうしても妻にしわ寄せがいってしまいます。気持ちとしては休みたいのですが、私の職場では、どうしても突発で休むということが難しいので……。申し訳ないなという気持ちはすごくあります。


金子: 妻の職場が、短時間勤務の人が多く、日常的にお休みをサポートしあっているので、妻に休んでもらうことが多いですね。ただ、ギブアンドテイクすべきだなと、反省することはあります。


山田: 口には出さないのですが、「あなたも休んでよ」という思いが、妻にはあるはずです。大きなケンカをした時、節々にそういう話題が出てくるので、抱えてはいるのだろうなと……。


田中: 奥さまに負担が偏ってしまっているのではないかという思いは、あるということですよね。


家庭生活にウエートを置いた上で、仕事をする

田中: 奥さまが短時間勤務だったり、パート勤務だったりすると、「父親である自分が経済的に家族を支えていかなくてはならない」という、プレッシャーは感じませんか?


山田: 私の意識としては、「2人でほそぼそとやっていくか(笑)」という感じですね。家庭を犠牲にしてまで、仕事をバリバリやっていくのかと問われると、躊躇してしまいます。独身の時は、もっと会社の中で地位を確立して、もっと稼ぎたいと思っていましたが、結婚して子どもができてからは、きちんと仕事をこなしつつも、家庭にもウエートを置くというスタンスに変わりました。


きちんと仕事をしつつも、家庭にもウエートを置いているという山田さん

石毛: 私も、生きるために、家族と楽しく過ごすために仕事をしているので、プライベートを削ってでも仕事をするというスタイルは、もともと考えていません。


田中: 山田さんも石毛さんも、共通しているのが、仕事より家族との生活を大切にしているという点ですね。「仕事も育児もがんばる」と気負うのではなく、どちらが自分にとって大事なのか見極めると、少し楽になれるかもしれません。


山田: 子どもが成長していくのが、年を追うごとに楽しいのですよね。最近では、子ども自身の個人の意思がすごく出てきて、会話をしていると、自分が思っても見ないような反応が返ってくることがあって……そういう時に、成長を感じます。


金子: 私の場合は妻も上昇志向があるほうなので、私が主で稼いでいくというよりも、世帯収入をサポートしあっているという感じですね。


話題は最近のイクメン像に……

田中: みなさんすごく、普通のパパですよね。生産性を上げることで、長時間労働をしていた時と同じ仕事をこなし、子育てもしているという、完璧なイクメン像が世にはびこっていると思うのですが、現実に子育てをしているパパたちとこうしてお会いすると、かなりギャップがあるなと感じます。現実とは異なったイクメン像というのが、1人歩きしているなと。


山田: イクメンという言葉がフォーカスされていますが、イクメンを意識しているわけでは全く無くて、夫婦で協力し合う中で今の形ができたという感じです。イクメンだからがんばらないと、というのは、全くありません。


石毛: 今のイクメン像って、抱っこひもで子どもを抱えて自転車乗って会社に行き、パソコンを開いている、というイメージですよね。でも現実は、全然そんなこと無いです。私の代わりなんて会社にはたくさんいますが、家族にとっては、私の代わりはいない。だから、できることをするだけです。


山田: 私の場合は、子どもが寝る前までには、必ず帰って必ず子どもと会話するというのを最低限の目標にしています。


田中: 定時で帰れるだけで、家でやれることは、たくさんあると思います。


石毛: 決められた時間内に決められた仕事をするべきであって、残業をすることは、格好悪いと思っています。


金子: 当社では19時が終業時間なのですが、その時間になると、エレベーターに乗りきらないくらい、人がいますよ。定時に帰る文化は、だんだんと根付いてきている気がします。


田中: 定時って「帰っていい時間」のはずですからね。定時が定時として機能することが、まずは大切だという気がしますね。


丸井グループが自慢したい、パパ向け子育て支援制度

【短期育児休職制度】
2013年度から、子が1歳になるまで最大7日間、有給で取得できる短期育児休職制度を導入。「男性の育休取得率」をKPIとして設定していて、2015年度には取得率が65.5%にものぼった。
【エリア限定制度】
育児を理由として、一時的に勤務エリアを限定した働き方に変更できる。男性の利用もあり。
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