2016年11月17日(米国時間)、MicrosoftはWindows 10 Insider Preview ビルド14971を、ファーストリングを選択したPC向けにリリースした。Microsoft EdgeはEPUBリーダーとして動作するようになり、日本語および中国語用IMEの機能を向上させている。
Windows Holographic Shellへ向けて本格始動
Windows 10 Insider Preview ビルド14971上のMicrosoft Edge(バージョンは39.14971.1000.0/EdgeHTML 15.14971)は、EPUB形式に対応した。もちろん拡張機能などは必要ない。当初からPDF形式をサポートするなど、Webブラウザーにとどまらずメディアリーダーとしての能力を備えるMicrosoft Edgeだが、EPUBをサポートするとは思わなかった。ただし、対応しているのは非DRM(デジタル著作権管理)のEPUBであり、独自のDRMをコンテンツに適用しているEPUBは開けないという。
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Feedbooksで公開している「The Happy Prince and Other Tales(Oscar Wilde著)」をダウンロードすると、そのままEPUBファイルが開く |
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日本語表示を確認するため「EPUB 3とは何か?(Matt Garrish著、高瀬拓史訳)」をダウンロードしてみたが、ご覧のとおり問題はない |
何もないところをクリックすると現れるバーからは、目次参照やブックマーク、検索といったアクションに加えて、フォント設定が可能だ。ライト/セピア/ダークという3つのテーマやフォント、そしてフォントサイズを切り換えられるため、リーダー環境としては標準的なレベルに達している。お手持ちの環境に利用できるEPUBファイルが見当たらない読者諸氏は、Microsoftが公開している無償の電子書籍「Microsoft eBooks」を試してみることをお薦めしたい。
Microsoft Windows and Devices GroupソフトウェアエンジニアのDona Sarkar氏は、本ビルドから「Paint 3D Preview」がWindows 10に含まれると説明している。肝心のコミュニティサイトである「Remix3D.com」にアクセスできる国は、新たにドイツなどを加えた14カ国に拡大したが、日本は変わらず対象外。まずは気軽に3Dコンテンツを楽しめるように早期の対応を期待したい。
[Win]+[X]キーで開くクイックアクセスメニューだが、日本語化が正しく行われたものの、コントロールパネルを呼び出す[P]キーは完全廃止。<設定(N)>に置き換わった。Microsoftはコントロールパネルから「設定」へ設定項目を順次移動させていくと以前から述べているため、予定どおりだが、いまだコントロールパネル経由で設定する場面があるのも事実である。その際は[Win]+[R]キーを押すと起動する「ファイル名を指定して実行」のテキストボックスか、エクスプローラーのアドレスバーに「control」と入力して[Enter]キーを押せば、コントロールパネルが起動するため、代替法として身に付けておくと便利だ。
本ビルドにおける我々日本人に大きな改善点が、日本語および中国語IMEの改良である。日本マイクロソフトは日本語MS-IMEの改善に向けて、SNS上で「Windows 10 日本語入力誤変換マラソン」を開催するなど、さまざまな角度からアプローチしてきた。その成果としてOSビルド14971に加わったのが、「変換精度の改善」と「リソース使用状況の改善」。前者は予測変換や単語の分割時に発生していたUX(ユーザー体験)を改善し、後者はMS-IMEを長時間使用した後にグラフィック関連の不具合が発生する問題を修正したという。なお、中国語IMEは辞書ファイルが破損した際にコンポーネントがクラッシュする問題を修正している。
ちなみにUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリケーション「Officeを入手する」はバージョン2.0(内部バージョンは17.7614.2377.0)に更新された。WordやExcelの起動や既存ドキュメントの参照性を高めるなど、いくつかの機能が加わっている。単なる広告として評判の悪かったアプリケーションだけに今回の改善はOffice 365 Soloを契約している利用者には大きな改善といえるだろう。
OSビルド14971の改善点・既知の問題
ここからはPC版の修正内容と既知の問題を紹介する。まずは修正箇所から。
- OSビルド14926の「Microsoft Edge」で加わったスヌーズ機能だが、収集データとフィードバックに基づいて、1度機能を削除した。将来のリリースに向けて機能を再評価することとした。
- 「スケッチパッド」上の定規および分度器を使用した際の信頼性を向上させた。
- 「ネットワークドライブの割り当て」などが利用するデスクトップウィザードは、異なるディスプレイ上で移動した際のサイズ変更が正しく行われる。
- 「拡大鏡」のキーボードショートカットキーがロック画面で動作しない問題を修正した。
- 「ディスククリーンアップ」使用時に、「Windows.old」フォルダーを完全に削除できない問題を修正した。
- 「Outlookメール」上でYahoo!メールアカウントのOAuth認証をサポートした。これにより、アカウント同期の信頼性向上とセキュリティが強化される。
- 「デバイスマネージャー」で特定のダイアログボックスを開いた状態で、PCのシャットダウンを実行すると、「再起動中」の画面で停止する問題を修正した。
- 「Microsoft Edge」でミドルボタンを利用して複数のタブを閉じようとすると、タブ幅が変更し、意図しないタブを閉じてしまう問題を修正した。
- 「Microsoft Edge」でリンクを右クリックすると現れるコンテキストメニューで<リンクをコピー>が正しく動作しない問題を修正した。
- 「Microsoft Edge」でウィンドウサイズを変更し、最後のタブを閉じてアプリケーションを終了させると、次回起動時にサイズが既定値に戻る問題を修正した。
- 「Microsoft Edge」でピン留めしたタブが復元されない問題を修正した。
- 複数のフォントをインストールする際に現れるダイアログや、「設定」の<システム/バッテリー>など一部の箇所で中国語が正しく翻訳されていない問題を修正した。
- 「アクションセンター」に既存の通知を展開する際、シェブロン(山形紋)をクリックすると終了してしまう問題を修正した。
- 再起動後にスタートメニューの幅が保存されない問題を修正した。
次はPC版で確認された既知の問題を紹介する。
- 「設定」の<システム/バッテリー>を開くと、「設定」がクラッシュする。
- ディスプレイの明るさを調整するホットキーを押しても期待どおりに動作しない。「アクションセンター」もしくは「設定」の<システム/ディスプレイ>を使用する。
- 「ストア」「フォト」「People」などのアプリケーションは、PCが一定時間待機状態になると単独で起動することがある。この問題を回避するには、アプリケーションの最大化を解除してから終了する。
- Excelワークシートファイルを関連付けから起動すると、エクスプローラーがクラッシュする問題を確認済み。これを回避するにはExcelからファイルを選択する。
- Microsoft Studioのゲーム(マインスイーパーなど)が起動時のスプラッシュ画面でフリーズする問題を確認している。
- Windows 10 Creators Updateに含まれる予定の「Windows Holographic Shell」実現に向けて、本ビルドから「Windows Holographic First Run」を加えた。ただし、任意のハードウェアを検出しない問題を確認している。
早速筆者も「Windows Holographic First Run」を試したところ、システム要件を満たしているかチェックするウィザードで、USB 3.0ポートが検出できなかった。Windows 10 Creators Updateリリース時は、OEMパートナーから安価なヘッドマウントディスプレイが300ドル程度で販売されるという。Windows Holographic Shellと組み合わせることで、どのようなUXを生み出すのか予見できないが、今後も興味深くWindows 10の動向を注視し、読者諸氏にご報告したい。
阿久津良和(Cactus)
■前回の記事はこちら ・Windows 10 Insider Previewを試す(第73回) - 新機能は見送られたOSビルド14965登場 http://news.mynavi.jp/articles/2016/11/11/windows10/ ■バックナンバー 一覧へのリンク http://news.mynavi.jp/tag/0021413/ |
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