先週、都内某所でWindows 10に関する勉強会が開催された。登壇者は、とある日本マイクロソフトの "中の人"。Windows 10 Anniversary Update (バージョン1607) で強化された法人向け機能の紹介と、BUW (Bash on Ubuntu on Windows) はどこまで使えるか、というテーマでさまざまな内容が語られた。
セッションの中身は法人をターゲットとしているため、Windows Hello for Businessによるセキュア化や、特定のコンパニオンデバイスと連携したロック解除、Auto Connect VPN、ロックダウンVPNなどの機能が披露された。
興味深いのが、Windows 10のリリースライフサイクルである。WaaS (Windows as a Service) 化したWindows 10は、新機能を順次追加する形に生まれ変わった。Microsoftは、CB (Current Branch) へ更新プログラムなどを適用したCBB (Current Branch for Business)をCBの4カ月後にリリースし、そのタイミングで2世代前の大型アップデートのサポートを終了させる方針を明確にしている。下図は、筆者が勉強会で見たスライドをもとに作成したものだが、CBBをリリースするタイミングは一定ではない。この辺りは、WaaS戦略の不明確さや法人展開の結果に応じて調整を必要とするためだろう。
もう一つ注目したいのが、P2P配信の最適化である。Windows 10の更新プログラム提供方法は、共通のLANもしくはインターネット上にある他のPCから取得する仕組みだ。しかし、その効果は目に見えないため、有効にすべきか、無効にすべきか判断に迷うところだ。"中の人" は筆者に一つの公式ブログ記事を紹介してくれた。
この記事によればWindows 10 バージョン1607は、ネットワーク内に配信最適化サービスを発見すると、Windows Update経由の更新やWSUS (Windows Server Update Services) 経由による更新プログラムの部品取得を行う。MicrosoftはP2Pを利用することで、ネットワークトラフィックの負荷軽減を実現すると説明しているが、エンドユーザーとしては更新プログラムが保証されているか不安を覚えることだろう。だが、"中の人" の説明を聞く限り、ひとまずその心配は不要だ。
こちらも勉強会で示されたスライドを参考に筆者が作成したイラストだが、クライアントAは最初にWindows Update上の情報を確認し、新たな更新プログラムがある場合はWindows Updateへダウンロードの要求を試みる。その際、コンテンツサーバーやクライアントBなど他のPCが更新プログラムデータを保持している場合、その情報をクライアントAに返し、クライアントAはクライアントBなど各コンピューターへ要求を発して、配信可能な場合は各コンピューターが更新プログラムの部品をクライアントAに送信する。受信したクライアントAは更新プログラム (部品) のハッシュ情報を確認し、そのハッシュ値が一致しない場合は破棄。さらにWindows Updateから取得した更新プログラム (全体) のハッシュ値を確認して、正しい場合はインストールを実行する。
ただし、どのようなコンピューターでもP2P配信による恩恵を受けられる訳ではない。4GB以上のメモリーと256GB以上のストレージ空き容量が必要だ。これらの条件を満たさない場合は、Windows UpdateもしくはWSUSから更新プログラムをダウンロードする。また、現時点でP2P配信は累積的な更新プログラムをはじめとするサイズの大きいファイルを配信する際に限っているとのことだ。
阿久津良和(Cactus)