脳梗塞のひとつ・ラクナ梗塞の画像。白い部分は脳組織が壊死(細胞が死ぬこと)してしまっている(画像は高島平中央総合病院の提供)

脳の血管が詰まることで脳組織の一部が壊死(えし: 死んでしまうこと)する脳梗塞。「脳梗塞は時間との闘い」とも言われ、発症後は1分1秒でも早く病院へと搬送し、発症後の時間を鑑みて「血栓溶解療法」などの最適な治療を施すことになる。

運よく一命を取りとめたとしても、患者の多くは脳梗塞の後遺症に悩まされる。後遺症にもいくつかの種類があり、これらの内容をしっかりと把握しておかないと、家族や友人らと無用な軋轢(あつれき)を生んでしまう可能性もある。

今回は、高島平中央総合病院脳神経外科部長の福島崇夫医師に、脳梗塞の後遺症について伺った。

日常生活に影響をおよぼしやすい神経障害

脳梗塞の後遺症の種類は「神経障害」「心的障害」「高次機能障害」に大別できる。血管が詰まり脳に血液が十分に供給されなかったため、「手を動かす」「記憶する」といった機能が失われてしまうのが後遺症の仕組みだ。これらの障害を一つひとつ見ていこう。

神経障害

脳梗塞の後遺症として広く認知されているであろう神経障害では、以下のような後遺症が出る。

■運動障害……「体の左右どちらかがまひして動かしづらい(半身麻痺)」「細かな手作業がしづらい」「うまく発声できない」など
■感覚障害……「痛みの感覚や、熱い・冷たいと感じる感覚がにぶる」など
■視覚障害……「物が2重に見える」「左右の視野が欠ける」など
■嚥下(えんげ)障害……「食べ物・飲み物がうまく飲み込めない」など

下半身がまひすれば、歩行時につえや歩行器が必要になったり、筋力を補うための装具を装着しなければいけなくなったりする。視野の一部が欠けてしまえば、屋外で予期せぬアクシデントに遭遇する確率も高まる。手がうまく動かせなければ、ボタンのかけはずしといったちょっとした行動が難儀になる。このように、神経障害によってさまざまなシーンで不便を感じることとなる。

そのため、福島医師は「日常生活に最も影響をおよぼしやすいのは、この神経障害ではないでしょうか」と推測する。

心的障害

心的障害では次のような後遺症が出る。

■活力低下……「気力がわかない」「人と会うのがおっくうになる」など
■人格の変化……「ささいなことで泣いたり笑ったりし、感情の起伏が激しくなる」など
■夜間譫妄(せんもう)……「夜になると幻覚や幻聴に悩まされる」「興奮状態に陥る」など

肉体面だけではなく、精神面にも影響をおよぼす脳梗塞。心の部分のケアは、身体面のケアよりも難しくなる可能性も秘めている。