【レポート】

CES 2016と「4K録画禁止騒動」から見る、映像ビジネスの行方 (前編) - 西田宗千佳の家電ニュース「四景八景」

 

今年もラスベガスに飛び、世界最大の家電ショーであるCESを取材してきた。今年は焦点が絞りづらい状況だったが、ことAVという観点でいえば、「4K」と「HDR」が主軸であったのは間違いない。

AVに興味がある方なら、4KもHDRも、もうよくご存知かと思う。4Kによって解像度が上がり、細かい部分まで見えるようになってリアリティが上がった。さらにHDRによって、光のコントラスト表現が高まる。明るい部分・暗い部分の表現の幅が広がることにより、色の表現力も豊かになち、やはりリアリティが上がる。

日本では、2015年半ばから「4K+HDR」対応のテレビも登場しているが、その真価がわかるコンテンツが出てくるのは、2016年に入ったこれからだ。

「ネット配信も味方」にして実現したUHD BD

まずお目見えするのは、いわゆる「4K対応ブルーレイ」となる、Ultra HD Blu-ray (UHD BD)のソフトウエアだ。日本ではパナソニックがUHD BD再生対応レコーダー「DMR-UBZ1」を発売済みだが、海外では対応プレーヤーの発売はこれから。ソフトは日本でもまだ出ていないのだが、3月頃から全世界で発売されはじめる。100タイトル以上が同時期に発売になるという。ブルーレイは「青」がパッケージのイメージ色だったが、UHD BDでは「黒」になる。

UHD BDのパッケージ。黒いケースと「4K」「Ultra HD」のロゴが目印

UHD BDは圧倒的に高画質だが、問題がひとつある。

全世界的に見れば、ディスクメディアのビジネスは退潮傾向だ、ということだ。CES取材のついでに、アメリカの家電量販店も毎年のぞいているが、ここ数年、どんどん映像ディスク売り場が減っている。なぜなら、ネット経由のビデオ・オン・デマンドの利用が、その分増えているからだ。

今年のCESでは、基調講演を「Netflix」が務めた。定額制映像配信サービス最大手のNetflixは、日本でも昨年9月にサービスを開始したが、CESでは130カ国で一挙にサービスを開始すると発表し、累計196カ国でサービスを運営することになった。Netflixのリード・ヘイスティングスCEOは、同社を「グローバル・インターネットTVサービスである」と宣言。ケーブルTVや放送の次の世代である、と基調講演で語った。実際その通りで、Netflixは4Kコンテンツの提供において、放送やディスクに先行している。

CESで基調講演を担当した、Netflixのリード・ヘイスティングスCEO。同社の勢いは今が最高潮だ

そのことは、UHD BDとテレビを作る家電メーカーの側もわかっている。もはや、映像配信サービスを無視しては成り立たない。

そこで昨年設立されたのが「UHD Alliance」(UHDA)だ。UHDAは家電メーカーと映画会社に加え、NetflixやAmazonといった、映像配信事業者も名を連ねている。4K+HDRコンテンツの制作について、ネット配信とディスクで共同歩調をとり、映像制作側が「二度手間」にならないように配慮する、という狙いがあった。

CESではUHDAもプレスイベントを開催、4K+HDRを再現できる製品に付与する「UHD Premium」ロゴをアピールした

もうちょっと正確にいえば、UHD BDというディスクメディアから見れば、「ネット配信と協調する仕組みを作らないと死活問題につながる」という事情もある。ただでさえディスクメディアが衰退している中で、高画質ディスクを作ってくれ、といっても、映画会社はなかなか乗ってこない。

その状況をひっくり返せるのが、ネット配信との連携だ。NetflixやAmazonは、4K+HDRのコンテンツを求めている。彼らは相応のコストを払ってくれるし、見られた回数に応じた収入も得られる。まずはネット配信でコンテンツの制作費などが回収できるため、映画会社としては4K+HDRへの投資にも前向きになれる……ということだ。そこからさらに転用する形でUHD BDが作れれば、ディスクビジネス退潮の今でもビジネスが回る、という考え方なのだ。

配信さえあればディスクはいらない、とは限らない。Netflixの4K配信の画質は、15Mbpsから20Mbps程度。2Kより良好なものにはなっているが、4K映像が持つ本来のポテンシャルを再現できるわけではない。また、4K+HDRのコンテンツでも同じ程度の帯域で済まそうとしているので、画質面での不安を語る関係者は少なくない。UHD BDの場合、ビットレートは最大100Mbpsになり、HDR分を入れても十分なクオリティになる。また、買った人はいつまででも見られる。

映像を「いつでも好きな時に最高画質で観る」文化を残しつつ、それがビジネスとして回るように配慮したのが、UHDAの狙いである。4K+HDRは「プレミアムな画質を求める人」向けに販売されていくが、そうした人々が大切にするものを残すには、手軽さとうまく折り合いをつける必要がある。

4K+HDRは、10年前に起きた「テレビのデジタル化」「薄型化」に比べれば小さな波しか起こせない可能性がある。だとしても、そのなかで最高画質のものを得るための仕組みが、ようやく見えてきた、というところだろうか。

続く後編では、「4K録画禁止騒動」について解説する。

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