「女性不妊」の原因と治療法は?

晩婚化や出産年齢の高齢化を背景に、メディアでも日常会話の中でも「不妊治療」という言葉が話題になることが多くなった昨今、6組に1組が不妊カップルといわれています。あなたの周囲にも、きっと何人かは不妊治療を考えている人や経験者がいるはずです。

不妊は、どんな年代の女性にも起こり得ること。ただ、ひとくちに「不妊」と言っても、さまざまなケースがあります。出産年齢のリミットがあるからこそ、必要が生じたときになるべく早く適切な行動を起こせるよう、幅広い可能性を視野に入れておきましょう。今回は、女性側に不妊の原因がある「女性不妊」について解説していきます。

「女性不妊」の原因は?

女性特有の不妊原因として多いのは、以下のようなものです。

・排卵障害
排卵障害とは、妊娠には不可欠な「排卵」がちゃんと起こらないこと。原因は多岐にわたりますが、加齢やストレス、ダイエットのしすぎがホルモンバランスに影響して排卵障害を引き起こしていることもあります。また、卵胞の発育に時間がかかることで排卵しづらくなる「多嚢(のう)胞性卵巣症候群」や、排卵を抑制する働きを持つプロラクチンというホルモンの分泌が増える「高プロラクチン血症」、40歳未満で卵巣の機能が低下してしまう「早発卵巣不全」といった病気の可能性も考えられます。

・卵管障害
卵管は卵巣と卵子をつないでいる器官ですが、ここに閉塞(へいそく)や癒着などの障害があると、卵子や精子が通れず、受精も妊娠もできません。卵管障害を引き起こす原因には、性感染症のクラミジア感染症による卵管炎や、子宮内膜症などがあります。

・子宮因子
子宮筋腫、子宮内膜ポリープといった子宮にできる病気が、受精卵の着床を妨げ、不妊の原因となっている場合もあります。

・頸(けい)管因子
通常、排卵期になると、子宮頸管(子宮の入り口部分の管)から出る粘液(頸管粘液)の量がぐっと増え、粘液の質もサラサラになり、精子が子宮内や卵管へと移動しやすい状態になります。この頸管粘液に量や状態の異常があったり、子宮頸管内に腫瘍や炎症などがあったりする場合は妊娠が難しくなります。

上記のほか、比較的まれではありますが、何らかの免疫異常で精子に抗体を持っている女性や、妊娠はするのに流産を繰り返してしまう「不育症」の女性もいます。また、検査をしても原因がわからないケースも少なくありません。体や精神の問題から、セックスがうまくできない性交障害が原因になることもあります。

不妊治療の進め方

不妊治療と言うと、体外受精や顕微授精といった最近話題の生殖補助医療(ART)を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、専門の医療機関を受診しても、いきなりこうした高度な治療に進むわけではありません。 通常の不妊治療では、タイミング法の指導、排卵誘発法、人工授精、それでも難しければ体外受精を検討する……というように、段階を踏んで進められます。不妊の原因によって必要な治療は異なるため、実際に受ける治療の内容や順番は、人によってさまざま。治療を始めてすぐに赤ちゃんを授かる人がいる一方で、妊娠までの道のりが長く、最終的に満足できる結果が得られない人もいます。

そう聞くと、まだ結婚・出産を経ていない若い女性は「将来、不妊になってしまったら……」と不安になると思いますが、そんな不安を最小限に減らせる方法もあります。それは、10代や20代のうちから定期的に婦人科で検診を受けておくこと。もし病気や異常が見つかっても、早めに治療することで将来の妊娠の可能性を高めることができますし、自分の体調を把握し、「妊娠しやすい体」を意識することができるのも大きなメリットです。

※画像は本文と関係ありません

記事監修: 善方裕美 医師

日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。

主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など