江戸川区は都内でも比較的銭湯の多い"銭湯激戦区"。対外PRにも積極的で、「お湯の富士」という富士山と関取をモチーフにしたかわいらしいマスコットキャラクターを旗頭に、区内銭湯のスタンプラリーを定期的に行っているほどだ。

今回紹介するのはそんな江戸川区に位置する、都営新宿線船堀駅徒歩6分の「鶴の湯」。創業はなんと江戸時代までさかのぼる老舗銭湯だが、2002年にリニューアルされた。外観からは破風屋根が残る以外昔の面影はなく、現代風の銭湯に様変わりしている。

「鶴の湯」の創業は江戸時代だが、2002年にリニューアルされた

自家製の甘納豆も販売

下足ロッカーからフロントへ。入り口の手前には英語で書かれた案内板もあった。外国人の客も多いのだろうか。ロビーにはテレビとソファ、ドリンクケースなどひと通りそろっており、雑誌のほかに絵本もある。自家製の甘納豆を販売しているのもユニークなポイント。男湯は右、女湯は左の脱衣所に進む。

脱衣所は広く、掃除が行き届いており清潔感がある。ロッカーは計3面分。角型の脱衣カゴも備えられている。そのほかに体重計やマッサージチェア、自動販売機と低めの鏡台。これといった飾り気はないシンプルな脱衣所だが、つくりそのものは昔ながらのようで、高い天井は特徴だ。

編み笠をかぶって露天岩風呂につかる

男湯のイメージ(S=シャワー)

訪問したのが休日夕方とあってか、浴室内はたくさんの客であふれている。カランは計21基と特段少ないわけではないが、座る場所が見つからないほどだ。銭湯全盛期の頃は洗面器を持って順番待ちをしたと言うが、まさにそのような光景だった。

浴槽は大きく分けて3つ。ジェットバスのある白湯、黒湯天然温泉で電気風呂を併設した少し熱めの湯、そして同じく黒湯源泉100%かけ流しの露天風呂だ。都内の天然温泉では定番の黒湯だが、こちらの湯は"醤油"というよりも"烏龍茶"くらいの色で、透明度はやや高い。サウナ(別料金)の脇にはこの源泉をそのまま使った水風呂もあり、温冷浴で黒湯三昧が楽しめる。

目玉の露天風呂は岩風呂風で、屋根のない正真正銘の露天。日中は青い空、夜は星空を見ながら湯につかるのは格別だ。さらにこちらには編み笠が準備されている。これをかぶれば小雨がぱらつく空模様でも安心、ということだろうか。あまりにも風流すぎて、少し勇気がいるかもしれないが……。

船堀駅徒歩圏内には、ほかにも「あけぼの湯」、「乙女湯」がある。どちらも個性的で、設備の充実した人気銭湯なので機会があればぜひチャレンジしてみてほしい。

※記事中の情報は2015年2月時点のもの。イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。