東京都内にも温泉があるのをご存知だろうか。その温泉は「黒湯」と呼ばれ、その名の通り、まるで醤油のように真っ黒なのが特徴。アルカリ性で肌がすべすべになることでも人気が高く、都内最多の銭湯数を誇る大田区によく見られる。今回紹介するのは大田区の「照の湯」。こちらも黒湯で人気の高い銭湯のひとつだ。

「照の湯」は最寄りが京急線なので、羽田空港からもアクセスしやすい

多摩川でランニング後に"ひとっぷろ"も

照の湯は、京浜急行電鉄「雑色駅」と「六郷土手駅」のちょうど中間にある。この近辺は多摩川ランニングコースとしても知られており、ランナーの汗を流すのにも良い。マンション1階部分のいわゆる"ビル銭湯"で、自動ドアをくぐるとフロントとソファ、テレビ、マンガ本などが置かれた、ちょっとしたロビースペースがある。男湯は左、女湯は右である。

脱衣所はシンプルで、これといった特徴は少ない。ロッカーは2面、中央にはローテーブルとイスがあり一休みできる。ほか、洗面台、体重計、自動販売機、小さいマッサージチェアなど。昔ながらの木製の身長計が置かれているのもユニークだ。

目玉の黒湯は露天風呂で堪能

男湯のイメージ

浴室はというと、中央に浴槽があり、その周囲をカランが取り囲むというレイアウトになっている。関西などではよく見かけるが、東京では珍しいスタイルだ。カラン前にはイスのかわりに磨かれた石柱が設置されているのも変わっている。正面の壁には、故・早川利光氏が描いた西伊豆からの富士山が残っている。状態も比較的良好で、よく見るとペンキで描かれた道の上にはミニカーが、海の上には魚のおもちゃが貼り付けられており、遊び心を感じる。

檜風呂は「古代檜」といい、海抜2,000mに自生し、樹齢千年を越える貴重な木材を使用しているらしく、森林浴効果が高いとか。薬風呂、ジェットバス、そして目玉の黒湯は露天風呂になっている。雨よけのため残念ながら空は見えないが、涼しい外気と温かいお湯で、ついつい長湯してしまう。

湯の温度は概ねややぬるく、体感では40~41度程度かと思われる。浴槽の底は丸石タイルが敷かれており、程よいマッサージ効果も。黒湯に入った後は白湯につかる前に、湯が濁らないよう、一度、身体を流すのを忘れずに。また、大田区名物のひとつ、無料サウナもあるのもうれしい(一部店舗は除く)。さらになんと、水風呂も「冷鉱泉」。真っ黒な水で火照った身体を冷まそう。

照の湯ではやはり、週末の朝湯を体験していただきたい。明るいうちから少しぬるめの湯をゆっくり楽しみ、一週間の疲れを癒やす。きっと充実した休日になることと思う。

※記事中の情報は2015年1月時点の男湯のもの。イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。