前回の原稿で、iCloudフォトライブラリを理解するための6つのポイントについてまとめた。今回は同じく新しいiCloudの機能である「iCloud Drive」についてだ。iCloud Driveは、その名の通り、iCloudに保存されているアプリなどで作成した書類を、通常のクラウドサービスのように扱えるようにする仕組みだ。
iPhoneやiPadで作成したファイルをMacやPCから取り出したり、MacやPCからアプリに対して、iCloudを介してファイルを取り込むことができるようになる。
こう説明すると、一般的なクラウドサービスでは「当たり前のこと」のように聞こえる。しかし、iCloudではこれまで、クラウドサービスのわかりにくさを排除することや、iPhoneのセキュリティを脅かすファイルの取り込みを防ぐため、この当たり前のことができなかった。
これまでの制限とは?
iCloudはこれまで、スケジュールや連絡先の同期、iPhoneやiPadのバックアップ、アプリのデータ保存、フォトストリーム、そしてiPhoneを探すなどの機能が提供されてきた。
今回、iCloud Driveで拡張されたのは「アプリのデータ保存」の部分となる。これまで、iCloudを活用するアプリで保存するデータは、iPhoneやiPad、Mac上で利用できる「同じアプリ」からしか使えなかった。
例えば、iPhoneのPagesで作成し、iCloudに保存した文書は、MacやiPadのPagesから「iCloud上に保存されている文書」として開けたが、MacのFinderから直接ファイルを取り出したり、送信したりすることはできなかった。そうするには、MacのPagesで文書を開き、Mac内のフォルダに一度保存してから操作しなければならなかった。
また、上記の条件から、異なるアプリで開くこともできなかった。つまり、iPhoneで作成したPagesの文書を、Microsoft Wordで開けない、ということだ。もっともファイル形式が異なるため、上手く開くことは難しいが、ファイル形式に関わらず、アプリをまたいだファイルの交換はできなかった。
こうした旧iCloudの仕様は、一般のユーザーがアプリを利用する限りにおいて、パソコンのようなフォルダやドライブ、クラウドを意識する必要がなくわかりやすかったが、文書を様々な方法で開いたり、編集したりするビジネス用途では、単なる不便な「仕様」でしかなかったわけだ。