最新ディスプレイ技術への対応

NVIDIAはGM204の開発にあたり、4Kディスプレイ環境や、次世代のゲーミング環境として期待されるVRヘッドマウントディスプレイへの最適化も行なっている。同社で、G-SYNCなどのゲーミング技術の開発やマーケティングを担当するトム・ピーターソン氏(Tom Petersen, Distinguished Engineer)は、現在のゲーム環境について、

  • 「DARK SOUL II」などのオンラインゲームタイトルに多い、旧世代のDirectX対応で、高性能グラフィックスカードを組み合わせても、パフォーマンスの向上は望めず、描画品質も最新グラフィックスからは見劣りがするもの
  • 「Battlefield 4」のように、最新グラフィックス技術を採用し、描画品質は優れているが、パフォーマンスを向上させるのが難しいもの
    • の2つに太極されると分析。GM204では、これらのゲームに、すぐれた描画品質とパフォーマンスを両立できる技術を提供するとアピールする。

      「Dynamic Super Resolution(DSR)」や「MFAA」について説明するトム・ピーターソン氏

      その一つとなる「Dynamic Super Resolution(DSR)」は、現在主流の1080pディスプレイでも4Kクオリティのゲームプレイを楽しめるようにするもの。具体的には、GeForceのグラフィックスドライバが、ゲームタイトルに対し、4K出力環境であるように見せかけることで、ゲームそのものは4K解像度でレンダリングし、画面出力時に1080pディスプレイなど、実際に使っているディスプレイ解像度にダウンスケールするというもの。これにより、背景描画などのクオリティが上がり、より美しいグラフィックスでゲームを楽しめるようになると言う。

      DSR技術によって、1080pディスプレイでも4K解像度品質のゲームプレイが可能になる

      DSRではゲームを1080pの4倍の解像度を持つ4Kでレンダリングし、これを画面出力時に再度1080pにスケーリングすることで、より緻密な表現を可能にしている

      同社は、このDSR機能をまずはGeForce GTX 980と同970で有効にし、GeForce Experience対応タイトルであれば、最適化処理時に自動的に同機能を有効にできるようにする考えだ。また、同機能はドライバでも制御可能なため、今後対応グラフィックスカードを増やしていく考えを示す。ただし、ピーターソン氏は「DSR機能は、ゲームを4K処理する必要があるため、それなりのグラフィックス性能が求められる」としており、エントリークラスのグラフィックスカードでサポートされる可能性は低そうだ。

      DARK SOUL IIを1080pでプレイしたときの画面と、1080pディスプレイでもDSRを有効にしたときの画面。草の輪郭などのディテールが向上する

      DARK SOUL IIを1080pでプレイしたときの画面と、1080pディスプレイでもDSRを有効にしたときの画面のアップ。右側がDSRを有効にしたときの画面だ

      DARK SOUL IIを使ったDSRのデモ。GeForce ExperienceのResolutionで「3840×2160 DSR」設定が有効になっていることが分かる

      DSRはドライバでも有効にすることが可能。写真は、WAR THUNDERをDSR設定と、1080pで比較動作させたデモ

      また、最新ゲームタイトルで、画面クオリティとパフォーマンスを両立させる技術としては、新しいアンチエイリアス技術となる「MFAA」対応が果たされる。MFAAは、Multi Frame sampled Anti-Aliasingの略で、複数のフレームのアンチ・エイリアス・サンプル点を合成することで、アンチエイリアス処理の負荷を低減しつつ、サンプル数の多いアンチエイリアスと同等の品質を実現できるようにするもの。

      グラフィックス負荷の高い最新ゲームタイトルで、画面品質を落とすことなくゲームプレイのフレームレートを向上させるためには、MFAAが有効だとアピール

      MFAAは、複数のフレームのアンチエイリアスサンプル点を合成することで、グラフィックス負荷を低減しつつ、4x MSAAと同等の描画品質を実現する技術

      同機能を有効にすると、常に4つのサンプル点を使ってアンチエイリアス処理を行なう4x MSAAに比べ、前後のフレームのサンプル点を合成するため各フレームのサンプル点を半分の2つにすることができるため、グラフィックス負荷を大幅に低減でき、4Kディスプレイ表示でもアンチエイリアスを有効にしたゲームプレイが楽しめるというもの。ピーターソン氏によれば、同技術の利用により、アンチエイリアス適用時のパフォーマンスを30%程度向上させることができると言う。

      4x MSAAと4x MFAAの比較。ほとんどのシーンで違いは見られない

      4x MFAAを利用することで、4x MSAAに比べて約30%のパフォーマンスアップが図れると言う

      さらにGM204では、次世代のゲーミング環境と期待されているVRヘッドマウント利用時に、より快適なゲームプレイができるよう、「VR DIRECT」と呼ぶ機能拡張が施されている。同社でゲームコンテンツに最新技術を実装するなどのサポートを指揮するトニー・タマシ上級副社長(Tony Tamasi, Senior Vice President, Content and Technology)は「VRヘッドマウントディスプレイでゲームを楽しむ場合、より広範囲な視野とヘッドトラッキングなどの演算要素が加わるため、描画遅延が深刻な問題となる」と指摘。

      VR DIRECTについて説明するトニー・タマシ上級副社長

      次世代ゲーミング環境として期待されるVRヘッドマウントへの対応として、VR DIRECT機能もサポート

      そこでGM204ベースのGeForce GPUでは、OS処理の最適化やMFAAによる処理性能向上などにより遅延時間を低減。さらに、同社がAsynchronous Warp(非同期ワープ)と呼ぶ、描画範囲よりも広い空間をあらかじめGPU側で処理しておき、ヘッドトラッキングによる移動距離が前のフレームで広めに描画しておいた3Dマップの範囲内であれば、最小限の遅延時間で次のフレームを描画できるようにする技術などもサポートすることで、VRヘッドマウントディスプレイによるゲーム体験を向上していきたい考えを示す。

      OS処理の最適化やMFAA、非同期ワープ技術などにより、VRヘッドマウント利用時のレイテンシを約半分に低減することができると言う

      Oculus Riftを使ったUnreal Engine 4ベースのVRコンテンツのデモ。同デモにもVR DIRECTが採用されている

      VRヘッドマウントディスプレイのOculus Riftでは、ヘッドマウントディスプレイ部に赤外線センサーが内蔵され、モニタ側のセンサーがこれを追尾することで、頭の向きなどを検知する仕組みを採用している。この動きに応じてグラフィックス描画がスムーズに行なわれるようにするためには、遅延時間の低減が必要となる