トレンドマイクロは、2014年のコンシューマ向けの事業戦略を発表した。その内容は、大きく3つから構成される。

  • 新たなソリューションの創出(セキュリティアットホーム、セキュリティエブリウェア)
  • セキュリティコンシェルジュ
  • 新興市場へのフリーミアムモデルの導入

以下、その内容を順にみていこう。

家族が安全にデジタルライフを楽しむために

最初に登壇したのは、社長のエバ・チェン氏である。自身の子供の頃の環境から、今、母親として、コンシューマの世界が大きく変わってきていること指摘することから始まった。

図1 エバ・チェン氏

世界中で、約1,300億ものアプリがダウンロードされ、モバイルデバイスの数は人の数を凌駕するに至っている。2018年には、1人あたりのデバイス数は1.4個と予測する。そのような状況で、一般家庭もオフィスのような状況になっている。PCやモバイルデバイスだけでなく、さまざまなスマートデバイスもネットワークが利用可能となっている(図2)。

図2 オフィス化する家庭環境

しかし、利便性の裏でリスクも存在する。ネットバンキングの不正送金などが急増している。これらは、豊かな国ほど狙われやすい(図3)。

図3 ネットバンキングを狙う不正プログラム

見ての通り、米国が1位で、日本が2位となっている。特にAndroidを攻撃対象とした不正アプリは、わずか数年で200万を超えてきている。中でも不正な広告を行うアドウェア関連がもっとも多い。今後の脅威として、注目しているのがランサムウェアである。PCやモバイルデバイスのデータや画面を乗っ取り使用不能にする。解除するには、身代金を払えというものである。これも、米国や日本で急増している。そして、各地域に特化した手口が使われているのも特徴の1つである。また、SNSへの脅威も増大している(図4)。

図4 SNSの脅威

写真や動画を投稿するsnapchatでは、本来、数分から数時間でアップしたデータが削除される。しかし、情報漏洩が発生し、460万件もの個人情報が流出してしまった。LINEでも、攻撃者が友人になりすますような事例が発生している。SNSを使えば使うほど、リスクが増大していく。そして、ユーザーが多いアプリほど、攻撃者に狙われやすくなっている。具体的には、本物を装ったニセのアプリをダウンロードさせる。こういったPCやアプリだけでなく、家庭に存在するスマートデバイスも攻撃対象となっている(図5)。

図5 狙われるスマートホームデバイス

守るべきものは、PCやモバイルデバイスだけではない。スマートホームデバイスも守るべき対象となる。しかし、ここで大きな問題がある。これだけ多数のデバイスをどうやって守るのか?それに対する答えが、新ソリューションである(図6)。

図6 新たなコンシューマ向けのソリューションの概念

従来のセキュリティ対策はデバイスを守る、デバイスのデータを守るものであった。そして、個人を守るというレベルに進化してきた。トレンドマイクロではさらに、家庭のすべて守り、一元的に管理していく方法を目指していく。家庭で中核となるのは、ホームルータである。戸外では、通信内容の保護や通信の暗号化などを行っていく。スマートホームデバイスでもぜい弱性があれば、パッチをあてる必要がある(しかし、ほとんどが放置状態で、あてるとしても専門業者に依頼するしかなかった)。そういったことが、家庭でもできるようにすることも目標の1つである。

50年前も、50年後も家族の大切さは変わらない。それを守るのが我々の役目であると、エバ・チェン氏が語っていたのが印象に残った。