プレスカンファレンスに登壇する米AMD Senior Vice President and General Manager, Global Business Unitsのリサ・スー(Lisa Su)氏

米AMDは1月6日(米国時間)、CES 2014の会場にてプレスカンファレンスを開催し、AMD Aシリーズの次世代APU「Kaveri」の特徴を紹介し、さらに性能テストの結果を公開。あわせて次世代SoC「Mullins」と「Beema」のIntel Bay Trailとの性能比較や、搭載デバイスの概要も公開した。ほかGPUではノート向けのRadeon R9/R7/R5シリーズを発表した。

Kaveriの正式リリースが秒読みに

Kaveri(開発コード名)は、CPUにPiledriverコアの後継であるSteamrollerコアを、GPUにGCNベースのRadeon GPU Coreを統合した、28nmのプロセスで製造されるAPUだ。また、初のヘテロジニアス・システム・アーキテクチャ(HSA)対応APUであり、HSAのGPUコンピューティングを利用できるアプリケーションであればかなり高速な処理ができる。ほか、デスクトップ向け最新世代GPUであるRadeon R9/R7が備えるグラフィックスAPI「Mantle」と音響技術「TrueAudio」もサポートする(MantleとTrueAudioの詳細はこちらの別記事を参照いただきたい)。

この日公開されたラインナップは、デスクトップ向けAシリーズの「AMD A10-7850K」「AMD A10-7700K」。上位モデルのA10-7850Kのスペックは、CPUに4コアのSteamroller、GPUに8コア(8CU=512SP)のRadeon R7を備える、同社いわく「12コア」のAPUというもので、単体で856GFLOPSの演算性能を持つとされている。

Kaveriの概要。前世代に比べCPUのIPCで20%、グラフィックスで50%の性能向上

このあたりのKaveriの概要は、昨年開催のAPU13をレポートしたこちらの別記事が詳しい。今回のトピックは、競合製品としてIntel Core i5-4670Kとの性能比較が公開されたことだろう。PCMark8で24%、3DMarkで87%、Basemark CLで63%のスコア優位の結果が出たという。また、HSAの効果についても、HSA対応のオフィスアプリケーションを利用して、A10-7850KでHSAの有効時に無効時の7倍もの性能向上があることも紹介した。

Core i5-4670Kと比べPCMark8で24%、3DMarkで87%、Basemark CLで63%高速という

これはHSA対応のオフィスアプリケーションでHSAを有効にすると、無効時の7倍の性能が出るというデータ

HSAについては、2012年に出荷された全SoCのうち、2/3を占める8億個がHSAのファンデーションのメンバーによるものであるとシェアの大きさをアピール。なのでAMD製APUの成長予測もかなり強気

Kaveriの正式発表は、以前に予告のあったとおり今年の1月14日であることも確認された。その際にも、また新たな情報が公開されることになるだろう。

Kaveri APUのリテールパッケージもお披露目していた。遅延なく市場投入されることを願うばかりだ

Bay Trail対抗のMullinsとBeema

MullinsとBeema(ともに開発コード名)は、Mullinsがタブレットや2in1向け「Temash」の、Beemaが薄型ノート向け「Kabini」のそれぞれ後継となる次世代SoCだ。製造プロセスは変わらず28nm。IntelのSoC「Bay Trail」の対抗製品と位置づけられており、今回のプレスカンファレンスでは、Mullinsを「Atom Z3770(Bay Trail-T)」と、Beemaを「Atom N3510(Bay Trail-M)」と比べて、それぞれPCMark8で20%超、3DMark11だと比較にならないほどのスコア優位があることをアピールした。

直近のAMDの製品ロードマップ。「Mullins」が「Temash」の、「Beema」が「Kabini」のそれぞれ後継となる

IntelのBay Trailとの性能比較。特に3DMark11のスコアは相当な差をつけている

Mullins/Beemaとも、すでにOEM向けサンプル出荷を始めているそうで、当日はMullinsを搭載するWindowsタブレットの試作機なども公開した。10インチより少し大き目のディスプレイを備え、スピーカーやゲーミングコントローラのオプション機器を装着したMullinsタブレットのデモ機では、既存の最新3Dゲームと遜色無いレベルのゲームを実際にプレイすることができ、特にMullinsのグラフィックス性能の高さをうかがい知ることができるものであった。なお、この両SoCについて、こちらの別記事にも詳しい情報があるので、あわせてご覧いただきたい。

これはMullinsを搭載する小型デバイス。小さく薄いがディスプレイと接続して普通のPCのように使えるようだ

こちらはMullinsタブレットのデモ機。コントローラなどオプション装備のゲーミングタブレットのコンセプト機で、リッチな3Dゲームがスムーズに動いていた

GCNベースの新モバイルGPU

続いては単体グラフィックスに関する情報として、まずはGCNベースのモバイル向け新Radeon GPUが発表された。ラインナップは「AMD Radeon R9 M290X」「同R7 M265」「同 R5 M230」の3モデルで、MSIやALIENWAREらのゲーミングノートの搭載実機が公開され、製品投入も近日中であることが示された。

GPUについて発表する米AMD Vice President and General Manager, Graphics Business Unitのマット・スキナー(Matt Skynner)氏

GCN世代のモバイル向け新GPUとして、「AMD Radeon R9 M290X」「同R7 M265」「同 R5 M230」の3モデルを発表

上記GPUを搭載するMSIとALIENWAREのゲーミングノートを公開

製品スペックもR7 M265をのぞき公開されており、AMD Radeon R9 M290Xは、コア数が20CU(1,280SP)、コアクロックが850MHz(Boost時900Mhz)、メモリクロックが1,200MHzでメモリタイプが256bit接続のGDDR5。同R5 M230は、コア数が5CU(320SP)、コアクロックが855MHz、メモリクロックが1,000MHzでメモリタイプが64bit接続のDDR3。

Mantle版Battlefield 4ついに公開、1.5倍の処理向上!?

あわせてグラフィックスに関しては、グラフィックスAPI「Mantle」について、Mantle対応版の「Battlefield 4」の動作デモンストレーションが初公開となった。デモでは、DirectXでの動作時に比べ、Mantle APIでは45%程度の性能アップが実現することが披露された。Mantle対応ゲームは未だ1本も正式リリースとなっていない現状ではあるが、Mantle対応を表明したタイトルの中でも注目のBattlefield 4での動作がついに公開となり、しかも1.5倍近い性能アップが見込めてしまうことが示されただけに、今後さらにMantleへの期待は高まるものと思われる。

3種の有力ゲームエンジンで、5社のゲームデベロッパーが、20タイトル以上を"開発中"という「Mantle」の現状

Mantle対応版「Battlefield 4」の"動いているところ"がついに公開に。さらにパフォーマンスが1.5倍近いという予想以上の結果を見せた