APU13の最後の基調講演となる同社CTOのMark Papermaster氏の基調講演の中で、AMDの2014年Mobile向けロードマップの概略が発表された。今回、事前にこの内容に関しての説明が行われたので、これをレポートしたい。

説明を行ったGabe Gravning氏(Director of Marketing, AMD Client Business Unit)

縮小傾向にあることが明確なPCマーケットではあるが、金額ベースはともかくとして台数ベースではまだ伸びる余地があるとしている(Photo01、Photo02)。Photo02は2014年のClient別の出荷予測台数である。少なからぬシェアをiOS、つまりAppleのMobile向けデバイス(Mac以外)が占めているが、WindowsベースではTablet/Detachable(Intel風に言うところの2-in-1 Device)がばかにならないシェアになると推定しているようだ。

Photo01:ちょっと分かりにくいのだが、iOSのシェアを抜いても、トータルとしては微妙に出荷台数が伸びると推定されているのが判る

Photo02:Photo01と種類別の色分けが異なっているので注意

AMDではこの部分に注力する(Photo03)という戦略を2012年ころから言い始めていることであまり親味はなく、また具体的にPerformance Tablet~Notebookのそれぞれに最適なソリューションを提供する(Photo04)という基本戦略にも変わりは無い。この戦略にそって2013年はそれぞれに向けたDesign Winを獲得できた(Photo05)とした上で、2014年も引き続きこれに沿った製品を投入することを明らかにした。

Photo03:このプレゼンテーションはおなじみ。左のOld Windows Ecosystemと、新しいAndroid/iOS Ecosystemの狭間にマーケットがあるとしている

Photo04:こちらもおなじみ。まぁこのマーケットだとAMDはIntelに競合できる製品を提供できるわけで、この選択そのものは正解だろう

Photo05:ただPerformance Notebookの部分ではGPU性能はともかくCPU性能で後れを取り、一方Tablet&2-in-1のマーケットではInstantOnとかConnected Standbyといった省電力機構の欠落がネックになって、苦しい戦いになっていたことは否めない

具体的には、ハイエンドはKaveriベースとなるが、その下にMULLINS/BEEMAという2つの製品を投入する。MullinsはTemashの、BeemaはKabiniのそれぞれ後継となる製品だが、どちらも前世代に比べて性能/消費電力比を2倍に改善したとしている(Photo06)。また、特にWindows 8.1への最適化として、Wireless Displayへの対応やWebGLへの対応なども行われたことが示された(Photo07)。

Photo06:3DMark11とPCMark8 Homeの両方で倍以上の性能改善が図られた、としている

Photo07:Mullins/Beema共にターゲットはTablet向けで、となるとOSはWindows 8.1がメインだから、これは当然ではあるが

さて、Photo08が具体的なロードマップである。動作周波数などは明らかにされないままであるが、おおむね同等の性能レンジでより低い動作TDP/SDPで動作することが明らかにされた。

Photo08:Beema/MullinsはどちらもPumaコアに。どうでもいいが、普通にAMDのPumaというと、2008年に同社がリリースしたTurion X2ベースのPlatformを連想してしまう

さて、新機能としてはまずMicrosoftのInstantGOに対応したこと(Photo09)。ちなみにConnected Standbyに関しても「実装するしないはOEMメーカーの設計次第だが、技術的には可能」という話であった。

Photo09:「ちなみに64bit OSでもドライバ対応してる?」という質問が出たが、答えは「覚えてない」だった

これに合わせて、Intelの言うところのS0i1/S0i3、つまりCPUコアそのものはS0 Stateながら、SoCの周辺機器の一部は比較的浅いSleep状態にすることでConnectivityを維持する電力モードのサポートに関しては「どんな名前になるかは忘れてしまったが、そうしたモードは持っている」との事だった。

またMullins/BeemaはARMのTEE(Trusted Execution Envitonment)を提供するために、Cortex-A5コアを内蔵する(Photo10)。これはARMがTrustZoneとして提供しているもので、この環境をAPUで利用できるようにするという話だ。

Photo10:ただしCortex-A5コアを動かすということは、これに関してはARMのコードで動作するという意味であり、x86からはTrustZoneを直接アクセスするのではなく、Inter-Processor Communication的APIを介する形で動作することになると思われる。問題はそれで性能が出るかどうか、であろう

実はこのTrustZoneのライセンスの話そのものは昨年すでに出ており、あとはどの製品に搭載されるかだけが問題であったのだが、Mullins/Beemaが先頭を切ることになった。

面白いのはTrustZoneがKaveriには搭載されないことであるが、「単にタイミングの問題」という返事であった。ただ穿って見てみると、TrustZoneは単にプログラムの動作(=CPUコア)のみならずI/O経由でのデータ保護も含まれるから、SoCの形で全部ワンチップ化しているMullins/Beemaはともかく、FCHを外付けにするKaveriではチップセット側にも手を入れないといけないわけで、このあたりがKaveriで搭載しない理由なのかもしれない。

また今回、新しくAMD DockPort Technologyなるものをサポートすることが明らかにされた(Photo11)のだが、実はこの中身がいまいち明確ではない。DockPort TechnologyではDisplay Port 1.2とUSB 3.0、それにPower Deliveryの3つの機能を提供するが、このうちPower Deliveryに関して「これはUSB Power Deliveryと互換性のあるものか? それとも独自の規格か?」と尋ねたところ「分からない」という返事であった(笑)。

Photo11:従来AMDがLightning Boltと称していた「Thunderboltの廉価版」が、改めて名称が変わった模様

ところで最後にKaveri周りでちょっとだけ補足を。まずA10-7850Kの名称は公式に発表したもので、単にSu氏の基調講演ではそれを言わなかっただけ、との事だった。また競合はRichlandのときと同じく、Core i5のハイエンド(多分Core i5-4670Kの方で、Core i5-4670Rではないと思われる)という話であり、価格は当然これを意識したもの(Core i5-4670KはBOXが243.00米ドル)になる模様だ。おそらく200米ドル近辺での価格付けになると想像される。

あともう一つ、KaveriはhUMAを利用することで完全なCPU/GPUのCache Coherencyが実現されると説明されてきていたが、実際には不完全(CPU→GPU方向のSnoopingは実装されているが、GPU→CPU方向のSnoopingは実現されていない)を伺わせる発言があった。

メモリに関しては完全にCoherencyで、Page Tableも共通化されているが、Cacheに関してはまだどうも完全ではないようだ(理由は容易に想像がつくが)。ただ別の筋では、「KaveriではCPU・GPU間で完全なCache Coherencyが実装されている」という説明もあり、これに関しては正確な確認が取れていない