2012年11月に、不定期連載としてスタートした「大河原克行のWindows 8 PC探訪記」も、今年12月で11回を迎えた。Windows 8を搭載したPCの企画、開発の狙いを担当者に聞き、カタログ表には出ていないこだわりを浮き彫りにするこの連載がスタートして以降、数多くのWindows 8搭載PCが発売される一方、今年10月にはWindows 8.1へとアップデートされ、Windows 8そのものも進化した。

また、Windows 8以降のPCは、タブレットのラインアップが増加したほか、2-in-1と呼ばれる、PCとタブレットの両面で活用できるデバイスが相次ぎ登場。PCの利用シーンの広がりを下支えしている。

そして、そこには、PCメーカーの強いこだわりと、日本のメーカーならではの果敢な挑戦も見られている。今年掲載した6つの製品を振り返りながら、各社の取り組みを改めて追ってみた。

東芝「dynabook KIRA V832」

dynabook KIRA V832

■大河原克行のWindows 8 PC探訪記
東芝編 - 薄軽競争と一線を画す上質さとは? dynabook KIRA担当者に聞く

東芝のdynabook KIRA V832は、Ultrabookとしては初めてタッチ操作対応のWQHD(2,560×1,440)液晶を搭載。その後の高精細化の流れをリードした製品だ。

ビジネスユースを目指して製品化したR631の開発チームが、「プライベートで愉しむためのUltrabook」をコンセプトに開発したコンシューマ向けUltrabookであり、新たに「KIRA」というサブブランドを冠した点でも、この製品への力の入れ具合がわかる。

設計思想、デザイン、製造手法まで見直しを行い、その結果、「寸法精度」の大幅な改善を実現。これが、KIRAならではの質感につながっている。記事では、そのあたりのごたわりと苦労が感じられるだろう。

富士通「LIFEBOOK UH90/L」

LIFEBOOK UH90/L

■大河原克行のWindows 8 PC探訪記
富士通編 - 「これはビジネスマンにとっての『刀』」 LIFEBOOK UH90/L担当者に聞く

「刀」というコンセプトで富士通が開発したのが、Ultrabook「LIFEBOOK UH90/L」である。3,200×1,800ドットの高精細14型ワイド液晶IGZOバネルを搭載するとともに、タッチパネルを装備。薄さは最厚部で15.5mm、最薄部で9.2mmという究極の薄さを実現した。

本機はデザイナーが語る「密度のある塊」という表現が印象的だった。そして、刀は、美しさ、堅牢性、薄さの追求において、刀との共通項をみいだすとともに、「武士にとっては命の次に大切なものが刀。現代のビジネスマンに不可欠なツールがPC。UH90/Lが、そうした役割を担う点でも、武士の刀に通じるものがある」というのが刀のコンセプトの原点だ。

実は、LIFEBOOK UH90/Lは「磨き上げプロジェクト」の第1号製品。その観点からも、今後、どんな製品が登場するかにも期待したい。

パナソニック「Let'snote CF-LX3」

Let'snote CF-LX3

■大河原克行のWindows 8 PC探訪記
パナソニック編 - 世界最軽量は「大きな目標だった」 Let'snote LX3担当者に聞く

パナソニックが、Let'snoteの新製品として投入したCF-LX3 は、14.0型液晶パネルを搭載したビジネスモバイルPC。「持ち運びができる大画面モデルが欲しい」という要望にあわせて製品化したものだ。

ドライブレスモデルで1.14kgという軽量化を実現しているLX3は、スペック以上に軽さを感じることができるともいえる。駆動時間と軽量化を優先するために、リチウムポリマーを使わずに、18650を採用。厚みができることから、Ultrabookの仕様からは外れることになったが、それでもLet'snoteとしてのコンセプトを優先した点は、パソナニックならではだろう。

ソニー「VAIO Pro 11」

VAIO Pro 11

■大河原克行のWindows 8 PC探訪記
ソニー編 - 「世界一の軽さが優先なら、もっと軽くできた」 VAIO Pro 11担当者に聞く

ソニーのVAIO Pro 11は、「ソニーがモバイルにこだわるとこうなる」ということを見せつけたものになったといえよう。

アルミに比べて重量が約半分ながら、25%の強度を持つUDカーボンを筐体に採用することで、タッチパネル非搭載モデルでは重量約770g、タッチパネル搭載モデルでは約870gという軽量化を実現した。

2003年に発売したバイオノート505エクストリーム以来、10年に渡って蓄積した加工ノウハウがPro 11の製品化につながっている。もちろん、特徴はこれだけではない。記事ではそのあたりのこだわりを追っている。

NEC「VALUESTAR N VN970/NS」

VALUESTAR N VN970/NS

■大河原克行のWindows 8 PC探訪記
NEC編 "進化と融合"から生まれた新しい「N」 VALUESTAR N VN970/NS担当者に聞く

本連載ではノートPCや2in1を取り上げることが多いが、珍しくデスクトップPCとして取り上げたのがNEC VALUESTAR N VN970/NSだ。

フォトフレーム型パソコンとしてスタンダードモデルに位置づけられるVALUESTAR Nシリーズを進化させるとともに、AV機能に特化したVALUSTAR Wシリーズとの融合を図ったのがこの製品の特徴である。

ハイクリティサウンドの実現に向けて、スピーカーに磁性流体を採用するといった挑戦をYAMAHAとともに取り組んだ。幅広いユーザーに受け入れられるデスクトップPCを目指した製品である。

レノボ「ThinkPad X240」

ThinkPad X240

■大河原克行のWindows 8 PC探訪記
レノボ編 - 新時代で「変わった、と言われないための変化」 ThinkPad X240担当者に聞く

4年ぶりに新設計したフォームファクタ「CS13」の第1号製品となったのが、ThinkPad X240。

ビジネスユースを前提に開発されてきたThinkPadであるが、今回の製品では、コンシューマライゼーションの流れを意識するなど、時代の変化を捉えたプラットフォームへと進化。Big Bottomデザイン、デュアルバッテリフォームファクタ、Anti-Shock Floatingといった新たな技術の採用も、ThinkPadの大きな進化を感じさせるものとなった。

変えるところと、変えないところを明確化し、ThinkPadの世界をさらに一歩進めたことが、この記事から感じることができるのではないだろうか。

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日本マイクロソフトの発表によると、Windows 8では250機種以上のPCが国内で販売され、Windows 8.1以降は、それ以上の機種数のPCが販売されているという。

Windowsの特徴はエコシステムによる幅広い製品展開であり、日本ではその効果が最も発揮されやすい環境にある。量販店店頭では、最も幅広いラインアップによって、過去に例がないほどの品揃えのなかから、Windows搭載PCを選択できる環境が整っている。書き手としては、この連載を通じて、開発者などの狙いを知ることで、自分にあったPCがより選択しやすくなることを期待している。

「大河原克行のWindows 8 PC探訪記」の次回以降の連載もぜひ楽しみにしてほしい。次回は、2014年1月中に掲載を予定しているが、そこではソニーの「VAIO Fit 13A」、富士通の「ARROWS Tab QH77/M」をそれぞれ探訪する予定だ。