PFUの「ScanSnap」シリーズは、個人やビジネスパーソン向けのドキュメントスキャナとして定番中の定番。今回から全10回の予定で、基本的な使い方やちょっと便利な応用技を紹介していきたい。ウォーミングアップの第1回は、ScanSnapシリーズの概要とラインナップをまとめる。

ScanSnapって何?

「ScanSnap」シリーズは、PFUから発売されているドキュメントスキャナだ。ドキュメントスキャナとは、主に「ドキュメント(文書)」を読み取ってデジタル化するためのスキャナ。社内で配られる紙の資料、はがきや封書で届くDM、お店でもらってくるちらしやリーフレット、出先で交換した名刺、忘れないように書き留めたメモ……などなど。

ペーパーレス化があちこちで試みられている一方で、身の回りの紙は減るどころか、ますます増えている。上に挙げたような「紙」がいざ必要になったとき、探すのが大変だったり(結局見つからなかったり…)、外出先で確認できなかったりして、困ったことはないだろうか。こうした紙の書類をドキュメントスキャナでまとめてスキャン(デジタル化)しておくと、PCやタブレット、スマートフォンなどでいつでもどこでも読めるようになるというわけだ。また、「紙」そのものを保管する場所が不要となるのも、大きなメリットだろう。オフィスではコストダウンにも貢献できる。紙をデジタル化しておけば、そのデータをメール添付で送ったり、FAXの代わりとしても利用できるのだ。

ScanSnapで何ができる? - 基本

ScanSnap iX500

ドキュメントスキャナを使って行うのは、書類のデジタル化だ。ドキュメントスキャナで読み取った書類をPDFファイルや画像などのデータに変換して、PCから閲覧や共有が行えるようにする。取り込んだあとは、特に重要な書類だけ保管し、残りの原本は処分することで、書類整理が一気に済んでしまう。

また近年は、紙の書籍、雑誌、文庫本、コミックなどを1冊まるごとデジタル化して、PCやタブレットで楽しむ「自炊」という行為が定着している。数百ページもの紙をほとんど一気にデジタル化するために、ドキュメントスキャナは欠かせない。なお、書籍のような紙の著作物をデジタル化した場合、デジタル化したデータを自分自身や家族の範囲内でのみ利用するぶんには合法だ。

このほか、名刺管理にドキュメントスキャナが使われることも多い。OCR(Optical Character Reader)処理をかけることで、氏名や会社名などのキーワードで検索できるようになる。OCRとは、画像データに含まれる「文字」を自動的に判別して、テキストデータに変換することだ。会社名、役職、氏名、住所、電話/FAX番号、メールアドレスなどを手動で入力する代わりに、ドキュメントスキャナを利用することで、名刺の管理が何倍も効率的になる。

ScanSnap iX500には、11言語に対応するOCR機能を備えた名刺管理ソフト「CardMinder」が付属する

ScanSnapで何ができる? - 応用

ここまでは、どのドキュメントスキャナでもできる基本中の基本だ。しかし最新のScanSnapシリーズには、もっとすごい機能が搭載されている。ScanSnapシリーズの主力モデル「ScanSnap iX500」を例に挙げると、まずPCとWi-Fi(無線LAN)で接続できるワイヤレス機能が快適。USBケーブルが不要になり、部屋のどこにでもスキャナを設置できる。ワイヤレスだからといって、機能や性能、操作性は、USB接続と何ら変わることはない。

スマートフォンやタブレットでも、iOS/Android用アプリ「ScanSnap Conect Application」からScanSnap iX500を操作できる。画面をタップしてスキャンを実行するという技も、ワイヤレスで行えるのだ。データはスマートフォンやタブレットに直接保存され、そのまま持ち運べる。かつては、いったんPCに保存してから転送していたものだが、その手間から解放されるのがすばらしい。

ScanSnap iX500は、iPhoneやiPad、Androidスマートフォン/タブレットからでも直接使用できる。写真左はScanSnap iX500発表会でのプレゼンテーションスライド、写真右はiOS用アプリ「ScanSnap Conect Application」

そのほか、EvernoteやDropboxといったクラウドサービスへとデータを直接保存できるのも、最近のトレンドとして外せない。クラウドに保存しておけば、PCやスマートフォンなど、どこからでも同じデータにアクセスできるので、利便性がさらに高まる。

こちらはWindows環境の「クイックメニュー」(写真左)。スキャンした原稿データを、目的のアプリケーションへ転送したり、クラウドサービスに保存できる。原稿サイズを自動判定して、クイックメニューの中から関連アプリを自動で推奨表示する「おすすめ表示」も備える(写真右)

ScanSnapシリーズのラインナップを整理

ここでScanSnapシリーズのラインナップを整理しておこう。個人ユーザーをターゲットにした製品では、上述した「iX500」のほか、「S1300i」、「S1100」、「SV600」という4種類が用意されている。iX500とS1300iは両面スキャンに対応しており、1回の紙送りで原稿の両面を同時にスキャンできるのが便利。

ScanSnap iX500

まずiX500だが、こちらも上述した通り、Wi-Fi(無線LAN)を標準搭載し、PCとワイヤレスで接続できるのが大きな特徴だ。もちろん、スマートフォンやタブレットから読み取りを実行し、データをそのまま保存すること可能。最大50枚の原稿を一度にセットでき、さらに毎分25枚・50面という高速読み取りを実現し、大量の書類を一気にスキャンできる。文句なしの最上位モデルだ。

ScanSnap S1300i

ScanSnap S1100

そしてiX500の下位モデルに当たるのが、S1300iとS1100の2つだ。どちらもWi-Fi機能を搭載していない点で共通している。S1300iは、毎分12枚・24面の読み取り速度のエントリーモデルで、USBバスパワー駆動に対応して携帯性にも配慮。原稿の給紙容量は最大10枚だ。S1100は、S1300iをさらに小型化したモデル。原稿は1枚単位の片面読み取りとなるが(1枚給紙)、世界最小クラスを実現。重さわずか350gのコンパクトモデルだ。

ScanSnap SV600

SV600は、ほかの3機種とはまったく異なる読み取り方式の製品だ。原稿を付属マットの上に置いて、本体上部の読み取りユニットから光を照射して読み取るという、オーバーヘッド構造が採用されている。新聞やA3サイズの大きな原稿や、綴じられた本を裁断せずにそのまま読み取れるのが特徴だ。

こんな使い方には「○○○」がオススメ

さて、ドキュメントスキャナを選ぶには、自分の使い方に合った製品を選ぶことが重要だ。日々増える書類を効率的に整理したいなら、iX500またはS1300iが候補になるだろう。特にiX500は高速読み取りとワイヤレス対応で、まとまった書類を一度に取り込んだり、書類をスマートフォンやタブレットに入れて持ち運んだりといった使い方に有利だ。ワイヤレス対応のほか、原稿の給紙容量や本体サイズも比較ポイントになるだろう。

出先でもらう書類もその場でスキャンしたいなら、コンパクトモデルのS1100が適役だ。最後のSV600は、A4以上の書類を取り込むことや、原本を破壊ぜずに(書籍の裁断も含む)読み取ることが必要な場合に、スキャンの選択肢を広げてくれる。

以上、ScanSnapシリーズのラインナップと、おすすめの使い方を簡単に紹介した。次回からはiX500を用いて、実際の使い方を紹介していきたい。

2013年9月10日時点の主な仕様は下表の通りだが、詳細はPFUのWebサイト(ScanSnap)を参照してほしい。なお、SV600の対応OSが「Windows XP / Vista / 7 / 8」となっているが、Mac OS Xにも対応する予定だ。

iX500 S1300i
読取方式 自動給紙方式(ADF)
両面同時読み取り
自動給紙方式(ADF)
両面同時読み取り
読取モード 片面/両面
カラー/グレー/白黒/自動
片面/両面
カラー/グレー/白黒/自動
イメージセンサー CIS×2(表面×1/裏面×1) CIS×2(表面×1/裏面×1)
光源 RGB 3色LED RGB 3色LED
最大読取速度 両面/片面 : 25枚/分 両面/片面 : 12枚/分
読取範囲 最大A4
カスタムサイズ最大216×360mm
カスタムサイズ最小50.8×50.8mm
A3キャリアシート最大A4/リーガル
長尺紙最大長863mm
最大A4
カスタムサイズ最大216×360mm
カスタムサイズ最小50.8×50.8mm
長尺紙最大長863mm
プラスチックカード読取 ○(厚み0.76mm以下、エンボス付き可) ×
原稿搭載枚数 最大50枚 最大10枚
インタフェース USB 3.0
IEEE802.11b/g/n準拠線LAN(Wi-Fi)
USB 2.0
本体サイズ W292×D159×H168mm W284×D99×H77mm
質量 3kg 1.4kg
対応OS Windows XP / Vista / 7 / 8
Mac OS X 10.6 ~ 10.8
Windows XP / Vista / 7 / 8
Mac OS X 10.5 ~ 10.8
直販(PFUダイレクト)
価格
49,800円 27,800円
S1100 SV600
読取方式 手差し給紙(1枚単位)
片面読取
オーバーヘッド読取方式
片面読取
読取モード 片面
カラー/グレー/白黒/自動
カラー/グレー/白黒/自動
イメージセンサー CIS×1 CCD×1
光源 RGB 3色LED (白色LED+レンズ照明)×2
最大読取速度 片面 : 7.5枚/分 片面 : 3秒/枚
読取範囲 最大A4
カスタムサイズ最大216×360mm
カスタムサイズ最小25.4×25.4mm
A3キャリアシート最大A4/リーガル
長尺紙最大長863mm
最大A3
カスタムサイズ最大432×300mm
カスタムサイズ最小25.4×25.4mm
プラスチックカード読取 ○(厚み0.76mm以下、エンボス付き可)
原稿搭載枚数 1枚 1枚
(読取範囲内マルチクロップ対応)
インタフェース USB 2.0 USB 2.0
本体サイズ W273×D47.5×H34mm W210×D156×H383mm
(作業スペース)
W525×D484×H383mm
質量 350g 3kg
対応OS Windows XP / Vista / 7 / 8
Mac OS X 10.4 ~ 10.8
Windows XP / Vista / 7 / 8
直販(PFUダイレクト)
価格
17,800円 59,800円