当初Microsoftは、自社製品のRTM(Release To Manufacturing version:製造工程版)版が完成した際、同社の開発向け/ITプロフェッショナル向け有料サービスであるMSDN/TechNetでイメージファイルを提供していた。しかし、Windows 8.1に限っては「一般提供と同じタイミングでリリースします」と、同社のバイスプレジデントであるAntoine Leblond(アントニー・レブロンド)氏が公式ブログで発表した。その理由としてLeblond同氏は、RTMリリース後もハードウェアベンダーと最終調整が必要であるからだ、と述べている。
しかし、多くの開発者やITプロフェッショナルからのフィードバックを受けて、この方針を転換した。同社のバイスプレジデント兼チーフエバンジェリストであるSteve Guggenheimer(スティーブ・グッゲンハイマー)氏は自身のブログで、「フィードバックの声に耳を傾け、早期リリースするための最善の方法に取り組むことにした」とし、9月10日の急遽(きゅうきょ)リリースに至ったのである。今週はそのWindows 8.1 RTMをインストールし、数日間使ってみた簡単なレポートをお送りしよう。
Windows 8.1 RTM版が登場 - インストール時の注意点
本誌でも既報のとおり、Windows 8.1がMSDN/TechNet購読者向けに配布を開始した。筆者もWindwos 8.1を評価するため実機にインストールし、数日間使ってみた。まだまだ見落としがあるかと思うが、ファーストインプレッションとしてWindows 8.1 RTMとWindows 8.1プレビューの相違点をまとめた情報をお送りする。今回はTechNetから入手したISO形式ファイルをマウントし、そのままSetup.exeを実行する方法でWindows 8からのアップグレードインストールを実行した。その際は気付かなかったのだが、後から画面撮影用として仮想マシン上に新規インストールした際、Microsoftアカウントに対する扱いが異なることに気付かされたのである。
インストーラーがネットワークデバイスを検出した場合、Microsoftアカウントへのサインインではなく、従来のローカルアカウントによるアカウント作成が可能だった。本稿執筆時にWindows 8.1プレビューを再インストールしてみたが、この仕様はプレビュー時点で組み込まれたようである。Windows 8.1プレビューはネットワーク機能の検出に失敗すると、そのままローカルアカウントの作成を求められたが、Windows 8.1の場合も流れだった(図01~02)。
以前から何度か述べているが、インストール時にMicrosoftアカウントを選択すると、同アカウントで用いている名前がユーザーフォルダー名に用いられてしまうため、漢字を使っている場合は予期せぬトラブルを巻き起こすことがある。Windows XP時代と比べるとかなり減ったが、それでもWindows Vista以降はOS(オペレーティングシステム)やデスクトップアプリが、%APPDATA%フォルダーや%LOCALAPPDATA%フォルダーを多用する仕様に変更された。そのため、パスに2バイト文字が混入すると正常に動作しないというデスクトップアプリが存在するのも事実だ。アップグレードインストール時は、Windows 8の環境がそのまま引き継がれるものの、新規にWindows 8.1をインストールする場合は注意すべきポイントと1つとなる。
もっとも、Windows 8.1をローカルアカウントで使用していると、Windowsストアアプリのアップデート時にMicrosoftアカウントを求められる。「ニュース」など既にインストール済みのWindowsストアアプリはそのまま利用可能だが、頻繁に更新されることを考えるとMicrosoftアカウントの利用は欠かせない。また「ストア」利用時にはMicrosoftアカウントへの切り替えを求められるが、Windowsストアアプリごとにサインインする選択肢も用意されている。利便性を踏まえると後者を選択するメリットはないだろう。なお、ローカルアカウントからMicrosoftアカウントへ切り替える際、SkyDriveの利用を求められる点に変わりはない(図03~04)。